【6.1】「存在目的」が本来意味するところ(What evolutionary purpose really means)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/61.html

■翻訳メモ
今回は「存在目的」について話す最初のビデオですので、「存在目的」とは何か、それを明らかにするところから始めたいと思います。というのも、そこに誤解が潜んでいることがすでに分っているからです。多くの人は、「私の組織にはいくつかの『存在目的』がある」と言います。そして、そこには組織の目的が明文化してあるとも言います。しかし、そこで言っている「目的」は、「存在目的」ではありません。「存在目的」とは、単に目的が明確になっている、ということではないのです。「存在目的」を扱うには、まず、組織をひとつの生命体として捉える必要があります。そして、その中にある、「目的」に対して、耳を澄ますのです。



長らく幅を利かせている機械をメタファーにしたオレンジのパラダイムでは、エネルギーを注入しない限り、そして、特定のことを実行するようにプログラムしない限り、組織は活動を始めません。そして、そのオレンジのパラダイムにある今日の経営者たちは、ほぼすべて、リーダーシップの本質は、経営理念を明確に戦略に落とし込むことだと考えているようです。そして、組織全体でもって統一感を出し、全体の方向性が揃っていることを確認して、そして、その理念に基づいて戦略を実行します。これがまさしく、今日の「管理経営」の基礎になっている考え方です。しかし、このティールというまったく新しいパラダイムから組織を見た時、旧来の組織とは、命の躍動のかけらもな感じさせないマシーン以外の何ものでのないことに、私たちは気付くでしょう。私たちはひとつの生命体として組織を見ます。その組織は、自ら、エネルギーを生成し、生態系の中で生命をはぐくんでいる存在です。



それであるとすると、オレンジの経営者たちの考えは根底から覆り、リーダーの役割とは、「将来を予測して制御すること」ではなくなってきます。例えば、部門戦略を決めるといった一つのやり取りにも、「存在目的」がいかにあるか、組織の中で耳を澄ませた方が、むしろ、ずっと簡単に、そして、ずっと謙虚な態度をもって、定まるはずです。流れに従って、組織と共にダンスしながらといった感覚に近いと思います。組織のあり方、そして、組織の活動そのものといった考え方が、従来のものとは根本的に異なります。



多くの人は、「耳を澄ます」といった、これらの言葉に今まで出会ってこなかったせいもあって、最初は少し奇妙に聞こえるかもしれません。その時は、創造的な人々、つまりアーティストをイメージしたらいいと思います。ほとんどすべてのアーティストは、彼らが作る曲や小説は、突然降ってきたもので、彼らの思考の産物ではないと言います。そして、彼らは、その作品を世界に広めるために、自分は選ばれた存在であるとも思っているものです。「存在目的」もそれと同じ考え方です。世界に向かって何かを表現するために、その組織は選ばれたと考えるのです。「存在目的」が組織の中に存在するということは、私たちはそれに従って小説を書き、作詞し、作曲するようなものです。つまり、組織がどうあろうとしているのか、何を表現したがっているのか、私たちは、それに耳を傾け続けるということです。



別の言い方をすれば、私たちは「制御と予測のパラダイム」から、「感覚と呼応のパラダイム」に移るということです。「制御と予測のパラダイム」は近代科学革命の申し子であり、近代から現代にかけて産業界をリードしてきました。世の中の動きを予測して、それをコントロール下に置くことが重要視された世界です。その伝統は機械のパラダイムの伝統です。それは経営理念から始まり、5年または10年の中長期戦略を設定し、次に3年期間の計画に落とし込まれます。計画には年間予算があり、その下にはたくさんのKPIがあります。そして、予算に従って月単位の目標値が定められ、その結果に応じて、従業員はインセンティブを受け取ったり、ボーナスやストックオプションを得ます。これらのすべては計画に同期しています。未来予測に知恵を絞り、次にその未来を実現するための実行計画を作ります。ところが現実は、完璧な計画を立てるには、世界があまりにも複雑になりすぎてしまいました。またそれは、不安定、もしくは、不確実とも表現していいでしょう。体感としてそれがなくても、例えば、2カ月や3か月の計画でも、前提が翻ることはよくあります。すると、目的を達成したと報告するプレッシャーにかられ、自らの組織を欺く行為が常習化します。



ティールのような「感覚と呼応のパラダイム」はそうではありません。まず、そこには明確な「存在目的」があります。そして、その生命体にいるメンバーは常にそれを感じているのです。そこにある「目的」自体が、常にメンバーに「目的」を提供し続けているわけです。生態系の周辺や内部にある変化を感知して、メンバーに向かって、それらに呼応し、適応するよう促しているのです。それの意味するところは非常に深いものです。『ティール組織』の本の中で、「存在目的」が組織の実際の活動にどんな影響を及ぼしているか、私は多くのページを割きました。あなたは、それでもまだ、理念や戦略に基づき予算を立て、目標を設定しますか?そして、採用や人事評価に目標数値を置く意味を感じますか?



「存在目的」に耳を傾けるフェーズ移行するには、組織での実践も進化していく必要があります。それゆえ、今から言うことを理解してもらいたいのです。私が、「存在目的」という言葉を口にする時、それは、単なる高尚な目的の周りに、具体的なものがあると言っているのではないということです。なぜなら、そこに具体性を置いてしまうと、すべてが予測可能と認識されてしまうからです。「目的」は持っていることが重要なのではなく、継続的にそれ聞き続ける行為が重要なのです。その行為を指して、「感覚と呼応のパラダイム」への移行が図られたというのです。このビデオシリーズでは、「存在目的」について本に書いたことすべてを繰り返すことはしません。ですので、「存在目的」の意味するところについて詳しく知りたいと思ったらその章を読んでください。この場は、私の本を読んだ人で、本の情報に振り回されて誤解している人や、すでに組織における「存在目的」に呼応して、それに耳を傾け、そのパラダイムに移行しようとしている人たちとの会話をもとに構成する場にしたいと思っているからです。

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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