レーザーテック【6920】事業の強さと、半導体市況が悪化する中での現状

日経平均に採用されている企業を全て取り上げているこのnote、今回取り上げるのはレーザーテック株式会社です。

事業内容と業績のポイント

それでは早速ですが事業内容から見ていきましょう。

レーザーテックの主力事業は以下の3つです。
①半導体関連装置:
 (1)半導体関連:マスクブランクス、フォトマスクおよびウェハの検査・計測装置
 (2)FPD:FPDフォトマスクの欠陥検査装置
 (3)レーザー顕微鏡
②サービス
③その他の装置
半導体製造に使われるマスク部分の検査装置を展開しており、その技術をソリューションとしても事業展開している企業となっています。
より詳細な事業内容については後で改めて見ていきます。

製品別の売上構成を見ていくと以下の通りです。
①半導体関連装置:85.5%
②その他装置:2.0%
③サービス:12.4%
サービス売上も一定の規模を持っていますが、主力は半導体関連装置となっています。

主力の半導体関連装置の売上構成を見ていくと以下の通りです。
(1)マスク検査:80%
(2)ブランクス検査:15%
(3)ウェハ検査:5%
特にマスク検査装置を主力としている事が分かります。

ではどのような装置を展開しているのか、レーザーテックの事業内容を理解するために、レーザーテックの関連している部分の半導体の製造工程をざっくりと見ていきます。

半導体はその素材であるシリコンウエハー上に、必要な電子回路を描く事で出来上がっていきます。
では、どのように電子回路を描くのかというと、シリコンウエハー上に光に反応する素材をコーティングし、そこにフォトマスクという回路が形成されたものに光を当てて転写させます。

ちなみにフォトマスクは、「マスクサブストレート」というガラス基板を加工して出来た「マスクブランクス」というものに回路を描く事で作られます。

そしてこのマスクブランクスやフォトマスクの検査装置に強みを持っているのがレーザーテックです。

そんな中で特に強みを持っているのがEUVリソグラフィという半導体小型化の手法に使われる、マスク関連の検査装置です。

現在は電子機器の小型化、高性能化が進む中で半導体デバイスも、小型化、高性能化が求められており、EUVリソグラフィという、従来より微細なパターンを形成できる手法を用いた半導体が増加しています。

今後も5GやAIなどの最先端の半導体製造にはこのEUVリソグラフィという手法が不可欠となっていますので、市場の拡大が期待されています。

レーザーテックの検査装置は、その技術力の高さから数ナノメートルという非常に小さな欠陥を検出する事が出来、EUVリソグラフィ関連のマスクの検査装置に強みを持っています。

製品ラインナップを見ても、マスクブランクスの製造工程から半導体デバイスの製造工程まで、マスク検査装置を提供しています。

EUVのマスク検査装置としてはレーザーテックが世界でも唯一の100%のシェアを持っているものもありますし、高シェアを持っている製品が大半です。

EUVを活用した半導体市場拡大と共に、大きな成長が期待されます。

また、企業戦略としてはファブライト戦略というのを取っており、自社では研究開発と設計、試作品の製作のみを行い、生産は外部委託して経営を行っています。

なので有形固定資産は2022年6月期時点では89億円と非常に小規模です、2023年6月期には新拠点取得やクリーンルーム増設などを行った事で増加していますが、それでも284億円ほどにとどまっています。

そういった事もあり2023年6月期の営業利益率は40.8%と非常に利益率の高いビジネスを展開しています。

また、負債を見てみると計1624億円のうち951億円が前受金と大半です。
ファブライト戦略をとっていますので、設備投資も少ないですし、前受金を受けて開発を行っていくモデルとなっていますので、キャッシュフローが良好になり易いです。
ビジネスモデルとしても非常に強いモデルだと分かります。

それでは、続いて近年の業績の推移を見ていきます。

ここ4年ほどの業績の推移を見てみると、売上・利益面ともに拡大しており成長が続いています。
そして特に、2023年6月期は大幅な増収増益を達成しており好調です。

2023年6月期が、好調だった要因は事業の拡大や製品ミックスの良化もありますが円安も影響しています。

グローバルで事業を行っているため円安の好影響があります。2024年6月期の予想では、ドル円が1円の円安で売上が+6億円、営業利益で+5億円となるようです。
円安が続く現状を考えると為替面からの好影響も期待されます。

納品まで一定の期間がかかる事業を展開しているため、受注残高も重要な先行指標になりますが、受注残高も前期比で増加しておりさらなる成長が見込まれます。

とはいえ受注高は前期比では減少しており、受注面は一定の悪化が起きています。

というのも、長期的には成長が期待される半導体市場ですが直近では市況の悪化が起きています。
そういった中で半導体デバイスメーカーでは設備投資に慎重な姿勢を見せており、2024年の前半にかけての回復を見込んでいるとしています。
2024年6月期は市況悪化による悪影響が考えられるという事ですね。

とはいえ、レーザーテックが強みを持っているEUVを利用した小型化の市場では、生成AIの普及による需要の急拡大など好調が期待できる部分もあります。
半導体市場全体の悪化に比べるとその影響は小規模で済むと考えられます。

実際に、半導体前工程製造装置の市場予測を見ても2023年や2024年は、2021年や2022年と比較してみると悪化が見込まれていますがEUV適用の7ナノメートル以下の小型化の市場では、横ばいが見込まれています。
そして3ナノメートル以下の市場では、2023年は2022年比でも成長、2024年は前年比では微減ですが、それ以前と比べると大きな需要を見込んでいます。

一定の悪影響は考えられますが、小型化の需要は底堅いですから半導体企業の中では悪影響は小さく済みそうです。
とはいえ市況の変化による影響が、どの程度出てくるのかには注目です。

という事でレーザーテックは半導体のマスク関連の検査装置に強みを持った企業です。

特に強みを持っているのがEUVという小型化の技法でのマスク検査装置となっており、電子機器の小型化が進む中で半導体も小型化や精密化の需要拡大が期待される中で大きな成長が期待されます。

ファブライト戦略をとっており、固定資産が少なく、前受け金を受け取って開発を行うモデルでもあるため強いビジネスモデルで事業を展開しています。

業績も成長が続いていますが、直近では半導体市場悪化の影響は一定程度受けています。
それでも小型化の需要は底堅いですし、受注残高も増加していますので半導体企業の中では市況悪化の影響は少なく、一定の成長は期待できると考えられます。

直近の業績

それでは続いて直近の業績を見ていきましょう。
今回見ていくのは2024年6月期の2Qまでの業績です。

売上高:949.9億円(+72.4%)
営業利益:317.5億円(+75.2%)
経常利益:313.0億円(+72.9%)
純利益:222.0億円(+63.4%)
大幅な増収増益で成長が続いています。

とはいえ2Q単体の業績を見ていくと、売上は1Q比で+0.8%と成長の鈍化がみられます。

製品別の売上を見てみると、2Qの半導体関連装置の売上は1Q比で減少しています。
サービス売上が伸びた事で、全体の売上は若干ですが前四半期比で増加したという状況です。

さらに、受注高や受注残高に関しても20204年6月期に入って以降は減少傾向が続いています。

半導体業界ではサプライチェーンの在庫調整局面が続いており、半導体デバイスメーカーの多くでは慎重な投資姿勢を継続しているとしています。

EUVリソグラフィ関連の投資も一定水準にとどまったとしており、レーザーテックとしても市場環境悪化の影響が一定程度あったようです。

半導体製造装置の市場は2024年中の回復を見込むとしており、2024年は市場拡大が見込まれていますので、市況改善がいつになるのかに注目です。

また、改めて2Qの業績を見ていくと売上は+0.8%にとどまった一方で、製品ミックスの良化によって営業利益は1Q比で+108.9%と大幅増益となっています。

1QはACTISという製品の、低収益の初期ロット分の売上を計上した事が影響して利益率が低下していました。

その低収益の初期ロット分の売り上げ計上は1Qで完了したとしていますので、3Q以降も高利益率が継続する事が期待されますので、利益面の好調は続きそうです。

また、通期予想は想定為替レートを125円→135円へ見直したことで上方修正を行っています。
それでもまだ135円と、保守的な水準ではありますので為替面からのさらなる上方修正は十分に考えられそうです。

という事でレーザーテックでは大幅な増収増益が続き、成長が続いています。
ですが、軟調な半導体市場の影響を受けて2Q単体では1Q比では伸び悩み、受注高や受注残高も減少傾向にあります。
2024年中の半導体市場の回復を見込んでいるとしていますので、それがいつになるかが注目です。

また、利益面は1QはACTISという製品の、低収益の初期ロット分があったために利益率を落としていましたが、それが無くなった事で利益率は増加していますから、今後も利益面は堅調な状況が続きそうです。

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