【4.4.3】フリーライダーへの対処法(Colleagues take the freedom, but not the responsibility)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/443.html

■翻訳メモ
「セルフマネジメント」への移行を進めている多くの組織は、まったく違った次元で、もうひとつの大きな変化を経験します。一部の組織は、与えられた自由のみ享受し、それに見合う責任を取ろうとしない、いわゆるフリーライダーの問題に直面することがあります。このことは、すでに何度か動画の中でお話ししました。しかし、「セルフマネジメント」にとっての典型的な問題の1つでもあるので、ここでもう一度お話ししたいと思います。なぜなら、これは実にもどかしい問題だからです。私の部下は「セルフマネジメント」に対応できるほど成熟していないという意見はよく聞きます。フリーライダーの問題は、下手をするとその意見の裏付けとなってしまいます。今回はそれをはっきりさせておかないといけないと思いました。では、私が経験したことを2つ紹介します。

1つ目は、十分な数の看護師がいるにもかかわらず、全体のパフォーマンスが下がった病院の話です。その病院には活動量に対して看護師の数が多すぎるチームがありました。それぞれの個人も十分に時間の余裕を持っていました。しかし、別のチームは、人員が足りず、本当にたいへんな状況にありました。その状況を解消するには、余裕のあるチームの何人かが、困っているチームにしばらく移ればよいだけのように感じると思います。そこで、マネージャーはこの余裕のあるチームのところに行って、「余裕があるようだから、だれか他のチームのところに行って、そちらを手伝ってもらえないか」と言いました。しかし、彼らは、「私たちは人が余っているわけではありません。今の人員が理想的なんです」と言って、頑としてその提案を受け入れようとしませんでした。私にその話をしてくれた病院のCEOは、非常に憤っていました。

次は、別の例ですが、非常に短い期間で「セルフマネジメント」に移行した中国の企業の話です。その企業では、労働時間をチェックする必要がなくなったと、「セルフマネジメント」の開始初日にタイムレコーダーを会社からすべて撤去しました。そして、しばらく経ったある日の朝、創設者兼CEOが現地を訪問したところ、始業時間になってもだれも出勤していない事態に遭遇しました。彼は、彼らがあらゆる形の責任を完全に放棄し、「セルフマネジメント」の自由だけを享受しているように感じて、大いに腹を立てたということです。

この問題の核心は何だと思いますか?以前にもお話ししたことですが、これらのチームは、組織内の他のメンバーと一緒に働くことやクライアントにかかわることのあらゆる影響から遠ざかってしまっていたのが原因です。そうなると、例えチーム内のメンバーが痛みを抱えていたとしても、それがチーム全体の痛みとはなってこないのです。

看護師チームの例に戻って考えると、人員不足のチームが発している痛みを、余裕のあるチームはまったく感じとっていなかったことがよく分かると思います。当然のことながら、人員不足のチームの不満は、看護師長やCEOに向かいました。それによって、彼らもその痛みを知ることなったのですが、しかし、それでも、余裕のあるチームに響くことはありませんでした。

先程の中国の事例の場合、問題はデザイナーチームにありました。彼らのデザインの仕事が遅れ始めたことで、他のチームが「痛み」抱え始めるという状態が起こっていました。しかし、これらのチームには十分なつながりがなく、その「痛み」が届くこともありませんでした。デザインチームは、他のチームが苦痛を抱えているなどまったく気付くそぶりもなく、とても遅い時間に、毎日昼頃に出勤していました。こういった状況を解決するには、何度も言いますが、それぞれのチームが、クライアントや作業をともに進める他のチームに直接さらされることが重要です。何かが起こって、誰かが「痛み」を感じたら、その「痛み」を見て見ぬふりができないような環境が必要です。そういった「痛み」の原因とじかに接していると、他人の「痛み」にも気付けるようになってきます。チームが素晴らしい仕事をした時は、みんなで幸せを分かち合い、良くない仕事をしたことに気付いたなら、どこかの部分で、やはり「痛み」を感じることが必要です。チームの段階がそこまで来たら、マネージャーの介入も必要なくなります。メンバーは各自が責任を持って、自分の仕事に取り組めるようになるからです。

メンバーは自分の仕事にプライドを持ち、その成果は、期待をはるかに上回ってくるようになります。これは、「セルフマネジメント」において、常に目にすることです。仕事の結果に直接かかわり、何人からも守られることがなくなったと分かった時、誰かに何かを頼まれたわけでもなくても、自分から動けるようになってきます。

おそらく、これが、「セルフマネジメント」の最もパワフルな側面です。4.1.11の「自己修正システム」から4つ、5つのビデオを見直してみてください。いま話した内容が腹に落ちてくるはずです。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。