【6.8】ティールにおける戦略的な計画とは?(How to do strategic planning)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/68.html

■翻訳メモ
前回は、まだ私たちは「戦略的計画」が必要かという問いについて話しました。ほとんどのケースで、答えはノーでした。しかし、ほんの少し、例外的に計画が必要な場合もありました。もし、あなたが、すべてのケースをイエスで答えたいと思う人なら、その古い予測制御のやり方は見直す必要があるかもしれません。では訊きます。感知すること、そしてそれへの呼応ができるようサポートを続けるには、どのような方法があるかご存知でしょうか?

スペインには、バスクカントリーというセルフマネジメント組織があります。その組織の運営については、別に話す機会を作ろうと思いますが、今回にかんしては、彼らの「戦略的思考」について取り上げたいと思います。彼らは、感覚に呼応するという私が発する問いに対し、それを掘り下げ実行している、おそらく製造業では唯一の組織です。

一方で、大多数を占める古典的な戦略計画を重要視する組織は、3つのフレームで説明ができます。

1つ目の要素は「センシング」です。いま目の前の世界で起こっていることをただ単に感知するということです。組織内で何が起こっているのか、「事業計画」の中で何が起こっているのか感知するわけです。これは一種の使い古されたやり方です。専門のコンサルタントがヒアリングするのも、そういった現象を追いかける行為です。失われかけた組織の内部知識や集合的知識といったものが対象となります。その意味では、私たちは、「センシング」に慣れています。本来は誰でもできるわけです。もちろん、セルフマネジメント組織では、それは「セルフマネジメント」に切り替えようとしている組織の場合であっても、すでに多くの人は感知・感応に対してオープンになっているはずです。なので、その場合は、耳を傾ける環境は整っているといえます。しかし、本来の意味での「センシング」とは、それ以上の、もっと特殊な、ある「瞬間」のことを指します。どういうものかというと・・・、組織には多くの人がいます。例えば、工場で働く人、サプライチェーンを担当する人など、大勢が様々な場所で働いています。そこで、そういう人たちを巻き込んだ「センシング」パーティーを催してみるのです。それほどまでに人と人があって会話することは重要だといえます。できればそのイベントは数週間、あるいは、数ヶ月続くのが好ましいと思っています。実際に会える人は、会えない人のためにその会話を録画したらよいでしょう。

その会話の中では、きっと、組織における「役割」についても話されると思います。以前紹介したFavi社の例を覚えていらっしゃいますか?外の世界を知りたいという思いを実現した若い機械のオペレーターの話です。彼は毎日、コンピューターに向かっているだけで、彼の開発した商品がどのようにサプライヤーに納品されるのか、そして、そこで働いている人たちがどんな人たちなのか、知る由もなかったという話です。私からその話を聞いたある組織は、Faviのオペレーターの彼に近いポジションの人を選んで、視察旅行に送り出し、そのまま彼を企画戦略責任者に指名してしまいました。その話を聞いて、私は、そういう人事は本当に良くない、二度としないで欲しいと言いました。その彼を責任者に固定することは、組織になんのプラスももたらしません。特に、組織における彼以外の人たちの「センシング」にも、もう期待が持てなくなります。特定の人に権力を集中させてしまうと、それ以外の人から「センシング」を奪ってしまうのです。もし、任命するとしたら、「センシング・リーダー」くらいのものが良いと思います。メンバーを「センシング」の旅にいざなうリーダーという役割です。いま述べたのが1番目の要素です。ここであなたに問いたいのですが、コンサルタントやマネージャー主導の「センシング」から、組織全体の「センシング」に移行するためには何が必要か、考えてみてください。

2番目の要素は「統合」です。いまどこに向かっているのか、定期的に、感じたことを集約していくプロセスのことを指します。環境は常に変化しています。テクノロジーも同様に変化しています。「パーパス」に最も合致する方向について、定期的に振り返りを行います。この「統合」プロセスもまた、可能な限り大人数でおこなった方がよいと思います。オンラインなら何百人もの人を1つの部屋に集めることもできます。そして、感じ取ったものをいくつかの方向へと「統合」していくのです。本にも書きましたが、あらゆる方法のなかでもっとも美しいと思うのが、ホラクラシーの導入を行う小さな組織であるホラクラシー・ワンが採用している方法です。彼らは、定期的に、全員が丸一日同じ部屋に入って、午前中から付箋を使ったセンシングワークを行います。付箋を使うことで、まとめることが容易になります。彼らがそのワークを行うのは、「パーパス」を目指すためにそれが必要不不可欠だと思っているからです。彼らに言わせると、そのワークこそが、現在地を知る上での原理原則だと言います。そんなシンプルなことでよいのかと思われますか?たとえば、私たちは革新を続けてきました。しかし、このやり方は、常に新しいものを求めるのではなく、今あるものに価値を見出そうとするものです。新しいクライアントの獲得に走る場合もあれば、既存のクライアントに対し、手厚いサービスを提供することもありますよね。普段は、デスクトップを使っていても、外にでたらモバイルを使うのと同じです。夜空に輝く北極星、つまり、「パーパス」から、共通の言語が降りてきます。1つの部屋に多くの人がいる利点がそこにあります。すべての人に同じように降り注ぐことで、誰もが進むべき道を感知することが可能になります。私は、今、北極星を例えに出しましたが、それが「行動指針」を与えてくれるという意味ではありません。私たちは、「行動指針」という言葉に慣れすぎてしまっています。「パーパス」を行動を誘発するものとだけに限定して捉えると、きっと人それぞれに違ったものが提示されることになるでしょう。重要なのは、感知したものを見に行くとき、それが「パーパス」に向かう道のりの支えとなってくれるかという視点を持つことです。

3つ目のステップは「計画」です。前回から、私が“やり過ぎ”と言っているその「計画」のことです。それは、未来を予測してコントロールしようとする行為です。すべてを計画表に表し、マイルストーンを置く行為のことを指します。それはすべてを数字に置き換えて考えるやり方です。本来ならば、数字は、意思決定に外せないものだけで十分です。それさえあれば物事は前に進みます。大きな工場を建設するとか、非常に高価な機械を購入するなど、おおきな資本を投資する場合は、事前に情報は定量化する必要があります。どれだけのものを生み出すか、当然それにかかる費用は計算しておかなければなりません。各イベントが複雑に入り組んだ大型プロジェクトでも計画なしには運営できません。その際は工程ごとにワークフローを決めていくことが必要になるでしょう。しかし、一般的に言って、芸術に計画書は存在しません。言うまでもない話ですが、私たちは「計画」にも慣らされ過ぎています。ゆえに、本当に「計画」が必要なのか、その都度、考えてみる必要があります。本当に必要なら「計画」を立てればいいと思います。しかし、たいがいの場合は、「センシング」と「統合」だけで十分です。

ここまでのところで、従来の組織における「戦略計画」を3つのステップにまとめました。感知し、統合し、そして、計画・定量化するといった具合です。しかし、本当に、私たちがすべきなのは、もっと多くの人たちと、もっともっと“感じ合う”ことです。それによって統合された言語の数が増えるということではありません。そうではなく、感じたものを言語化していくには、できるだけ大勢の「人」が必要だという意味です。そうすれば、計画自体も、そもそも立てられなくなるでしょう。もしあったとしても、意思決定に不可欠な最小限のものにとどまることでしょう。

実は、それについて、ワクワクするようなプラクティスがあります。従来の戦略計画では使われてこなかったものです。それをあなたも組織でやってみると、理論上は、あなたは先駆者になれるはずです。しかし、どうやってやるか、詳しいことはここでは触れないでおきます。なぜなら、それをあなた自身で試して欲しいからです。まず、瞑想することで感じ、そして、それを統合していきます。瞑想には視覚化をいざなうガイドをつけてもいいかもしれません。何が湧き上がってくるかにだけ集中してください。これがシステミック・コンステレーションです。あなたがそれに精通しているかどうか私には分かりませんが、一部の組織ではそれを使って、非常に大きな力を得ているのも事実です。こう話すと、どこか怪しく、奇抜過ぎると思われるかもしれませんね。しかし、これを試した一部の組織からは、その“怪しさ”を受け入れるのであれば、驚くべき洞察を得ることができるというレポートが出されています。もし組織に、強烈な「ソース」を持った創設者がいるなら、その彼や彼女がすべての源となるでしょう。巻き込めるだけ巻き込むといったパワーを発揮するタイプが多いのも創始者の特徴です。その「ソース」の力は、決して過小評価してはなりません。このことについては、他のビデオでも話していきます。

フランスにToscana Accompanimentというグループ組織があります。彼らはまた別のタイプの、頭、心臓、腹(腸)のワークに精通しています。彼らは身体を使って、感知し、それを統合しているのです。それは常に3つのアングルから行います。その身体をつかったやり方は、従来からある「感知」は頭による「思考」でしかなかったとしたら、それよりもはるかに多くのことを得ることができます。これが、私が「戦略的思考」と呼ぶものです

今回はこれで終わりです。あなたが、その瞑想による「戦略的思考」プロセスを体験したなら、おそらく過去の事象の意味付けも変わっていくはずです。たとえば セルフマネジメント組織などでそれを1年に1回実施しているとします。そうすれば、1年前に捉えたものが、1年後もそのままの関連性を残しているのか、それとも、アップデートされなければならなくなったのか、それも知覚できるということです。
■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。