【4.3.7】セルフマネジメントにおけるトレーニング(Training team-members in self-management)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
—————————————————————

■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/437.html

■翻訳メモ
従来のやり方に馴染んだ組織が「セルフマネジメント」に移行しようとすると、とてもたいへんな思いをします。伝統的な階層ピラミッドの中に何十年もいたらやむを得ないことです。ゆえに、今回紹介するトレーニングは、その後の移行がスムーズに進むか、それに向けて、大きな役割を果たします。

優れた「セルフマネジメント」または、「ティール」のトレーニングはどんなものがあるかと、よく聞かれます。私は、それは、随分、短絡的な質問だと思います。つまり、組織に居座り続けているテンションは何なのか、そこで解決しようとしていることは何なのかがはっきりしていないとトレーニングも何もないからです。というのも、もしメンバーが仲良しグループを形成していて、だれも責任を取りたがらないのであれば、別のトレーニングが必要になってきます。あるいは、影のボスがいるという場合もあるかもしれません。または、そもそも「セルフマネジメント」がどのように機能するのか、だれも分かっていない状況があるのかもしれません。マネージャーに対する恐怖心がまだ残っている組織の場合だと、メンバーは、表向きイエスと言っても、だれも本気で仕事に関わろうとしないことがよくあります。これらすべては、まったく異なるトレーニングアプローチが必要になります。ですので、必要としていることは何なのか、最初にチームの中で答えを持つことが肝心です。

もう1つ言えることは、すべてのトレーニングは、実際の仕事と関係させることがとても重要になってきます。一般的には、理論など、抽象的なことを学ぶトレーニングが多いと思います。しかし、それだとあまり意味がありません。実践的でないものは学ぶ意味がないと思います。ですので、ここで紹介するトレーニングは、すべて現場での実践をベースに考えられたものであると思ってください。そして、この「セルフマネジメント」のトレーニングは、専門のトレーナーがいて、そのトレーナーの経験を通して学べるようになっています。

ある組織は、メンバーが互いに仲が良すぎて、だれも責任を背負おうとしないという事実について話してくれました。そこでは、責任を持つことについて、またフィードバックのやり方についてなどをトレーニングしました。しかし、説明責任を果たすための会話は、トレーニングよりも、実際の方がはるかに面白いと思います。トレーニングはすべて、理論を理解し、それを実行に移していけるように設計されます。

「定義」、「導入」、「実践」といった一連の流れは、トレーニングを通して学んでいきます。「決定」はどのようにくだされるのか、「対立」はいかにして起こるのか、「責任」はチームの中でどのようにシェアされていくのかなど、「新しい実践」として1つずつ学習していきます。そうやって、トレーニングと、実際の業務におけるメンバーとのやり取りを経て、実践がチームに根付いていきます。

中には、依然、影響力を持ったまま、かつてのマネージャーが居座っている場合もあります。事実上、以前のまま、権力を行使し続けている状態が続いています。そういう時は、「役割」について、また、「意思決定のメカニズム」について、その元マネージャーと会話を持たなければなりません。それは一つの良いトレーニングにもなります。以前よりも明確になったチーム内の役割分担について、リアルに会話を進めていきます。意思決定については、その場でアドバイス・プロセスを実践してみることも良いトレーニングになります。そうすることで、すべてが明確になっていきます。

3つ目はトレーナーにかんすることです。従来とは異なる存在、異なる態度からトレーニングを行うことを厭わないトレーナーを探し出す必要があります。伝統的なトレーニングは、ヒエラルキーモデルと同じで、トレーニング効果など、結果は分かっていることが前提になっています。そして、それは、一方から押し付けられるものでもあります。「セルフマネジメント」において、本当に育てていきたいのは、「共創」のできる人材です。それには、チームが取り組むべき課題をしっかり把握し、経験に基づき、理論と実践との両方を指導できる人物が必要になってきます。つまり、トレーニングそのものが、「セルフマネジメント」の本質を体現化したものでなければなりません。

4つ目の考えは、これは明白なことですが、すべてのトレーニングは、ホールネスの実践となるような素晴らしい瞬間でなくてはならないということです。そのためには、安全や安心が担保されることが重要になってきます。「セルフマネジメント」に移行するのがどれほど難しいか、メンバーが経験しているアイデンティティの変化や葛藤など、内なる心の声を安心して話せる場づくりが必要になってきます。不安や葛藤といっても、そこには、困難だけでなく、希望や憧れ、願望も混ざっているはずです。驚くべきことではありませんが、トレーニングの段階で、感情が表れて、涙を流すメンバーも出てきます。それは移行に向けて、とても良い兆候だといえます。そういった場面を経て、共感性が育まれるのです。私は、常に、トレーニングとは、「ホールネス」を確立するため、また、メンバーが仮面を脱ぐための、いわば「神聖な機会」であると捉えています。

次は、トレーニングの作り方についてです。人事部や移行チームが作る型どおりのトレーニングは、どのチームも受ける必要はないと思っています。私は、メニューのようなものを作って、チームが必要に応じて受けられるよう、常に開示しておくことをお勧めしています。できることなら、トレーニングを作るにも、ひと手間つけ加えるべきです。トレーニングは、想定内に収めるのが目的ではなく、実際に直面している問題に対応できるものでなければ意味がありません。

次が最後になります。自分のありたい姿を追いかけたり、行きたい場所を明確にしたりすることも大事ですが、その一方で、望んでいないことを言葉にすることも、また価値があることです。そして、それをチームで共有することはとても役に立ちます。アストリッド・フェルメールやベン・ウェンティングといった、ビュートゾルフ社でトレーニングにかかわっていた人たちは、誰も演じて欲しくない「役割」に名前を付けるという素晴らしい方法に取り組みました。例えば、チームに内にさまざまな意見があることを快く思っておらず、とにかくコンセンサスを取りたがる人のことを「反体制の抑圧者」と呼ぶようにしました。他には、「それではうまくいかないドラゴン」というのもありました。なんでもかんでもルール化しなければ気が済まない「ルールの創造者」というのもありました。そうすることで、ああ、私たちはこの罠に嵌りそうになっていたんだ、などと、チームが気付けるようになってきます。自分たちが望んでいないことを言語化しておくことは、半分楽しみながらできるトレーニングです。

トレーニングについては、実はもっと多くのことを言いたかったのですが、今回は、これらの4つ5つの考えの紹介で止めとおこうと思います。トレーニングは大きな助けになるものですが、従来の人事部が提供していたような、理論的で、前もって結果が分かる、一方通行のものは止めておきましょう。「セルフマネジメント」に移行することで何を目指しているのか、トレーニングにそれを反映させ、そして、是非、「学びの過程」という旅を作り上げてください。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?