オリエンタルランド【4661】コロナ禍での変化で過去最高益となるほど好調になっている話

日経平均に採用されている銘柄を全て取り上げているこのnote、今回取り上げるのは株式会社オリエンタルランドです。

もちろんディズニーランドやシーなどテーマパークの運営を行っている企業で、コロナ以前は日本の遊園地レジャーランド市場において、50%弱のシェアで推移し続けており、テーマパークの中では日本最大の企業です。

事業内容と業績のポイント

それではまずは事業内容から見ていきましょう。

オリエンタルランドの事業セグメントは以下の3つです。
①テーマパーク事業:ディズニーランド・シーの運営
②ホテル事業:ディズニーホテル7つの運営
③その他事業:商業施設「イクスピアリ」の運営や、ディズニーリゾート内のモノレールの運営など

テーマパークを起点として、ホテルやその周辺施設の運営も行っています。

2023年3月期の事業セグメント別の売上と(営業利益)の構成は以下の通りです。
①テーマパーク事業:82% (84%)
②ホテル事業:15% (15%)
③その他事業:3% (0%)

売上・利益ともにテーマパークが主力の事業となっています。
ホテル事業も一定の規模を持っているものの、オリエンタルランドのホテルはテーマパークに隣接しており、宿泊者はテーマパークへの来園者である事が大半です。
その点から考えても、テーマパークの動向に業績が左右される企業となっています。

続いて顧客層について少し見ていきましょう。

まず男女比を見ていくと、女性が7割超で推移しています。
コロナ禍では8割弱まで増加しており女性の集客が重要です。

また、年齢層としては18~39歳が5割前後で推移しており、若い世代が中心となっています。

地域別では関東からが6割超となっており、やはり近隣からの集客がメインとなっています。

また、インバウンドもコロナ以前は10%弱で推移しており、一定の規模を持っていますから、インバウンドも業績に影響を与える企業です。

主要顧客としては①女性②18~39歳の大人③関東地方だという事で、この層の動向は業績に影響を与えやすいという事ですね。

それでは、続いて近年の業績の推移を見ていきましょう。

まず売上高の推移を見てくと、やはりコロナ禍では大きく業績を落としており、入場制限などもあった2021年3月期にはコロナ以前の1/3ほどまで落ち込んでいます。

ですが、2023年3月期には大きな回復をみせ、コロナ以前の水準には及ばないものの、2019年3月期比で8%減という水準まで回復してきています。

利益面でも2021年3月期には大きな赤字となっていますが、そこからは回復を見せています。
純利益だと2023年3月期には、2019年3月期比で10%減という水準です。

2023年3月期時点では、コロナ以前の水準には及んでいないものの、大きな回復を見せ始めていたという事ですね。

業績がコロナ以前に及んでいない大きな要因は、来園者数の減少です。2023年3月期は2020年3月期比で約3割減の2200万人ほどにとどまっています。

コロナ禍、そして入場制限もあり、十分な集客が出来ない中で業績はコロナ以前には及んでいなかったという事です。

とはいえ、入場者数が3割ほど減少した一方で、売上は8%減にとどまっており、利益面も10%減にとどまっていました。
入場者数の減少のわりに業績の悪化が小さいことが分かります。

ではそれはどうしてなのかというと、その要因は客単価の上昇です。

客単価を見ていくと、2019年度が1万1606円に対して、2022年度が1万5748円と大幅な増加をみせています。
2023年3月期は、客単価の増加によって来園者1人あたりの収益性が高まっていたという事です。

客単価増加の大きな要因は、チケット収入/アトラクション・ショーの増加です。
ダイナミックプライシングの導入やプレミアムアクセスの導入が話題となった事は記憶に新しいと思います。

また、その他にも商品販売収入や飲食販売収入も増加しています。
これまでは、パークの混雑や待ち時間から、十分に買い物や食事の時間を取れていなかったのが、コロナ禍での入場制限の中で、その時間が増え客単価が増加していたという事ですね。

そして現在も「快適なパーク環境を提供出来る入園者数の水準を検証しながら顧客体験向上を図る」としており、入園者数の上限を見極めながら新型コロナ以前の水準に戻さない計画を立てています。

コロナ以前は入園者数の増加によって成長してきていた、オリエンタルランドですが、コロナ禍を通じて体験価値の向上、それに伴う客単価向上による収益性の向上を進める方向へ転換した事が分かります。

コロナ禍で強制的に人数制限がされたことで、入場者数ごとの顧客の行動データや満足度など多くのデータが取れたと考えられます。
これまで取れる事の中でデータが取れた事で、戦略の転換があったという事でしょう。

現在もまだまだ検証を続けているようですし、今後もこういったデータを活用できるのはオリエンタルランドの武器となりそうです。

コロナ禍を通じて、事業上の変化が大きい企業なんですね。

また、入場者数の上限を制限する中で重要な取り組みとなるのが集客の平準化です。

日本中の観光地はどこもそうですが、連休など休みに合わせて集客が偏ります。
なのでオリエンタルランドでも平日では入場制限の上限に達しない日が多く、集客の平準化が進めば一日当たりの上限を下げたとしても入場者数の増加が期待できます。

そういった意味合いでも、大きく進んだのがダイナミックプライシングの導入です。
直近でも2023年10月1日からは、従来よりさらに高価格帯のチケットを導入しています。

夏休み期間などは平日への来園日変更が見られたとしていますので、ダイナミックプライシング導入による集客の平準化は一定の成果を見せ始めているようです。

また、平日の集客が見込めるインバウンドは平準化にも貢献すると考えられます。
現在も大きく増加している、インバウンドの好影響は大きいと考えられますので、インバウンドの動向にも注目です。

とはいえ、多くの人が周りと同じ日にしか休みが取りづらい日本の現状を考えると、集客の平準化はまだまだ時間はかかりそうですし、ダイナミックプライシングは、多くの顧客にとって実質値上げになります。

日本自体が値上げによるイメージ悪化が起きやすい国でもありますので、ダイナミックプライシングによる収益の最大化と企業イメージのバランスを取ったかじ取りには難しさもありそうです。

プライシングの取り組みがどのような結果を見せていくのかに注目です。

また、コロナ禍で大きく進んだことの1つに効率化もあります。DXが進み、省力化やIT活用も進んでいるとしています。

こういった取り組みは今後も好影響が続きますから、効率化による収益性の改善も期待で切るという事ですね。

コロナ禍で大きな業績悪化となったオリエンタルランドですが、これまでの状況では取れるはずのなかったデータが取れ、様々な検証が進められました。
来園者数重視の戦略から、客単価重視の戦略へのの転換など、大きな取り組みの変化も見えていますし、効率化も進んでいます。

となると、長期的にはコロナの影響は悪いものだけではなかったという事ですね。

とはいえ、財務面は傷ついており、例えば社債は、2020年3月期→2023年3月期では、800億円→2300億円まで増加しています。
もちろん業績悪化が何の影響もなかったという訳ではないという事です。

という事でオリエンタルランドは、ディズニーランドやシーなど、テーマパーク事業を主力とした企業です。
ホテル事業も一定の規模がありますが、テーマパークの利用者が宿泊するケースが多いですから、テーマパークの状況が業績に大きな影響を与えます。

業績はコロナ禍から回復傾向にありますが、2023年3月期時点ではコロナ以前の水準には及んでいません。
その要因は来園者数の減少です、ですが来園者数の減少に比べて業績の悪化は小さく済んでいます。

というのも、コロナ禍を通じてオリエンタルランドは、来園者重視の戦略から体験価値重視、客単価重視の方向に戦略を転換しています。

また、コロナ下で効率化も進みましたから、客単価の上昇、収益性の向上を通じて業績が伸びていくかが注目です。

直近の業績

それでは続いて直近の業績を見ていきましょう。
今回見ていくのは2024年3月期の2Qまでの業績です。

売上高:2843.3億円(39.3%増)
営業利益:770.7億円(102.9%増)
経常利益:777.4億円(101.5%増)
純利益:545.5億円(106.2%増)
大幅な増収増益で非常に好調となっています。

セグメント別の業績を見ると、全事業とも増収増益で好調となっており、主に入園者数の増加によって好業績になったとしています。
さらに40周年イベントという特殊要因も影響が大きかったようです。

また、1人当たり売上高に関しても5.6%増の1万6566円となっており、単価上昇の取り組みも進展を見せている事が分かります。

ちなみに2019年3月期2Qの業績と比べてみると以下の通りです。
売上高:13.4%増
営業利益:24.5%増
純利益:25.8%増
コロナ以前と比べてみても大幅な増収増益となっており、非常に好調だった事が分かります。

続いて、入園者数を2019年3月期の上期と比較してみると19.4%減の1250万人となっています。

以前から進めていた高単価化の取り組みが成果を見せて、入園者数がコロナ以前の水準を下回る中でも好業績を達成していたんですね。

体験価値上昇による高単価化、高収益化の取り組みが非常にうまくいっている事が分かります。

また、入園者数では海外ゲストも大きく増加しています。
海外ゲスト比率は前年同期0.2%だったのが、13%まで増加しています。
コロナ以前が10%弱で推移していたのも上回る水準です。

とはいえ、下期は例年海外ゲストが減少する傾向であることから、通期の海外ゲスト比率は9%と、コロナ以前より若干下回る水準を見込んでいます。

先ほども見たように集客の平準化や客単価を考えても、平日の来客が期待できる海外ゲストの増加は重要になりますから、インバウンドの回復も業績の改善に貢献していた事が分かりますね。

また、2023年10月には、インバウンドが初めてコロナ以前を上回ったとのニュースもありました。
インバウンドが想定以上に推移する可能性も十分にありますので、注目です。

そういった状況の中で、上期は予想を超える業績だったことに加え下期の売上の増加も見込み、上方修正を行っています。
そして、これは過去最高益です。

さらに、2024年度の中期経営計画の目標も更新しています。
営業利益で従来を600億円上回る1600億円、連結営業キャッシュフローでも過去最高の1285億円を大きく上回る1800億円を目標としています。
営業利益、連結営業キャッシュフローともに、過去最高を大きく上回る水準だという事です。

かなりの好業績が見込める状況になったという事ですね。

一方で入園者数の目標としては、2023年度が2630万人、2024年度が2850万人としており、2019年3月期の3255万人からは減少した水準が続く見通しです。

ゲスト1人当たりの売上は増加が続き1万7000円を目標としていますので、客単価増加の取り組みによって大きな成長が続く見通しとなっています。

コロナ禍を通じての、客単価重視の戦略への変化が企業に好影響を与えている事が分かります。想定通り客単価上昇による収益性の改善が進むかに注目です。

戦略の変化で過去最高業績も見込める状況で、コロナ禍が与えた影響はむしろポジティブに働いていると考えてもよさそうですね。

という事でオリエンタルランドは、直近では大幅な増収増益で好調ですし、上方修正を行っており過去最高の業績を更新する見通しを立ています。

来園者数はコロナ以前を下回る見通しなものの、客単価の上昇による好業績を見込んでおり、コロナ禍での戦略転換が非常にうまくいっています。

客単価上昇の取り組みがしっかり進んでいくかに注目です。


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