【7.2】どこまでなら行けますか?(How far are you willing to go?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/72.html

■翻訳メモ
スタートを切る前にさまざまなことを検討する必要がありますが、その検討範囲に、「ここまでやったから大丈夫」といった決まりはありません。組織の一部に対し、「セルフマネジメント」のプラクティスの導入を検討している場合、それに専念できる期間は、先に決めておかなければなりません。言い換えれば、特に大規模な組織の場合に顕著なのですが、今の仕事量にプラスしてどの程度の負荷がかかってくるか、仕事量の兼ね合いを想定しておかなければなりません。もし、移行期間を、1年か2年としか見積もっていないのなら、飽くまで私の感覚ですが、それはあまりに短すぎます。私は、ここからの5年をどう考えるかを想定すべきだと思います。そのためには、根を張るまでの時間を考慮に入れて、学ぶ時間を算出する必要があります。そして、大企業の場合は特に、昇進などで推進者が異動になった場合も考慮にいれなければなりません。でなければ、昇進を放棄せざるをえなくなる、といったことも出てくるかもしれません。マネージャーが2、3年ごとに交代する組織なら、プラクティスの期間は、通常より長く設定すべきです。これらは、事前に行なう必要のある本当に重要な検討項目です。なぜなら、このプラクティスのために、あなたは、あなたの人生のうちの貴重な何年間かを費やすことになるのですから。

2番目の検討事項はリスクと関係しています。それにはまず、どこまで行きたいかというゴール設定と、そこに行くためには、どの程度までならリスクを背負えるかというリスク許容度の検討、それらの2つをしておく必要があります。例えば、あなた本人に降りかかるリスクとしては、この大きな変革への取り組みの結果、解雇される可能性があるのか、といった事柄です。なぜなら、あなたがやろうとしていることは、従来あるすでに描かれた線の外側に色を付けようとする行為だからです。だから、同じ色を塗る行為でも、それが狭い範囲だけなのか、それとも、もっと大きな範囲に対してなのか、先に決めておくわけです。どこかの場所に色を付けようとした時に、ひょっとしたら、あまりに整合性が欠如しているか、あるいは、リスクが大きすぎるという理由で、システムが反抗してくるかもかもしれません。システムの受け入れ拒否が原因で、あなたが解雇される可能性だってあります。私が問いたいのは、あなたは解雇に対して不安を持っているのか、それとも、そういう状況になっても全く困らないのかということです。私は、ニュアンスでの回答が欲しいのではなく、あなたは今言ったことのどちらなのか、明確にしておく必要があると言っています。しかし、その答えに、正解はありません。どちらであってもかまわないと思います。リスクを冒すのは無理だというのなら、それでもいっこうにかまわないと思います。この仕事はあなたにとって、とても重要な仕事ということに変わりありませんが、それよりも、あなた自身がその仕事のリスク度合いを確実に把握していることの方がはるかに重要なのです。それによって、引かれた線の外に向かって、あなたがどこまでなら飛び出していけるかの、その範囲が決まってくるのです。ある組織が実践した方法で、ひとつ、良いアドバイスがあります。それは、まず、線の外側に色を付け始める時は、ぶれないで、強力にやるということです。そして、もう1つ、それは、プランBを持つということです。つまり、あらかじめ、いくつかの場面を想定しておくことを意味します。例えば、システムがあなたを拒絶した場合、あなたはどうなるか、ということや、つまり、解雇された場合も想定しておいてください。そうやって、次々に問いを立てていきます。解雇された時は、次の仕事についての準備がありますか?自分がどんな仕事ならできるかどこまで把握していますか?そうなったとき用の複数の収入源はありますか?役に立ちそうな別の名刺は持っていますか?次のキャリアは、あなたにとって意味があると思える仕事ができそうですか?などと、繰り返していきます。そこまでできてはじめて、あなたはリスクへの準備ができたと言えます。もし、あなたの収入源が今の仕事で、別の選択肢がない場合、これらの検討事項は絶対的に重要なものです。なんの準備もないまま解雇されてしまうと、無意識のレベルでは、あなたは世界の終わりを感じることになってしまいます。人生にシャッターが下ろされたかのように感じるはずです。そうなれば、100万パーセント、あなたは「完全無力」に陥ります。

そんなことを言われたら、線の外側に飛び出すなど、ほとんど不可能だと思うかもしれませんが、その一方には、そうならないためのもう1つのプラン、つまりプランBがあります。これは、私が今活動していることとかかわってくるのですが、とても魅力的な方法でもあります。おそらく、それを知っているだけで、あなたは信じられないほどパワフルになるはずです。例えば・・・、「上手くいくかいかないかは、単に相性だけの問題だよ。私はどこにだって行くことができる。つまり、ノープロブレムさ!」といった具合にです。

この方法は、私が、マッキンゼーという大きなコンサルティング会社で働いていた経験と密接に関係しています。当時の私は、プランBについて、何ひとつ知りませんでした。その存在は知っていても、それがどう機能するかまでは分かっていなかったのです。つまり、当時の私は、いかなるオプションも持っていなかったということです。むしろ、仕事がなくなったらどうしようという認識を持ったことで、線の内側に対する色付けのみが上達していきました。できるコンサルタントとして、評価が高まる一方で、線の外側にはまったく着手していませんでした。未着手だったというより、どうやって塗ればいいのか分かっていませんでした。プランBという考え方は、あなたにとって、とても重要なものになるとご理解いただけましたでしょうか。

本当の力を持つ瞬間のことをお伝えするために、2、3年前、ある人からもらったメールのことをお話したいと思います。それは、今まさに私が言おうとしていることを、端的なセンテンスでまとめ上げられています。そこには、「自分自身を裏切るくらいなら、むしろ解雇されたほうがいい」と書いてありました。つまり、あなたにこの心境が訪れた時、あなたは本当にパワフルになれるのです。

最後になりますが、組織には心底うんざりしていて、もう我慢できずに、辞めようとしていた人たちとの会話を紹介したいと思います。「解雇されるくらいなら、自分のほうから辞めてやる」と、彼らは口を揃えて話していたのが印象的でした。どちらにしても組織から去ることに変わりはなく、そこにあったのは、彼ら本人のエゴをどう納得させるかだけの問題でした。あなたが本当に辞めてもいいと思うのなら、組織にいるうちに準備を始めるべきです。あなたが、すでに組織にいない人間として、今の環境を使って実験を始めるのです。あなたにとって最悪のケースは、何の準備もできていない状態で解雇されることです。最も良いケースは、あなたが抱えきれないほどの「楽しみ」を抱えながら働いていることです。その在り方を習得するだけで、組織にいながらにしても、キャリアを開花させ、素晴らしい人脈を築いていくことが可能になります。いつ辞めても生きていけると思って働くのと、そこに留まるしか選択肢がないのとでは、あなたのキャリアはまったく異なってくるはずです。逆に、もし、本気で残りたいと思うのなら、2年後に解雇されると想定を立て、そのための準備に入るのです。そうすれば、そうでない場合と比べて、その間、あなたはとてつもない量の学びを得ることになるでしょう。そうなれば、あなたは新しいタイプのマネージャーとして、周りからの評価もうなぎ上りになること間違いありません。あなたはきっと、組織の内側とは違った別の顔を組織の外に確立していることでしょう。そこまでいけば、多少は名が知れたことで、次のキャリアの扉も開かれているはずです。その一方で、組織にうんざりしたという理由で今辞めても、チャンスの扉は閉じたままです。おそらく、今の不平がいっぱいつまった組織とよく似た別の組織に流れ着くだけです。私が言わんとしていることは、今はいつ辞めてもいいと思って、困る前に多くの検討をやっておいたほうがいいということです。最後に、その逆を聞きます。あなたがあなたの組織に留まっている理由は何ですか?あなたはあなたが望む姿に今の組織を変えることができますか?

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。