【4.2.1】目指すところを明確にする(How far will you go?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/421.html

■翻訳メモ
「セルフマネジメント」への移行を始める際に、「どこに向かって行くか」という到達場所を決めておくことは非常に重要です。その際は、自分のやろうとしていることと、それが実現可能なのかという周りの状況との、それら2つをしっかり把握している必要があります。なぜなら、いったんあなたが「セルフマネジメント」や「ティール」といった、引っ込めることのできない言葉を使って会話を始めると、もう後戻りはできないからです。あなたが始めようとしていることを聞いて、組織のメンバーは騒ぎ出し、マネージャーは自分の仕事が消えてなくなると推測を始めます。その時点で、あなたは、その行為が持つ影響の大きさに気付くことになるでしょう。それに対し、あなたは説明できる「答え」を持っているべきです。それがないと、すべてが難航するのは目に見えています。言葉が与えるイメージは実際に起こることの先を行ってしまうため、時にはそこに経験しなくてもよい「痛み」が生じます。私はそういった例をいくつも見てきました。「セルフマネジメント」という言葉から考えを膨らませて、メンバーは、画一的なものを押し付けられると考える傾向があります。当然、「セルフマネジメント」は型にはめるような、そんなシンプルなものでもありません。あなたが「答え」を持っていないと、「セルフマネジメント」を浸透させるのに、とても長い時間がかかってしまうということです。

ところで、あなたにとって、「セルフマネジメント」とは、どこを目指したものですか?今から、大まかに、3つのカテゴリーに分けて、その場所について整理してみたいと思います。ひょっとしたら、あなたは本当の「セルフマネジメント」を望んでいない可能性さえあるのです。もっと、正確に言うと、あなたが望んでいるのは、「エンパワーメント」なのかもしれないということです。もし、「セルフマネジメント」の理想形はボトムアップだと思っているのだったら、あなたは階層の残存を望んでいるということです。階層があることによってあなたは安心を獲得できるということです。そういう人は、階層のない世界が想像できないはずです。これが、株主や経営メンバーが階層の解消を望まない理由です。少なくとも彼らにとって階層は必要なものだからです。

しかし、階層を維持していても、素晴らしいことができるというのも真実です。ボブ・ヒギンズの本、「発達指向型組織」(DDO = Deliberately Developmental Organization)が参考になります。それによると、そこに出てくるような組織も、最初は階層構造がありました。しかし、それでも素晴らしいことはできるのです。もし、あなたが本当にメンバーの成長を願っているのなら、どんな組織にいても、サーバントリーダーシップを試すことは可能なはずです。

ボブ・チャップマンの本では、階層があってもうまくいった、2つの素晴らしいストーリーが紹介されています。ペリー・ミラーの例として紹介されている、サーバントリーダーシップの発揮方法がまさにそれにあたります。

もう一つ挙げられているのは、どこにでもあるような通常の階層型組織の例です。つまり、組織形態にかかわらず、現場は「セルフマネジメント」で活動しているといった例はよくあります。会社全体は伝統的なピラミッド型の構造でも、工場などの現場は、チームリーダーの存在に関係なく、「セルフマネジメント」が浸透している場合があります。それの進化版と言ってよいと思いますが、アマゾンに買収されたことで有名になったホールフーズ社の場合、私の知り得る限り、各店舗は「セルフマネジメント」で運営されています。つまり、会社全体は伝統的なピラミッド型のマネジメントですが、店舗には、生鮮食品担当や食肉担当などのさまざまなセルフマネジメントチームが存在しています。

ご存じのように、そのような折衷型でなく、完全な「セルフマネジメント」に移行して、権限をもった階層を一切残さないやり方もあります。組織の規模に応じてかかる時間は違ってきますが、大規模な組織では2年かそれ以上はかかるはずです。ですので、最初に、何をしようとしているのか、明確化することは、とても重要です。つまり、あなたが、メンバーに対して、組織の将来像を明らかにし、特に彼らがどう振る舞えばよいのか想像できるようしてあげることは、「セルフマネジメント」に向かう際の義務と言ってもよいでしょう。

進化の余地を残しながら、権限移譲から始めていく方法もあります。そして、経営陣が、ほとんどすべてを手放す準備が整ったと分かった時点で、完全な「セルフマネジメント」へシフトします。しかし、それでも、ゴール地点は明確にしておく必要があります。そして、それには経営陣がどこまでなら許容するかというぎりぎりの線をつかんでおく必要があります。いま、ビデオを一時停止してもらってもよいですか?あなたはどこまで進みたいと思っているのか、そのためには何をメンバーとシェアすればよいか、自分自身に問うてみてください。

別の方法で、変化の意義を追求していく方法があります。つまり、「セルフマネジメント」になったら、何が変わるのか、良いことを挙げていく方法です。逆に、どんな仕事や出来事が嫌かも挙げて、それらをリスト化していきます。例えば、こんな意見が出るかもしれません。「私はアドバイスプロセスを理解しています。そして、そのやり方を信じています。それゆえに、『セルフマネジメント』に進みたいのです」。ほかには、「私は、何よりも貧弱な力でしかないヒエラルキーを取り除きたいと思っています。しかし、それでも、次の4つか5つかの項目に関してはリーダーに拒否権を持っておいてもらいたいと思っています。価格設定にかんすること、新製品にかんすること、外部取締役会の決議がそれにあたります。また、主要なクライアントから見ると、私たちの内部の変化は知らないわけですから、混乱を避けるためにも、外見を維持するというのは必要だと思います」。実は、これらのことを経営陣と握っておくことはとても重要です。一部の権限は残しておいて、それら以外は組織内に分散させるということ。残したものも、いずれは組織に組み込むという具合に、決めておくのです。それが、彼らにとっても、そして、組織のメンバーにとっても、健全に進める工夫なのです。そういう意味では、当初は、伝統的なトップダウンを維持するというやり方も含まれるということです。

もう一度、このビデオを一時停止していただけますでしょうか?今度は自分自身に置き換えて先程の演習をやってみてください。「セルフマネジメント」のいいところ、悪いところを書き出すワークです。これをすれば、あなた専用のリストが完成します。

先程出た「拒否権」について、その考え方を補足したいと思います。テクニカルな言い方をすると、拒否権というのは、同意が前提となった意思決定に対して行使するものです。アドバイスプロセスもその考えが前提になっていることをご存じの方なら、私の言っていることがよく理解できると思います。行使しなかったら、あなたはそれに同意したとみなされるわけです。経営陣がしがみつく、「拒否権」の本質とはそのようなものです。

先程提案したリスト化のエクササイズは、経営陣とのやり取りにおいても効果を発揮します。例えば、あなたが、「セルフマネジメントへ向かう気持ちの準備はすでにできていると聞きましたが、いまの感覚を聞いてもいいですか?」と、経営陣に向かって投げかけた際、彼らの覚悟がよく分かると思います。あなたのやろうとしていることを認めているのか、あるいは、心の底では抵抗しているのか、この質問でつかむことができます。また、この質問をすることで、ここが足りないとか、リスクがあるとか、経営陣なりの考えを聞くよい機会にもなります。それらを知ることで、あなたは、リストに追加することができます。あなたが質問することによって、経営陣の心から恐れを取り除くことができるかもしれません。あなたのそういった振る舞いが、結果的に、彼らの後押しをもたらすかもしれません。

繰り返しになりますが、あなたが、「セルフマネジメント」に向かうと言った時点で、もう後戻りはできなくなるのです。周りの人に質問攻めにあうことも必定です。それゆえ、「どこを目指しているか」については、必ず回答を用意しておいてください。そして、それが明確であればあるほど、プロジェクトにかかわる人たちを迷わせることなく、痛みをも遠ざけることのできる確率が高まるのです。また、あなたにとっては、事実を述べることが必要になってきます。最初から分かっていることは、変に繕わず、最初から明確にしておくということです。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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