【4.1.9】「セルフマネジメント」の誤解5:エンパワーメントとサーバントリーダーシップについて(Misconception 5: Empowerment and Servant Leadership)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/419.html

■翻訳メモ
挑発的に聞こえるかもしれませんが、私は「エンパワーメント」という言葉は好きではありません。また、「サーバントリーダーシップ」の考えについても同様です。現代における伝統的な組織、つまりピラミッド型の組織では、「エンパワーメント」や「サーバントリーダーシップ」といったら最高のものです。もし私が、ピラミッド型の組織で仕事をするとしたら、上司に対して、「エンパワーメント」と「サーバントリーダーシップ」は是非やってもらいたい思うことでしょう。しかし、「エンパワーメント」と「サーバントリーダーシップ」は「セルフマネジメント」ではありません。「セルフマネジメント」と「ピラミッド」とは構造が違うのですから、それらが並び立つことはありません。ですので、「私たちはセルフマネジメントを取り入れています。だから、メンバーにはエンパワーメントしています」とか、「セルフマネジメントを実践している私たちは、エンパワーメントとサーバントリーダーシップの文化を持っているのです」などと聞くと、「あー、何かおかしなことが起こっているなー」と思ってしまうのです。まったく互換性がないことを平気で言っているわけですから。と同時に、それは、「セルフマネジメント」が機能していないことの何よりの証となります。考えてもみてください。人をエンパワーするということ、つまり、力を与えるというのは、それは依然としてトップが力を握っているということではないですか。権力の一部を一時的に貸し与えているだけということですから。セルフマネジメントにおいて、力は誰かから委ねられたものではありません。最初から分散保有しているものです。皆が力を持ったシステムで、一部のサーバントリーダーが力を貸し与えること自体矛盾しています。

この「サーバントリーダーシップ」の概念をもう少し掘り下げてしてみましょう。繰り返しますが、ヒエラルキー型の組織では、この概念はとても素晴らしい概念です。まず、サーバントリーダーというのは部下に「仕える」リーダーシップを意味しますが、しかし、私にとって、それは、恐ろしく男性的であると感じるのです。メンバーはリーダーに奉仕してもらうことを欲しているのでしょうか?私は、これもエゴの罠ではないかと思っています。「私はもはや、ピラミッドの頂点に立つ英雄的で独裁的リーダーではありません。部下のあなたこそがピラミッドの頂点に立つべきなのです。あなたは特別な存在です。それに引きかえ、私は、ただひたすらあなたに仕える、サーバントリーダーなのです。私の心の中は常に、「はい、ご主人様!」というものです。繰り返し言いますが、私は奉仕する立場ですから部下の皆さんとは違うのです。そう、私はみなさんと立場が違うのです。違った立場で、あなたに仕えているのです・・・」。あー、ありえない!!!

要するに、セルフマネジメントでは、まったく違った考え方をします。メンバーは、特定の人にではなく、「組織の目的」に対して貢献しているのです。いいですか?「仕える」や「奉仕する」という概念を使いたいなら、私は「組織の目的」に仕えているのです。セルフマネジメントでは、自分で決めて自分で動けるのですから、特定の人に仕えたり、奉仕したりすることはありません。皆が同じく力を持って、アドバイスプロセスを使って、どんな変化でも起こせるのです。ゆえに、誰かに奉仕するという概念はありません。もし誰かが病気なら、その人を看病して、その人の回復まで奉仕することはいいことだと思います。しかし、メンバーの誰かが病気なのですか?私たちはなぜ、病気でもない人に尽くさないといけないのでしょう? 実際に私たちが敬意を示すべきは「組織の目的」に対してです。本来はそれが美しい姿です。私が言う「サーバントリーダー」とはこういうことです。言ってみれば、私たちは皆、「組織の目的」に対するサーバントリーダーかもしれません。少なくとも、ピラミッドの下層にいる人に仕えるようなことはありません。

もし、まだ、「エンパワーメント」や「サーバントリーダーシップ」といった言葉を使い続けたいのなら、「セルフマネジメント」とは切り離して考えるようにしてください。そこが混同してしまっているのは、「セルフマネジメント」に関するあなたの理解がまだまだ進んでいないからです。ただ、それはそれでいいのです。それはプロセスの問題なのですから。ただし、絶対に自分を騙すようなことだけはしないでください。つまり、「セルフマネジメント」を実践しているとは言ってほしくないのです。あなたがやっていることは、おそらく、「慈悲深い独裁」なのですから。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。