【7.1】CEOがいない組織(What you can do when the CEO is not on board)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/71.html

■翻訳メモ
今回から何回かに別けて、「CEOがいない組織」をテーマに話していこうと思います。したがって、あなたがそのCEOではないということを含めて、その組織にはCEOたる権限を持った人はいないという仮定で話します。それは、CEOになるための出世レースがない世界ということでもあります。そもそも、それに興味がない人にとっては、元々存在しないものかもしれませんが。そして、これを視ているあなたは、何らかの権限を持っているチームを率いているマネージャーであると仮定します。しかし、あなたは組織のトップではありません。そういった仮定のもとで始めていきたいと思います。

まずは、私が『ティール組織』の本に書いた、飛躍を遂げる組織の持つ2つの必要条件が何であったかを思い出してみてください。1つは、CEOと取締役会が「セルフマネジメント」への移行を積極的に推進しているということでした。そして2つ目は、取締役会やオーナーも、その変化に対して恐れをいだいていないか、もしくは、少なくとも、それを邪魔しようとしていないということでした。

組織がシフトしていくためのそれらの条件は、向こう数年間は有効だと思っています。一部のCEOは、「セルフマネジメント」への移行を、テストケースとして一部の部署から徐々に始めていくと言って、それこそが成功の秘訣だなどと言っていますが、これはまったく本質が分かっていない人の言葉です。何人もの人がこの方法に希望を持っているそうですが、私はそのやり方でうまくいったというのを聞いたことがありません。その理由は、今ここで話している「セルフマネジメント」は、単に新しい管理ツールのセット仕様ではないからです。「パワー」についての考え方、「ホールネス」と「パーパス」といった基盤となる考え方は、従来の何ものとも全く異なっているからです。もし、表面的にうまくいったように見えたとしても、見渡す世界が異なるのであれば、それはまったく奇妙な産物であるとしか言いようがありません。それはきっと、あなたにとっても受け入れ難いものであるはずです。

私はよく人から、「あなたは自分の本をCEOたちに売りつけているのですか?」などと尋ねられることがあります。本を売りつけないまでも、しっかりしたコンサルフィーをとって、私は儲かる一方なのだと。私はロジカルな説明によってそういうことが成り立つのは不可能だと思いますし、また、そんなことを試したこともありません。そして、そのように、儲けることが成功だとも思っていません。私の関心は、飽くまで、ある一人のCEOが、あるポイントから別のポイントに成長して、新たなパースペクティブを獲得するといったところにあります。そう表現すると、一見、私は、機械を構成するパーツの一部として人を見ている機械論者のように感じるかもしれませんが、そうではなく、組織を一つの生命体として見ているのです。人をセットアップされた機能としてではなく、出現する能力として見ている点で、まったく異なるのです。それは「エゴ」をチェックする能力と言い換えてもいいでしょう。それは、人生の大きな困難を経験した後に起こる人間性の大きな変化であったり、それを乗り越えた時の、まるで別人かと思わせるような成長であったりといったものです。私が金儲けのためにやっているという人には、理屈を提示しただけで誰かが成長を遂げるのですか、と逆に聞いてみたいものです。それが本音です。そうでないのならば、私は自分が受け入れられないような合理的な宣伝文句を書いて、もっと儲けているでしょう。

もし、オレンジのパースペクティブの組織で、CEOがいない世界を作ろうとするなら、あなたにできる最大のことは、自分のチーム、あるいは、組織全体が、健康になるのをサポートすることになります。このオレンジのパースペクティブを持つ機械論的な組織は、それ自体、非常に息苦しく、恐怖に基づいた政治を行っているようであり、また、官僚的もありますが、中には、目標管理を行うことによって多くの自由度を持った組織もあります。したがって、あなたはかなりの確率で、信頼に基づいたオレンジの組織を作ることができるということです。そのためには、それが組織にとって「健康」か「不健康」かを、あらゆる場面で、あなたが見極めていかなければなりません。組織全体のことを考えるのなら、それがあなたにできる最善の策だということです。それはCEOやトップが旗を振ってまったく新しいものに移行するという垂直方向の転換ではなく、不健康な状態から健康な状態へと移る水平方向の転換と言えます。経営者というものは、本来、彼らが受け入れる気がないものは、理解しようとさえしない生き物です。

私は、私の提案が、あなたをけっして満足させるものではないことを知って、それでもあえて提案したいと思います。つまり、私は、「組織全体を変革しなさい」とは言ってはいないのです。あなたは、あなたのチームなど、あなたにできるところで、いくつかのティールのプラクティスを取り入れればいいということです。とにかく、先に進むことが重要です。こう言えば納得してもらえるかもしれませんが、何人かの人に対しては、いきなり「組織全体で」と言っても、それは通用しないことをあなたは知っているはずです。それよりも、自分はかつての古い組織におけるマネージャーではないと、あなた自身が表明するところに新しい何かがあるのです。自分のできるところから、とにかく始めることが先決だということです。そんなことをやっても、システム全体は何も変わらないよ、とあなたは反論するかもしれませんが、進化とは不思議なもので、自己組織化は常に部分から始まるものです。それは、おそらく、あなたのプラクティスにかかわった、数人が起点となるはずです。10年かかるかどうか分かりませんが、出世レースに燃える人がほぼ絶滅した時点が本当のスタートになると思います。10年という言葉を聞いて、あなたはすぐに、もしくはもう今の段階で、すでに「出世レース」は存在しないと言うかもしれませんが、実際には、その状況はかなり限られているのかもしれません。「出世」というパースペクティブはそれほど根深いものです。また一部の人は、あなたがやろうとしていることは公平性を欠くと言うかもしれません。なぜなら、「出世レース」は、一部の人にとっては働く上での大きなモチベーションをなりうるからです。仮に3年間、ティールのプラクティスを続けてみてください、「出世レース」がないと不平を言う人はいなくなっているでしょう。一部はその状況を飲み込むことができ、飲み込むことができなかった別の一部は、すでにほかの組織に移っているはずだからです。いずれにせよ、そこでの価値観の相違は、遅かれ早かれ、同じ組織で共に働くことを拒絶することになるはずです。私はそういった例をたくさん見てきました。あなたのチームのメンバーが皆大きな希望を持っていて、そしてチーム自体は、オープンな運営を続けていたなら、それに不平を言う人たちは、不満がエスカレートして、そのほとんどは自分から辞めていってしまうものです。中にはその「希望」に対してさえ、つまり、組織において「希望」を持つこと自体が不公平だと言う人もいます。そのような環境で働くことはできないと言う人には、手を振って見送る以外、あなたにできることはないのです。ひょっとしたら、あなたのチームの多くのメンバーが去ってしまうかもしれません。キャリアで花を咲かそうと思ったら、彼らにとっては、別の場所の方が向いているのだと思います。彼らは正当な理由があって去っていくのです。

私の提案を聞いて、次に取る行動を選択するのはあなたです。いきなり組織全体を変えようとすることは不可能と悟って、自分の領域でなんとかしたいと思えるかどうかということです。あなたの答えがイエスなら、それを行う2つの方法があるので、それらはこの後の2つのビデオの中で紹介しようと思います。ちなみに、経営陣との交渉は常にオープンであれ、というものと、何か新しいことを始める時、あなたのチームはある程度の保護下にある最高の実験室である、という2つです。それに付け加えるとしたら、あなたは、すぐに始めるべきで、そしてあなたはその変化を常に俯瞰する姿勢が必要といったことです。しかし、今言った2つのことを話す前に、あなたにはとても個人的な質問をさせてもらう必要があります。ただ、今回はここで終了で、その質問も次のビデオにしたいと思います。今までに何度もした質問ですが、あなたはどこまで行きたいのですか、という種の質問が待っています。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。