【6.4】現実と向き合う勇気を持っていますか?(Do you have the courage to face reality?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/64.html

■翻訳メモ
パーパスや存在目的について話すときに、見過ごされがちな大きな問題があります。それは、私たちの現代のビジネスや経済活動の多くが破壊的であるということです。そのため、組織が自分たちのパーパスを真剣に見つめ、耳を傾けることが難しい場合があります。こう言うと衝撃的かもしれませんが、もしかしたら、現在のビジネスの50%、80%、あるいは、ほぼ100%が、非常に破壊的であるために、本来は存在してはいけないものなのかもしれません。このような状況に置かれた人々に対して、私は大いに共感します。多くの組織は、意味のない表面的なビジョンを掲げています。なぜなら、現在のビジネスにおいて、破壊的でないビジョンを考えることは、とても困難なことだからです。

私は、今こそ現実に直面する時だと感じています。世界中で展開されている非常に大規模なショッピングモールチェーンのCEOと一日を過ごしたとき、彼の勇気に非常に感銘を受けました。彼は、ショッピングモールが過剰消費の最も極端な形態であり、持続不可能で、さらに人々を幸せにしていないという現実を見つめる勇気を持っていました。そのCEOが、言い訳をすることなく、その現実を正面から受け入れた姿勢に驚かされました。彼は、「確かに、我々は破壊的なビジネスをしている」と認め、その上で「では、私たちのパーパスは何であるべきか?」と真剣に考え始めたのです。彼は、このショッピングモールが巨大なインフラを持ち、何千、何万もの人々が集まる場所であることを踏まえて、これらの場所が将来の「町の広場」のような役割を果たし、実際に社会にとって有益な機能を持つことができるのかもしれないと考え始めました。私はその姿勢に非常に感銘を受けました。なぜなら、そのような考え方は非常に稀だからです。

他の産業に目を移してみても、それらのどれもが、いかに破壊的であるか知ることができます。食肉産業などは、その全体が大きな闇で包まれています。もし、産業的な畜産や動物の飼育の現実を目の当たりにすれば、私たちはあまりの衝撃で二度と肉を食べなくなるでしょう。そのくらい、事実が外に出ないよう密閉された中に業界自体が存在しているのです。

肥料や農薬の産業も破壊的と言っていいような産業です。その非持続的な方法はわれわれ消費者を欺くことを前提としているかのようです。今のようなやり方を続けていると、土壌の表面が押し流され、地球上の豊饒な土地はすべて失われるでしょう。

ファッション業界全体はどうでしょう?グラビアのセクシーな女性の広告なしでは成り立たない業界といえます。多くの広告は、未成年を思わせる女性に衝撃的なポーズをとらせることをします。あるいはその境界線が薄れているのか、さらにはレイプの暗示があるのかと疑問を抱くような広告が多く見受けられます。それは本当にショッキングです。

考えてみてください。例えば、コカ・コーラのような飲料や炭酸飲料が存在する理由は何でしょうか?それには、まず、彼らが一般的に使用している「ショ糖」について言及する必要があります。その「ショ糖」を使用するビジネスモデル自体が劣悪なもので、多くの子どもたちの発育にダメージを与えています。しかし、この側面からパーパスに想い至るのは難しいかもしれません。たとえ1つの事例ではそうであっても、多くの事例を並べたとき、パーパスが「今のままで続けていけ」と囁くとは思えません。これらの業界に属する多くのビジネスは、消滅する運命にあり、その消滅が新しい何かの糧となるべきだと信じています。そして、私はそのビジネスが存在する理由があるかどうかを判断するための簡単なテストを考案しました。そのテストは、以下の3つの質問から成り立っています。

第1問です。今のような持続不可能を前提とするマーケティングが禁止された場合、彼らや彼らの組織はどうなると思いますか?今のマーケティングができなくなっても、彼らは存続し得るだろうかという質問です。このビジネスは、常に虚偽のニーズを支え続けることによってのみ成り立っているのでしょうか。たとえば、コカ・コーラの広告が一切なくなった場合、どのような影響があるでしょうか?このビジネスは、その提供する商品やサービスの本質的な価値によって存在しているのでしょうか、それとも「幸せになるためにはこれが必要だ」といったイメージを常に流布することによって成り立っているのでしょうか。

2つ目の質問は、透明性です。もし、製品やサービスを購入する前に、その作り方を正確に写した5分間の動画を見なければならなかったとしたら、あなたはその製品を購入するでしょうか?という質問です。私は食肉業界の現状を知ったら、誰も肉を買わないのではないかと思います。乳製品に至っても同様です。現在、飼育されている牛は、すべて人工授精だという事実は、ほんの一握りの人しか知りません。牧場に行けば、牛の体内に腕を入れ、一頭の父牛の精液を母牛に移す、あたかも人間が牛をレイプしているかのような光景を目撃することになります。そうやって毎年新しい生命が誕生します。子供が生まれるとすぐに、子牛は母親から引き離されます。子どもを奪われた母牛は、1日から2日の間、何時間にも渡って、ずっと涙を流し続けます。このような情景なくしては、私たちはミルクでさえも手に入れることができないのです。5分間の牛の悲鳴を聞いて、それでもまだあなたは牛乳やチーズ、アイスクリームを買おうと思うでしょうか。私はチーズが大好きですが、それでも直視する必要があると思います。

3番目の問いは総コストです。製品やサービスに価格が含まれていないすべてのコスト、例えば、環境汚染や社会的影響を考慮した場合、あなたはその製品をまだ購入するでしょうか?例えば、工場のように機械的に運営されている学校システムを考えてみてください。もし、学校が生徒に与える不安、うつ病、自殺率、ドロップアウト率、青少年の犯罪など、これらの影響をすべて考慮に入れた場合、学校を運営し続けることができるでしょうか?これらすべての影響を本当に考慮すると、学校の運営を続けることが正当化されるかどうか、考え直す必要があるかもしれません。

これらの3つの質問はとても重要な質問ばかりです。自分のビジネスに当てはめて考えることもできます。もしマーケティングが許可されていなかった場合、完全な透明性があった場合、つまり顧客が製品やサービスが作られる過程を示すビデオを見る必要があった場合、そしてすべてのコストが考慮された場合、あなたの製品やサービスはまだ存在するでしょうか。この点についてじっくり考え、目を背けずに向き合う勇気を持ってほしいと思います。それは非常に不快かもしれません。なぜなら、私たちは答えや解決策がすぐに得られるときにしか物事を見たがらない傾向があるからです。問題に直面し、その答えがわからないままじっとしていることは非常に難しいことです。しかし、私たちは蓋を開けて、見ようとする意志を持つ必要があります。そうしないと、ただ単に命のないものを維持しようとしているだけで、それはパーパスが何も注ぎ込まれていないものとなり、私たちにとっては大きなコストを伴う無理やりな維持に過ぎないのです。

私たちのクライアントや地球に対して、簡単な答えはありません。実際に見つめた後に、どのようにして生きる価値のないものを手放すべきかはわかりません。しかし、答えは、私たちが物事を見つめる勇気を持ったときにしか得られないと思います。問題と向き合い、腰を据えて考え続けることでしか可能性の扉は開かないのです。もし、今のようなことを続けていてはいけない、というパーパスの声を聞いたら、その組織はどこに向かうのでしょう?高貴なパーパスとは何か、いのちあるパーパスとは何かを探し始めることが重要です。


■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。