【6.5】「存在目的」はどうやって決めますか?(How to determine purpose?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/65.html

■翻訳メモ
ここまで進んできたことによって、あなたを呼び続けるこの「存在目的」のことをもっと深く知りたいという感情が、あなたの中に芽生えてきているのではないでしょうか。それに応える形になりますが、今回は、2つの「問い」を用意しました。どのように実行するか、と、誰が実行するか、という「問い」です。

まず、組織の「目的」に対して、どのように耳を傾ければよいのか、そして、それを、どのように決めていけばよいのかという問題ですが、答えは次のとおりです。つまり、「目的」に耳を傾けるという行為自体、ある種、神秘的なプロセスと言ってよいものです。多くの人は、それはとても深い場所から湧き上がってくると言います。奥の方から、急に、フッと浮かび上がってくる感覚です。同時に、それが真実であるという感覚も併せてくみ上がってくることでしょう。気をつけてもらいたいのは、あなたがその感覚を言葉にできるからといって、自分に引き寄せて意味づけしないことです。それは特定の意味だけでなく、実際には、もっと多くのものをあなたにもたらしているからです。

もしあなたが、オットー・シャーマーの理論のことをご存じないのであれば、私がその理論をかいつまんで紹介しましょう。いわゆる「U理論」のことです。最初、あなたは理論の側から世界を理解しようとします。そこには物事を操作しようとする感覚が存在するはずです。理解するために、感覚を理論に合わせていこうとする世界とも言えます。しかし、プロセスのある時点で、あなたはより深い場所を体験することになります。時として、自然の中を歩いている時などにそういった体験をすることがあります。または、黙祷やガイド付きの瞑想をしている時に何かを可視化できる、といったことが起こります。「存在目的」が、あなたをその「深い場所」に導いてくれるといった感覚です。それは突然現れます。そして、また、同時に、その感覚がいかに「正しい」か、を認識できることでしょう。そして、そのカーブは、そこから上方に向かい、いまの世界との関係性が明確になるという一連のプロセスを体験します。そのプロセスは「底」を経ることで前に進みます。ゆえに、浅いところ、そして、深いところ、そして、再度現実と融合していくところ、それら3つ場所が存在します。まず、そのことを理解すればいいと思います。

「目的」は、「心」や、本能が拠り所とする、人体でいう「内臓」に対応するものを持っていると考えるのが分かりやすいと思います。本質的な「目的」は「心」を持っている、ということです。言葉の語源はラテン語らしいですが、その「心」には「感情」が宿ります。その「感情」はあなたの原動力となるものです。そういった意味でも、常に、「目的」の側から声は発せられているのです。それゆえに、あなたの探求は、それ自体が満たされたものになり、「正しさ」が生気するのです。「心」や「内臓」を持つ存在が抽象的な概念であるはずがありません。だから、私は、理論に頼るのではなく、あなた自身の本能である「聞き取る力」を信じるようにと言い続けているのです。まず、自分自身を信頼することが肝心です。そこまで言えば、「組織の目的」が何であるのか、それを見つけるために、あなたは、Uプロセスを知っている良質のコーチやコンサルタントを探し始めるであろうことを信じています。

2つ目の「問い」は、「誰が?」という課題です。誰がその声を聞くかという問題はとても大きな問題です。組織にとって、自らの「存在目的」を受け取ったと知覚できるある特定のタイミングがあります。「存在目的」が認識できたという瞬間を知ることは、それ自体、非常に重要なことです。例えば、「セルフマネジメント」に移行したため、「組織の目的」は従業員の声にしたがって、最大公約数的に決めました、という例もあろうかと思います。それも一つの決め方だと思いますが、それは、本来の「存在目的」とは対極にある考え方と手段です。そこに、「源(ソース)」という考え方が欠落しているからです。

「源(ソース)」については、1.10ビデオの中で、ピーター・カーニックの例としてすでに紹介してあります。それは本当に、執筆後に経験した出会いの中でも特筆に値するものでした。「ソース」とはピーターが言い出したことですが、彼はそれを、世界中の起業家に対して行った何百ものワークショップを通して確信につなげていきました。彼によると、すべての組織には、「ソース」とつながった人がいるということです。その「ソース」の存在は、直感による、より直接的なアクセスを意味します。彼は、そういった役割の人を指して、組織にとって何が正しいことであるかを伝える「情報チャネル」と呼びました。アップル社のスティーブ・ジョブズなどは分かりやすい例だと思います。彼は、明らかに、アップルを未来に導く「ソース」でした。彼がしばらくアップルを離れたとき、組織は迷走しました。その後に彼はアップルに戻り、組織を復活に導きました。

完全に自律分散したセルフマネジメント組織であっても、「ソース」とつながった特定の人物の存在は必要です。そのような組織にも、特殊な「情報チャネル」への優先アクセス権を持った人がいるということです。「セルフマネジメント」に「ソース」は必要ないと思われるかもしれませんが、現実の組織でのあり方は無視すべきではありません。ただし、セルフマネジメント組織では、そのチャネルにアクセスできることと権力を手にすることとは全く別ものであることは忘れないでください。セルフマネジメント組織においては、アドバイスプロセスを通して、組織の意思決定がなされます。そこに階層的な権力は存在しません。特定の個人が決定権を独占することもありません。「ソース」は、いわば、その意味を知る組織にとっては、一つの大きな「資産」とみなされます。そんな彼らは、彼らの「ソース」を本当に大切にしています。そして、常に、「それはソースに対し、明確になっていますか?」や、「そのガイダンスは特定の個人の意見を反映したものではなく、ソースが起源となっていますか?」などと自問自答を繰り返しているのです。

「ソース」について気をつけなければならないことの一つが、それは「ソース」が語りかけているのか、それとも、個人が直感で話しているのかを区別することです。あるいは、特定の発言が、個人のエゴに由来していないか、常にチェックすることです。例えば、経営者が他の組織を買収すべきだと言ったとします。それが、経営者の持つ成長したいという思いから発せられた言葉なら、その言葉は経営者のエゴが発した言葉です。つまり、その言葉が本当に、経営者の深部にある「ソース」に由来したものであるのか判断する必要があるということです。いずれにせよ、「ソース」は組織にとっての純然たる「資産」と言えます。そして、その多くは、すべてのメンバーに力をもたらします。そうでない場合、組織によっては、「ソース」が特定の個人によって、権力と共に独占されている場合があります。そればいま言った組織とは全く極性が異なった組織だといえます。ただし、いずれの場合であっても、その組織にとっての「ソース」は、尊重されるべきものだと思います。

ある組織においては、「ソース」の声を聞くことのできる特別な力を持った人がいる場合があります。別のパターンとして、メンバー全員の声を聞く力を持った人もいます。ですから、最良と言えるのは、それら両方のプロセスを尊重することだと思います。つまり、一つには、特別な声とメンバーの声の集約との間を行ったり来たりする方法があります。あるいは、特別な声を聞き分ける能力を持った人をそのグループの一員としながらも、その人には、声を聞くための特別な時間を持ってもらうという方法もあります。例えば、ジャン・フランソワ・ゾブリストの場合がそれにあたります。オーナーのマックス・ルソーによってCEOに指名されたゾブリストはルソーから引きついだ「存在目的」を組織のメンバーに説明する必要がありました。一方で、Faviでは元々、毎週、金曜日の午後を「組織の目的」に耳を傾ける時間としていました。ジャン・フランソワ・ゾブリストは少なくともグループの一員であり、間違いなく、同時に、「ソース」の声を聞く役割を担っていました。これら2つの方向からの「存在目的」が1つになるためには、各人が、それらの2つの意味をしっかり認識していく必要があります。

前回の6.4のビデオの振り返りをしますが、本気で「組織の目的」を見つけたいという意思がないのなら、(多くの大企業の行いに疑問を感じないのなら)旅に出る必要はありません。準備ができていないのであれば、旅には出ないほうがよいと思います。前回のビデオで触れましたが、多くの組織が掲げているビジョンをそのまま実行すれば、地球は壊滅的な打撃を受けつづけることになります。私はそれに加担できません。耳を貸す気にさえなることはありません。それでも多くの企業は、彼らが提供するすべての製品やサービスと、彼らの既存のビジネスそのものに対して、意味のないミッションステートメントを掲げ続けるでしょう。それらは、ビジネスの「目的」を包含した見栄えの良いもの映るはずです。それらは、どこからの、誰からの声も反映していない、エゴに満ちたフェイクな代物です。

最後にもう一つ、とても大事なことをお話ししたいと思います。Favi社やモーニングスター社のような、私が調査したいくつかのセルフマネジメント組織の「存在目的」は、彼らのビジネスと直結したものではありませんでした。例えば、「存在目的」が一人の脱落者も出さない、というようなケースであっても、実際、現場で行われているのは、車のギアボックスに使う部品の製造であったりします。重要なのは、彼らの「存在目的」がいかにその存在を示せるかは、その組織の中のメンバーそれぞれの関係性と、「セルフマネジメント」がいかに機能しているかにかかっているのです。つまり、組織が生命論的に回っているかどうかということです。私はそのことをとても興味深く思っています。つまり、どこにでもあるような工場などであっても、すべての組織にこのロジックは当てはまると思うからです。多くの組織には、組織によってひどい目に遭わされていると感じて、憤りを抱えた人たちが一定数いるものです。それは、私たちが依然、人的要素を経営資源として活用し、それが枯渇するまで行使し続ける資本主義のパラダイムの中にいることを意味しています。犠牲によって生み出されている製品やサービスを本当に買いたいと思いますか?現在の産業のすべてがフェイクと言っているのではありません。中には真実に基づいて経営している組織も多く存在します。それゆえ、Faviやモーニングスターといった組織の存在は、「組織進化」に多大なる貢献を果たしているのだと言えます。

組織を見る際は、この世に何を輩出しているかという観点のみだけではなく、どこからそれらが生み出されてくるのか、根底にある「存在目的」に注目すべきです。製品やサービスは、人間を機械として扱う経営からではなく、本来は、人間の英知の、その結晶から生まれるべきものだと思います。

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。