ミネベアミツミ【6479】グローバルニッチで拡大を続けている精密部品メーカーの現状と業績改善が期待できる理由
日経平均に採用されている銘柄を全て取り上げているこのnote、今回取り上げるのはミネベアミツミ株式会社です。
精密部品を取り扱う企業です。
事業内容と業績のポイント
それでは早速事業内容から見ていきましょう。
ミネベアミツミの事業セグメントは以下の4つです。
①PT(プレシジョンテクノロジーズ):ベアリング、ファスナーなど
主な用途:自動車、データセンター、航空機、高級家電、ロボット、ドローン、医療機器など
②MLS(モーター・ライティング&センシング):モーターや、LEDバックライト、センシングデバイスなど
主な用途:自動車、ゲーム機器、高級家電、スマートフォン、ウェアラブル機器、医療機器など
③SE(セミコンダクタ&エレクトロニクス):アナログ半導体、光デバイス、精密部品、電源など
主な用途:スマートフォン、ゲーム機器、高級家電、ウェアラブル機器、医療機器など
④AS(アクセスソリューションズ):自動車部品(ドアラッチ、ドアハンドル、ドアミラー等)、無線デバイス、産業機械部品など
主な用途:自動車、農業機器、建設機械
聞きなれない製品も多いかもしれませんが、多様な精密部品を提供しており、自動車や航空機、電子機器などの用途に使われています。
それぞれの事業ごとの売上構成と(利益額)は以下の通りです。
①PT事業:15.3% (454億円)
②MLS事業:28.4% (120億円)
③SE事業:41.2% (370億円)
④AS事業:15.1% (100億円)
売上・利益ともに大きな規模を持つのがアナログ半導体や光デバイスなどを取り扱うSE事業で、利益面が最大なのはベアリングなどを取り扱うPT事業となっています。
PT事業はボールベアリングが主力製品です、ボールベアリングは運動エネルギーを効率よく伝えるための部品で機械の省エネ化や長寿命化に役立ちます。
なので自動車や、ロボットなどの機械やさらにデータセンターなどにも多く利用される部品です。
こういった製品の需要に業績は左右されやすいという事ですね。
今後に関しても、機械の高性能高品質化が進む事や、自動車も電動化、高機能化などが進む事での需要拡大、さらに航空機の移動需要拡大による需要拡大も見込んでいます。
市場拡大による成長が期待できる事業だという事ですね。
また、SE事業で取り扱われる、アナログ半導体は光や音などの数値化されていないアナログ信号を、デジタルで処理できるように数値化されたデジタル信号に変換するための半導体です。
そして、光デバイスとは例えばレンズなどの光を利用して情報の処理や伝達を行う製品です。
SE事業の製品は、外部のアナログ情報を取り込む必要がある電子機器に多く利用される事が分かると思います。
電子機器の市場の影響も受けやすい企業だという事ですね。
そしてこの事業では、とくにアナログ半導体をベアリングに次ぐ2番目の事業として拡大を進めていこうとしています。
アナログ半導体も電子機器の需要拡大の中で、市場拡大が期待されますし、他にもモーター関連を取り扱うMLS事業や、自動車部品を取り扱うAS事業も電気自動車化の中で市場拡大が期待されています。
多くの事業で市場の拡大が期待できる製品を有しているという事ですね。それに伴いミネベアミツミも成長が期待されます。
ざっくりと事業内容が分かったところで、続いて業績の推移を見ていきましょう。
2009年3月期~2023年3月期までの業績の推移を見ていくと、大きな成長を見せており10期連続で過去最高を更新するなど拡大が続いています。
利益面は増減ありつつの推移となっていますが、2009年3月期~2024年3月期まででは売上・営業利益ともに年間平均成長率は12%となっており大きな成長を続けている企業です。
そして、この成長を支えている要因に積極的なM&Aがあります。
①既存ビジネスの強化and/or相合(保有するコア技術と先端技術をかけあわせる)が期待できるもの
②適正価格の徹底(割高なものは買わない)
という大原則のもと15年間で27件のM&Aを行い、2024年3月期時点では統合済みの25社で売上は6100億円、営業利益は490億円ほどになっています。
2024年3月期時点の売上が1兆1241億円、営業利益が921億円ほどでしたから売上利益ともに半分ほどが、M&Aによるものだと分かります。
とはいえ、M&A以外のオーガニック成長も続いています。
ミネベアミツミのオーガニック成長戦略は
「コア事業の強化」×「多角化でニッチ」×「相合してシナジー創出」
となっており、M&A活用も前提としてニッチ市場で拡大を進めてきました。
M&Aを活用しつつ、ニッチ市場で大きなシェアを取ることで圧倒的な競争力を確保し、既存事業も拡大を進めてきたという事ですね。
こういったグローバルニッチ戦略をとる中で、多数の世界トップシェア製品を持っており、売上高に占める世界トップシェア製品の割合は50%となっています。
M&Aを活用したグローバルニッチ戦略で大きな成長を見せてきた事が分かります。
そして今後に関しても、2029年3月期までにオーガニック成長で+8000億円、M&Aで+3500億円~6500億円の売上積み増しを目指しており、積極的な姿勢を見せています。
今後もどういったM&Aを行うのか、そのシナジーで拡大を見せられるのかは注目です。
ちなみにミネベアミツミは八本槍戦略というのを掲げています。
①ベアリング
②モーター
③アナログ半導体
④アクセス製品
⑤センサー
⑥コネクタ/スイッチ
⑦電源
⑧無線/通信/ソフトウェア
これらの製品を八本槍として特に注力していくとしていますので、M&A含め今後の展開に注目です。
直近の業績
それでは続いて直近の業績を見ていきましょう。
今回取り上げるのは2024年3月期の通期の業績です。
売上高:1兆4021億円(+8.5%)
営業利益:735億円(▲24.6%)
純利益:540億円(▲26.1%)
増収ながらも大幅減益と収益性が低下しています。
売上は拡大が続いていますが、利益面は成長が続いている状況ではなくなっています。
セグメント別の営業利益の前期比は以下の通りです。
①PT事業:▲49億円
②MLS事業:+110億円
③SE事業:▲62億円
④AS事業:▲88億円
MLS事業は好調でしたが、それ以外の事業が悪化してしまっています。
それぞれの事業の状況をもう少し詳しく見ていきましょう。
まず主力のボールベアリングなどを取り扱うPT事業では、航空関連の需要増加があったものの、データセンター向けの需要が伸び悩んだ影響で減益になったとしています。
データセンターへの投資が鈍化していますから、その影響を受けたという事ですね。
とはいえ、AIや自動運転の発展などデータ生成量は拡大が見込まれています。そういった中で長期的にはデータセンターの需要拡大が期待されますし、ミネベアミツミも積極投資の姿勢は崩していません。
いまだ、需要の本格回復には至っていないとしていますが、市場を見てももデータセンターへの投資は一定の回復傾向にありますし、四半期ごとの業績の推移に関しても回復傾向が続いています。
2025年3月期以降の業績改善は期待できそうです。
また、MLS事業では車載向けモーターの需要が伸びた事で好調だったとしています。
2023年3月期あたりまでは、半導体不足で自動車生産が不振でしたがそれも無くなり生産が回復しています。
電気自動車の販売停滞や、中国市場の景気低迷など不確実性もある状況ですが、電気自動車化は進んでいますし今後も堅調な業績が期待されます。
SE事業は、スイッチやコネクタなどの機構部品や、カメラ用の光デバイスが落ち込んだ事で業績が悪化したとしています。
消費低迷など電子機器の需要低迷を受けて業績悪化となっている事が考えられます。
今後も一定の悪影響が続く事が想定されます。
とはいえ半導体では、パワー半導体を取り扱う日立パワーデバイスを2024年5月2日に買収完了しています。
買収による拡大が期待される状況におり、一定の業績改善が期待されます。
そして自動車部品を取り扱うAS事業は、前期に買収による負ののれん発生益という一時要因で業績が良化していた反動で業績悪化となりました。
なので、自動車生産が回復する中で事業自体は堅調な状況だったとしています。
この事業でも中国市場の低迷などは考えられますが、事業自体は堅調な状況で今後もその継続が期待されます。
事業全体を見てみると、PE事業ではデータセンター投資の需要回復が期待でき、MLS事業やAS事業では中国市況悪化などの懸念点はあるものの、自動車生産が回復する中で一定の堅調な状況が期待され、SE事業では消費低迷による電子機器需要の低迷など悪影響の継続は想定されるものの、日立パワーデバイス買収による業績改善が期待されるなど、改善を見込む事業が多いです。
さらに、賃金上昇が進む中で労務費削減による、収益性改善の取り組みも進めており2024年3月期では6000名分の工程自動化や省人化、2025年3月期でも5000名分の工程自動化や省人化を進めていくとしています。
コスト面の改善も含め2025年3月期は業績改善が期待できる事が分かります。
そんな中で実際に通期予想を見ても、売上は+7.0%で営業利益は+36.0%、純利益は+31.4%と増収増益で、売上や営業利益では過去最高を更新する事を見込んでいます。
セグメント別では以下の通り、全事業の増益を見込みます。
①PT事業:+110億円
②MLS事業:+101億円
③SE事業:+26億円
④AS事業:+64億円
自動車や関連は中国市況の悪化など一定の懸念材料もありますから、想定通りの進捗となるかは注目です。
また、M&Aに関して上乗せした中計の見直しも行っています、2024年3月期は業績は悪化しましたが、さらに投資に積極的な姿勢を見せており、今後もM&Aを活用した業績の拡大も期待されます。
一定の懸念材料はあるもののM&Aによる拡大が想定されますから、今後の業績は堅調なものが期待できそうです。
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