【7.4】傘を広げて部下を守る (Open the shit umbrella (If the CEO is not on board)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/74.html

■翻訳メモ
前回も案内しましたが、このセクションの最初のビデオで、CEOの力に頼らない変革を始める時には2つのルートがあると言いました。1つ目はトップマネジメントから承認を得て進めるという方法でした。これについては前回のビデオで話しました。それともう1つ、誰の承認も得ずに、あなたのできる範囲から始めていくやり方がありました。その場合、後になってそのやり方が認められ、組織内で仕組み化されて、それが周囲に広がるとい道筋がありました。それらのどちらかを選んで取り組めば、多少の希望的観測を含めたとしても、きっとうまくはいくでしょう。最初、一部の人たちは斜に構えているかもしれませんが、そんな人たちが慣れ親しんできた頃には、多くの人にとって、改革には満足感が加わってきていることでしょう。しかし、前回までの内容だけだと、安心して取り組めるとまでは言い切れないのです。進め方の中身にまでは触れてこなかったからです。

取り組みを進めていくには感情的な部分にも注意を向ける必要があります。ワークショップの時によく使われる表現なのですが、「傘を広げる」という表現を聞かれたことはあるでしょうか?シンプルに、組織の上から落ちて来るいろんなもの、特に「つまらないもの」が直接体にあたらないように、傘でよけることのたとえです。あなたが中間管理職だとしたら、あなたが広げるその傘によって、あなたの部下は「つまらないもの」から守られているということです。つまり、あなたは、チームメンバーを守るというインターフェースで会社ゲームをプレイしていると思ったらいいでしょう。具体的には、トップマネジメントなどの管理ラインから生じたものや、人事部から発せられたものが、遮られる対象になることが多いように思います。物事を創造的に捉えようとするのはいいことです。しかし、毎度、そう単純には済まないことの方が多いはずです。時には、困難を伴い、ストレートにぶつかれば多くの人が疲弊してしまう、そういうリスクも孕んでいます。例えば、目標の売上予算を現場チームに落とし込むプロセスで考えてみましょう。数字は上が求めるままでよいのか、現場での判断が入り込む余地はないのか、管理職は結果をシステムに入力するだけでよいのか、など、それらは事前にすり合わせできるのが理想です。しかし、実際にはそのようなプロセスが踏まれることはまずありません。現場はトップダウンの結果を受け入れることになっているからです。本来は、先ほどのような事項を検討しながら、「協調的な売上目標予算」を作っていくべきだと思います。もっとも、あなたに課せられたミッションの最低ラインが、その目標値をすこしでも上回ることだったとしたらです。しかし、この「トップの命令」問題は、依然として並行線をたどっている問題といえます。マネージャーの仕事は、依然として、このシステムに乗っかっているだけのようです。マネージャーが「売上目標」に対して出た結果を、部下の人事評価へ落とし込むとき、例えば、「多角的な視点」などという表現を入れたら、この「会社システム」に順応した人たちは手放しで喜ぶことでしょう。人事部からは、人事評価をどのように行うか、おそらく詳細な指示があるはずです。そして、マネージャーは、次々にメンバーの評価をシステムに入力していきます。彼にとっても、もうとっくに、うんざりした仕事なはずです。これをどうしたらクリエイティブに転換できるのでしょうか?組織の中に本来存在している「人と人との関係性」をベースにして、プロセスを見直そうなどという人は出てこないのでしょうか?

繰り返し言いますが、今、私が言ったような「美しいプロセス」を創造できないか、あなたは、常に意識するようにしてください。では、それについて、2つのバージョンを紹介したいと思います。きっと、人事部は、評価シートの書き方をあなたに細かく指示してくると思います。あなたは、グループセッションではなく、古き良き1対1の業績評価面談を行ったかのように見せかけてシートに記入できそうなら、是非そのようにして下さい。人事部はおそらくその内容に満足することでしょう。評価シートにはグループセッションで出た素晴らしいアウトプットも一緒に添付してあげてください。きっと人事部は、「こんな詳細に記入された素晴らしい評価シートは見たことがない。きっと部門の運営自体も順調なのだろう」と思ってくれるはずです―もちろん、それは、やるもやらないもあなた次第ですが―。どうせ傘をさすのなら、その程度のジャグリングは創造性の範囲といえるでしょう。傘の下に隠して、獣の目を欺くくらいでないと、獣を手なずけることなどできるはずがありません。

ただ、毎度毎度これをやっていると、あなたが疲れてしまいます。ある人が面白い「言い換え」をしました。その人は、「毎度文句を言いながらやっているくらいなら、最初からトップマネジメントや人事部なんて、信ずるに値せず、とした方がいいよ」と言いました。その一言があれば、メンタルのスイッチの切り替えが可能になります。また、それそのものをゲームとして楽しんでしまうことも可能になってきます。「仕事場はゲームスペースだ」という、この感覚です。これは、ある意味、「学びの探究」の成果ということもできます。あなたが単なるインターフェースとして振舞っている以上は、疲労感から逃れることはできないでしょう。その意味では、あなたは、「最も学ぶ機会に恵まれた人」でもあるわけです。なぜなら、あなたは、システムが求める古い方法と、あなたが試したいと思う新しい方法とを常に対比させながら仕事を進めることができるからです。あなたの学ぶ量は、途方もないものになることでしょう。ですので、仕事は、ゲーム感覚で楽しめばいいのです。そうすれば、ある時点で、―それが1年先か2年先か、分かりませんが―、あなたは相当に鍛えられ、そのおかげで、押し戻せるだけの力を持てるようになるというわけです。これは飽くまで私の考えですが、あなたは、場からエネルギーを得られるだけでなく、きっと、その一連のプロセスのすべてを自分自身の中に取り込み、力に変えていくのです。しかし、いくらあなたがパワフルになったとしても、あなたが大きな力で押すと、システムはその分もっと大きな力で押し返してきます。私があなたに提案できるとしたら、それは、最も基本的な原則に立ち戻りなさいということです。もしも、あなたがもはや意味のないものと考えている評価制度について、人事部からその使用を強要された場合、あなたは「そもそもの原則」に立ち戻って考える、ということです。つまり、この窒息しそうなコンプライアンスメカニズムの向こう側で、人事部が達成しようとしているのは何なのか、あなたはそれを考えるということです。そして彼らにはこのように教えてあげたらいいでしょう。「私はあなたが必要としていることを理解しています。それをどうやったら達成できるかも含めて分かっています。それは、必ずしも、あなたが発信するやり方に従わなくても、もっとエキサイティングな、皆が自発的にできる方法があるのなら、そのやり方で行った方がいいと思いませんか。もしそれに興味をお持ちいただけるなら、人がワクワクする方法をお見せしますよ」という具合に。システムは押し戻してくるといっても、あなたがしようとしていることの本質に対して理由なく押し戻してくることはしないものです。あなたは皆のためになる、新しい「より良い方法」を提案することで、システムの稼働をサポートすることになります。彼らはその提案に理解を示さないかもしれませが、しかし、その場合でも、少なくともあなたのことは、他者の意見を尊重しながら自分のやりたいことを提案できる人物として、彼らの脳裏に焼き付くことでしょう。

もし、それを別の方法で行うとしたら、きっと、衝突を避ける方法を選ぶことになります。上から降ってくる規制に対して、傘はそれをブロックしてくれます。その傘の効用については驚くべきものがあります。傘自体は「あたり」を柔らかくしてくれるものであるのと、もう一つは、そこに小さな隙間も作ってくれるのです。しかし私は、積極的にこの傘の使用を勧めているのではありません。それに勝る方法は他にもあるはずという前提は崩したくありません。しかし、多くの場合、既存のやり方に疑問を呈するという行為は、別の選択を考えないといけないほど難しいものなのです。その場合は、傘の下に小さな美しい世界が広がることを祈ります。

ここでひとつ覚えておいて欲しいのは、規制に対抗するという行為は、非常に素晴らしいゲームだということです。そういう見方ができるようになればバーンアウトは防げます。そして、そのプロセスを通して、あなたはたくさんのことを学ぶことになるでしょう。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。