【4.4.5】チームで起こる摩擦(Team members are harsh with one another)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/445.html

■翻訳メモ
以前の【4.2.10】の動画では、「セルフマネジメント」が始まると、その次の段階で何が起こるかについて話しました。安全な環境で、本音を語り合うことが行われます。驚く組織もありますが、たいていの場合、そこでは、過去の傷や怒りが表面化します。特に、メンバーがトップマネジメントに対し抱いている不信感が大きい場合、そういったことがよく起こります。初めてオープンに話せる機会ができたことで、様々なことが表面化します。すべてを吐き出せる場を作ってから、新たな未知の領域に向かうことが必要になってきます。

「セルフマネジメント」の組織においても、その一部は、特定のチームメンバーに他のメンバーの攻撃が集中することがあるといいます。それと同様の現象ですが、自分の正当な分担を果たさず、ネガティブで、他のメンバーとの折り合いを欠いた「問題児」がチーム内にいることがあります。多くの場合、そういった人は、今までは、積極的な介入ではなかったにしろ、何らかの意味でマネージャーの保護下にあったはずです。そういう人に対して、チームは無力であり、長い間、耐え忍んできたはずです。それが、「セルフマネジメント」に移行したことで、マネージャーの保護がなくなったのですから、チームにとっては今までの「うっぷん」を晴らす時が巡ってきたというわけです。決して多くはないですが、いくつかの組織からは、そういう恨みを晴らしたことを聞きました。その恨みの深さには驚かされましたが。とても興味深いことですが、私たちは自分がパワフルになるのを感じると、大抵の場合、そこから生み出されるものは良いものになるはずです。しかし、その一方では、「シャドウ」と呼ばれるような人間の本能的な行為が出てくることもあります。人間にそのような側面が存在することは、遺伝子に刻み込まれたものでもあり、受け入れなければなりません。この問題にどう対処すればいいのか?それは、メンバーで前もって話し合っておくことが必要だと思います。そして、「セルフマネジメント」に移行するということは、過去の歴史が蒸し返される可能性があることについて話し合い、それが出たときの対処法なども決めておくようにします。

2つ目は、最初のチームミーティングにコーチを同席させることです。悲劇的な状況を避けるには、外部の人間を入れるのが良いでしょう。そこでは、いま何が起きているのか、真剣に話し合う必要があります。そこでは、このような会話がされるでしょう。「あなたは、チームにとっての問題児でしたが、ずっとマネージャーに守られてきた存在でしたね。私たちはこの問題にけりをつけなければなりません。私たちは、どのようにやっていくのがいいと思いますか?」という、リアルな会話がなされるのです。前回のビデオでは、定期的にチーム内で、「セルフマネジメント」をチェックインすることの意義について話しました。チームの方向性を確認するにはとてもいいやり方だからです。今回についても、やはり、それを話すためのスペースが必要です。


ビュートゾルフ社のように、専門のコーチが各チームを担当することを想定してもいいでしょう。人間関係のトラブルはコーチに相談できます。規模の小さい組織では、相談できる相手が限られることもあります。いずれにせよ、そういった状況が起こり得ることを考慮し、準備を怠らないようにしましょう。もし今、そのような状況に直面しているなら、まずは話し合いの場を設け、外部のコーチに助言を求めることが重要です。会話を打ち切ってしまってはいけません。建設的な方法で、過去の問題について話し合うことが必要です。最終的な決定はチームが行います。コーチはファシリテーターに過ぎません。かつてのマネージャーとは異なり、解決策を提示する責任はありません。

「セルフマネジメント」に対処することは、煩わしいと感じる人もいるでしょう。私は逆に、全てが完璧でなければならないという考えが理解できません。また、新しいパラダイムへの移行時に、旧来の考え方である「事なかれ主義」が持ち出されることにも驚きます。彼らの主張が正しいとするなら、成功の可能性が100%でなければ前進できないことになります。これを具体例で説明しましょう。

たとえば、あなたが代替医療を提供する医師で、通常の治療法よりも癌をより良い方法で治療できると信じているとします。しかし、代替医療のリスクは高いです。なぜなら、治療を受けた患者が亡くなると、医師は刑務所に入る可能性があるからです。気をつけなければならないのは、伝統的な治療法でも、毎日多くの癌患者が亡くなっているという現実です。同じ結果でも、代替医療の場合は責任を問われますが、通常の治療法ではそうではありません。私たちの基準の一貫性を再考する必要があります。新しいものは完璧でなければ批判されますが、既存のシステムは機能していなくても問題にされません。それでは、「セルフマネジメント」に置き換えてみましょう。確かに、人間の欠点は存在します。しかし、それらは従来の階層型組織では日常茶飯事です。むしろ、「セルフマネジメント」の方が問題が少ないはずです。

人間の暗い面が完全になくなることはありません。ですから、それが表れたときにどう対処するかが重要です。人間の尺度がどれほど偏っているかを理解していれば、完璧さを求める必要はありません。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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