アマダ【6113】板金加工機械の企業が好調な話と今後の懸念点

日経平均に採用されている企業を全て取り上げているこのnote、今回取り上げるのは株式会社アマダです。

板金加工機械の販売シェアでは国内トップの企業です。

事業内容と業績のポイント

それではまずは事業内容から見ていきましょう。

主力の事業セグメントは以下の2つです。
①金属加工機械事業
②金属工作機械事業
金属の加工機械と工作機械を提供しています。

それぞれの事業をもう少し詳しく見てくと以下の通りです。
①金属加工機械事業
 (1)板金部門:「切断・穴あけ・曲げ・溶接」の全工程が可能な機械
 (2)微細溶接部門:自動車や二次電池、デジタル家電、医療機器などハイテク製品の製造に利用される機械
②金属工作機械事業
 (3)切削事業・研削盤事業:高層ビルや橋など、構造物に使われる巨大な鋼材や鉄骨の切断を出来る機械や精密で極小な金属を研磨加工する機械など
 (4)プレス自動化ソリューション事業:プレスマシンとその周辺装置による自動化システムの一括提案など、自動化関連のソリューションサービス

2023年3月期の事業セグメント別の売上構成と(利益額)は以下の通りです。
①金属加工機械事業:82.4% (415.1億円)
 (1)板金部門:74.0%
 (2)微細溶接部門:8.4%
②金属工作機械事業:17.2% (76.3億円)
 (3)切削事業・切削版事業:11.9%
 (4)プレス自動化ソリューション事業:5.3%
③その他:0.4%

金属加工機械事業が主力で、特に板金部門が大きな規模を持っています。
最も多様な産業や用途で利用されやすい製品ですね。

また、売上構成をもう少し見ていくと
(1)マシン売上:68.1%
(2)アフターサービス売上:31.9%
となっており、アフターサービスの売上も3割ほどと一定の規模があります。
一定の安定収益は期待できる企業だという事ですね。

販売規模が拡大していくにつれて、アフターサービスの売上も増加していきますので徐々に安定収益の増加が期待できる側面があります。

特に工場のIoT化のプラットフォームサービスであるV-factoryに力を入れ、拡大を進めています。
継続的な収益源の確保が期待できるサービスなので、その進捗にも注目です。

とはいえマシン売上が主力ですから、基本的には景気動向や設備投資需要に業績が左右されます。

続いて市場別の売上構成は以下の通りです。
①日本:38.8%
②北米:26.3%
③欧州:19.6%
④アジア他:15.3%

日本が4割弱を占める主力市場ですが、北米や欧州を中心に海外売上が6割以上となっています。

グローバルでの設備投資の需要の影響を受けやすく、為替の影響も受けるという事です。

続いて近年の業績の推移を見ていきましょう。

ここ7年ほどの業績の推移を見ていくと、コロナ以前の売上は右肩上がりで成長が続いていたものの、2019年度と2020年度はコロナ禍で悪化し、2021年度からは回復が進み、そして2022年度には過去最高の売上となっています。

営業利益に関しても、同様で2019年度以降はコロナ禍で悪化を見せており2021年度から回復、そして2022年度には過去最高益となっています。

コロナ禍で一時的には業績悪化となったものの、回復が進み2022年度には過去最高の業績となるほど好調になっていた事が分かります。

過去最高の業績となった2022年度の業績についてもう少し詳しく見ていきましょう。

市場環境としては世界経済回復の一方で、インフレ、金利上昇、地政学リスクの顕在化や金融不安を受けて不透明な環境だったとしています。

ですが、底堅い設備投資を背景に、売上・営業利益・当期純利益・受注高の全てにおいて過去最高を更新したとしており、北米や欧州が好調で過去最高、日本も回復が加速したようです。

一定のリスクはある状況ですが、コロナ禍からの経済回復が進む中で底堅い設備投資需要があり好調です。

とはいえ為替の影響を除いてみると、売上と営業利益は増収増益ですが営業利益は2.5%増と小幅な増益ですし、純利益は減益です。
円安が進みましたから、過去最高の業績となったのには為替の影響も大きかったという事です。

市場環境自体は底堅かったとしているものの、一定のリスクがある状況でそこまで良好といえる状況ではなかったですから、コロナ禍からの経済回復に為替の影響が加わった事で過去最高となっていたという事ですね。

実際に営業利益の変動要因を見ていくと、為替の影響が+103億円と最大の要因です。
為替の影響は大きいですから、為替の動向には注意が必要です。

その他の変動要因も見ていくと、実質売上増加の影響が+89億円あり販売が好調な影響もあります。
ですが、原材料コストの増加や在庫の評価減の影響があり原価は▲14億円の悪影響、人件費や物流費や販売関連費用の増加などの要因で、販管費も▲73億円の悪影響がありました。

販売面は好調で為替の後押しもありますが、コスト増加の影響を受けているという事です。

インフレも進みコストの増加は継続していますので、2024年3月期もそれを打ち返せるだけの成長を見せられるかが注目です。

納品まで一定の期間を要する製品が多いですから、その売上面では先行指標としては受注動向がありますので見ていきましょう。

受注高を見てみると、国内外で増加しており受注面は堅調です。

ですが受注は2022年7月以降は前期比では減少傾向となっている月も多いです。

設備投資は将来の需要に対応するために、行われるため、景況感にも左右されます。
地政学リスクの上昇やインフレが進み、景気の悪化が見込まれていた中で受注面は一定の悪化があったという事でしょう。

さらに、商製品在庫も積みあがっています。
事業規模が拡大しているという事もありますが、在庫回転月数も悪化しています。

受注高も前期比では下落した月もありましたし、景況感が悪化している中で販売面は伸び悩みがみられ、過剰在庫気味になっていると考えられます。

今後は受注面の改善が進むかにも注目です。

また、今後の成長戦略を見ていくと、短期的には新商品の投入とグローバル拡大による成長を目指しています。

新商品では、レーザー技術を活用した新領域の製品を拡大していこうとしていますので販売が進むか注目です。

続いて、市場別での202年度→2030年までの売上高の成長率の目標は以下の通りです。
日本:+20%
北米:+47%
欧州:+67%
アジア:76%
各市場で増加目標を立てていますが、日本は最も低成長となっており、市場としてもコスト削減による収益性改善を重視しているようです。

積極的な海外展開による成長を目指しているんですね。

欧米では自動化の強化を進め成長、アジアでは規模の拡大を積極的に進めていこうとしていますので、海外展開の進捗にも注目です。

という事でアマダは金属加工・工作機械に強みを持った企業で、海外比率が6割強となっています。
業績は設備投資需要の影響を受けますので、コロナ禍では業績が悪化しましたが、ここ2年ほどは経済回復による販売面の好調と円安の後押しを受けて過去最高の業績となるほど好調になっていました。

ですが、コストは増加傾向にありますし経済の不透明感が高まる中で受注面は前期比で減少する月も出始めていますので、売上面の悪化が起きてこないかには注意が必要です。

直近の業績

それでは続いて直近の業績を見ていきましょう。
今回見ていくのは2024年3月期の2Qまでの業績です。

売上高:1870.5億円(+10.4%)
営業利益:272.7億円(+14.5%)
四半期利益:198.6億円(+16.1%)
増収増益で好調が継続しています。

景気の動向としては、インフレ抑制のための金融引き締めや中国経済の減速があり不透明な状況が継続しているとしています。

ですが、各国政府による財政支援が下支えとなり、設備投資は更新需要で底堅く推移したとしています。

その結果地域別の売上でも、過去最高を更新し好調が継続したようです。
為替の影響を除いても増収増益となっていますので、好調が継続していますね。

中々設備投資の拡大が見込まれるような状況では無いものの、更新需要は堅調なようですから、堅調が業績は期待されます。

営業利益の変動要因を見ていくと、販管費の増加で34億円ほどマイナスの影響がありコスト増加は続いていますが、実質売上の増加が+35億円、価格改定や操業度の好影響で原価面が+13億円、そして為替の影響が+24億円と好影響があり、業績を押し上げています。

販売が堅調な他にも、価格改定や円安の後押しもあります。

円安の好影響が継続する事は期待できますが、最近は米国での利下げも予想され始める中で為替の変動が大きくなっていますので、為替の動向には注目です。

また、売上は好調でしたが受注面を見ていくと前期比では減少傾向が続いています。
受注面での悪化は継続しているという事ですね。

在庫も積みあがっており、在庫回転月数の悪化も継続しています。

経済環境も良好とはいえない中で、今後の業績悪化に繋がる可能性はありそうです。

とはいえ通期予想でも増収増益を見込んでおり、好調が継続する見通しです。景気の動向や設備投資需要には注目です。

という事で直近では増収増益で好調が継続しています。
経済環境は良好ではないものの、更新需要を中心に堅調な需要はあるようです。

円安の好影響も受けていますが、為替の変動は非常に大きくなっていますので、為替の動向には注目です。

また、業績自体は好調ですが受注面の悪化や在庫の増加は継続しており、業績悪化に繋がる可能性がありますので、その点には注意が必要そうです。

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