タイミー【215A】7月26日IPO予定のスキマバイト企業の現状と今後

早速ですが今回は7月26日に上場予定となっている株式会社タイミーを取り上げていこうと思います。

まずは事業内容から見ていきましょう。

主力サービスは「働きたい時間」と「働いて欲しい時間」をマッチングするスキマバイトサービスであるTimeeです。

近年は労働力不足が顕著となっており、人手確保のソリューションも多様化しています。

従来のソリューションは選考やシフトがある雇用者が中心のものでしたが、選考やシフトのないスポットワークの需要が増しており労働者中心のソリューションサービスの重要性も増しています。

そんな中でTimeeは労働者向けのソリューションとして、面接や履歴書、シフトもなく、好きな時間に、働ける場所と働ける人をマッチングするサービスとなっています。

ビジネスモデルは労働で発生した報酬からの手数料となっており、現状の手数料率は流通総額の約30%となっています。

Timeeを通じて発生している労働の量と、手数料率に業績が左右されるという事です。

そしてTimeeは登録ワーカー数が770万人、登録クライアント事業所数は25.4万と非常に大規模なサービスとなっており、スキマバイトの市場ではトップの企業です。

人手不足が顕著になる中で近年拡大してきたサービスであり、今後も生産年齢の減少や働く事への価値観の変化が進む中で、さらなる市場拡大が期待されます。

また、クライアント側ではスキマバイトを上手く活用する事で繁忙期に合わせた雇用をしなくてよくなるというメリットもあります。
日本では雇用の調整が難しいので、繁忙期や時間に対応できるように平時では人員を多めに確保する事になりますが、繁忙期にスキマバイトを活用し人員を確保する事でその調整が出来るという事です。

インフレとそれに伴う賃金上昇が続き、店舗運営の効率化をどう進めるのかというのも大きな課題となってきていますので、そういった需要からの拡大も期待されます。

続いてワーカーの属性を見てみると以下の通りです。
①正社員:21%
②パート・アルバイト・契約/派遣社員:33%
③学生:16%
④自営業・フリーランス:10%
⑤その他:20%

パート・アルバイト、契約/派遣社員の方が最も多いですが、それだけでなく正社員の方も多く利用しています。
人口を考えると学生より正社員の方の方が圧倒的に多いという事はありますが、それでも学生より正社員の比率が高いというのは意外です。

社会人に副業としての用途でも多く活用されているサービスだと分かります。

世代別の構成を見てみると以下の通りです。
①20代:28%
②30代:20%
③40代:23%
④50代:19%
⑤10代:5%
⑥その他:5%

やはり金銭的にも余裕が少ない20代が最も大きな規模を持っていますが、かなり分散した構成です。
そして以外なのは20代に次いで規模が大きいのが40代で50代も30代とほぼ同程度の規模を持っている点です。

いわゆる就職氷河期世代の層であったり、ある程度子どもが大きくなり時間よりも金銭の負担がかかるようになってきた世代の活用なども多いと考えられます。

世代や雇用形態を見ても、多様な属性の人に活用されている事が分かりますね。
これまでのアルバイトであれば、フリーターの方や学生がメインでしたが、副業として働きやすくなったことで利用層の拡大に繋がっており、新たな労働需要の創出にもつながっていると考えられます。

既存市場とのシェアの奪い合いだけではない、拡大が期待できるという事ですし、人手不足に対する1つの解決策になるサービスだという事です。

人手不足の深刻化が見込まれている事や、新たな需要の創出が出来ている点を考えても、スキマバイトの市場はさらなる成長が期待されます。

続いてクライアントの属性を見ていくと以下の通りです。

①物流(単純・簡易作業):44%
②飲食:26%
③小売:21%
④フードデリバリー:3%
⑤イベント・キャンペーン:2%
⑥オフィスワーク:1%
⑦その他:2%

物流(単純・簡易作業)が44%で約半分を占めています。
技能が無くても取り組めるような作業で、人手不足も顕著な分野ですから、スキマバイトのサービスと相性がいいという事ですね。

それに続くのが飲食、小売で、物流(単純・簡易作業)含めこの3つで9割以上を占めています。

飲食や小売ではある程度の経験は必要ですから、経験者のみの採用となっている店舗などもあり物流に比べると小規模だと考えられますが、経験があれば他店舗でも出来る仕事もありますから、活用されやすいという事でしょう。

現状はクライアントの大半が飲食、小売、物流(単純・簡易作業)となっています、雇用を前提としないので、教育が必要な技術や経験が必要な分野では活用が進みにくいという側面があります。

今後の拡大にはクライアントの分野の拡大も重要だと考えられますし、タイミーとしても分野の拡大を進めていくとしています。
多様な技能を持ったワーカーが増えてくれば、経験者を活用した拡大が期待されますから、分野の拡大が進むかには注目です。

また、営業拠点を増やし展開地域の拡大も進めていこうとしています。
地方の方が人手不足は顕著ですから、拡大余地は大きいと考えられます。地方部でも拡大が進むかには注目です。

さて、事業についてざっくりと把握できたところでそれでは、続いて2019年3月期からの業績の推移を見ていきましょう。

まず、売上高の推移を見てみると大きな拡大が続いており、2021年10月期以降では13億円→62億円→161億円と急拡大をみせています。
さらに2024年10月期は2Q段階での売上は124億円となっており、単純に倍にすれば248億円ですから大きな拡大が続いている事が分かります。

また、利益面は2021年10月期までは赤字が続いていましたが2022年10月期に黒字化して以降は増益が続いており、2023年10月期は経常利益は19億円、2024年10月期の2Q段階で、経常利益は16億円となっており利益面の大きな拡大も続いています。

コロナ禍を経て人手不足やインフレが進む中で、ここ2年ほどは特に急拡大を見せた事が分かります。

この急拡大を支えているのは、スキマバイトというのが世間に浸透してきたという事もありますが、ネットワーク効果が働きやすいサービスだという事も影響しています。

サービスが拡大すれば、それだけ場としての価値が高まり働き手も雇い手も増えやすくなるという事です。
現実世界で考えれば東京のような都会になっていくみたいな事です、人が集まれば集まるほど仕事を求める人も集まりますし、働き手を求める会社も集まってきて場としての価値が高まっていくという事です。
なので、サービスの拡大がさらにサービスの拡大を呼び込むという好循環に繋がるというわけです。


さらに、事業としてはストック性が高く2024年10月期の2Q時点では新規顧客からの流通総額が9%で、それ以前のリピート顧客が91%となっています。

こういったマッチングサイトは相互評価によって成り立っていますので、働き手も雇い手もサービスを利用すればするほど、評価がたまり次の仕事に繋がりやすくなります。

なのでストック性が高いという事です。
そういった点を考えると、現状スキマバイトのサービスとしてはトップの企業であるタイミーは最もネットワーク効果による拡大が期待され競合と比べても大きな強みとなります。

とはいえ、競合環境の悪化という懸念はあります。
最近ではメルカリがスキマバイトの市場に参入しましたし、リクルートなども参入を予定しています。
メルカリは働き手の確保、リクルートは雇い手側の確保に関して大きな強みを持っている事は想像できると思います。

そして資金力もありますから、手数料率を下げての拡大戦略をとってくる可能性もあります。

競合環境が悪化によって手数料競争が進まないかは注意が必要です。

また粗利率を見ていくと、96%と非常に高いです。
事業自体はマッチングサイトなので原価はかかりにくいサービスです。

一方で販管費率が82%となっており、結果として営業利益率が14%ほどとなっています。

そして販管費の7割以上が給与と広告費です。
このコスト次第で利益に影響が出るという事ですね。

ネットワーク効果が働くサービスでもありますので、今後拡大が十分に進めば広告費の抑制が可能になります。
そうなれば利益率の上昇が期待できるという事です。

とはいえ、短期的には大手の参入が増える中で、広告費を積極的に投下してくる可能性もあり、それがタイミーの広告費増加に繋がる事が考えられます。

競合環境の悪化は手数料率の低下と、広告費の増加に繋がる可能性があり注意が必要だという事ですね。

また、人件費も規模が大きいですが人員構成を見ると半数以上が営業となっています。

営業拠点も増やし新たな地域への拡大を進めていますから、人件費の増加は続きそうです。
さらに、地方部でもリクルートは多くの店舗と接点を持っておりスキマバイト参入後の強みとなりそうですから、その競争のためにもこれからしばらくは積極的な人員増加を進める可能性があります。
人件費増加を補えるだけの事業の拡大が進むかには注目です。

さて、ここまで見てきて今後の業績を考える上では競合環境悪化がどれだけ起きるのかが重要だと分かります。

そして、競合環境に関しては個人的にはそこまでの大きな悪化は起きにくいと考えています。

その理由は財務面を見てみると分かります。

まず、資産の状況を見てみると現預金が114億円と創業から数年の企業ながらかなりの現預金を持っています。

それがなぜかというと、借入が多額だからです。
短期借入金は115億円となっています。

なぜこれだけ多額の借り入れをして現預金を持っているのかというと、立替金が大きくなりやすい事業だからです。
実際にタイミーの資産を見てみると、立替金が82億円ほどあります。

スキマバイトは即時支払いのサービスですから、クライアント側(雇い手)からの入金より先に、働き手への支払い(立替金)が必要になります。

なので、近年は大きく黒字化する中でも立替金の増加によって営業キャッシュフロー(本業で稼いだお金)はマイナスが続いています。
サービスが拡大すればするほど、立替金の額が大きくなっていき支払いが増えていくキャッシュフローが悪いビジネスモデルだという事です。

基本的にビジネスとしては、入金が先で支払いが後の方がキャッシュフローが良化しやすいですから強いです。

なのでこの点はビジネスモデル的な弱さとも言えますが、その一方で一定の参入障壁となります。

メルカリやリクルートのような資金力のある企業にとっては問題ありませんが、小規模事業者は参入が難しいという事です。

そして、労働分野のサービスは独占市場とはなりにくいです。
こういったマッチングプラットフォームはいわゆる、ウィナー・テイクス・オール(メルカリのような1強で市場総どり)となる分野もありますが、労働関連のサービスは働き手側も雇い手側も生活に直結しますから、多少の手間でも複数サービスを活用しやすく1強状態とはなりにくいです。

なので、そもそも小規模事業者が参入しずらいので参入企業が増えにくい事や、寡占しずらい労働関連の市場かつキャッシュフローが悪いビジネスモデルの事業に、大手も採算度外視の拡大戦略を取る事はあまり考えられないのではないかと思います。

そういった点を考えてみると、リクルートが参入初期に大きなコストをかけてくる事で、一定の手数料競争や広告費の増加に繋がる可能性は考えられますが、中期的にはそれも落ち着いていき過渡競争にはならないのではないかと考えています。

とはいえ、短期的には分かりませんから、まずはリクルートがどの程度力を入れて市場に参入してくるかは注目です。

ちなみに、このビジネスモデル的な弱さは、マイナスの影響もあります。

それは事業領域の拡大に時間がかかるという事です。

例えば近年最も拡大した新興企業は日本ではメルカリかと思いますが、メルカリは失敗し撤退したサービス含め複数のサービスをハイペースで展開してきました。

それにはタイミーとは逆でキャッシュフローが良化しやすいという事業上の特性が関係しています。
買い手からの入金後に売り手への支払いになりますし、その売上金がメルカリ内に残るケースも多く、メルカリは業績以上にキャッシュフローが良化しやすいサービスです。

なので資金的な余力が大きいので積極的な領域拡大が出来たわけです。
それこそメルカリがメルペイを展開したように、タイミーも金融関連のサービスとは相性がいいと思いますが財務的な面を考えるとそういった、大きな資金を必要とするような領域拡大は進みにくいと考えられます。

今回の上場で大きな資金の獲得できますから、それによる一定の領域拡大が進む事も考えられますが、既存事業拡大の中で一定の資金を確保しておく必要がある状況は続くでしょうから、事業領域の大きな変化は起きにくいと考えられます。

まずはしっかりと既存事業の拡大が続くか、競合環境がどうなるかに注目です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?