富士電機【6504】半導体市況悪化の影響を受けても成長が期待できる理由

日経平均に採用されている銘柄を全て取り上げているこのnote、今回取り上げるのは富士電機株式会社です。

重電メーカーとして知られている企業です。

事業内容と業績のポイント

それではまずは事業内容から見ていきましょう。

富士電機の主要な事業セグメントは以下の5つです。

①パワエレ エネルギー事業:
 (1)エネルギーマネジメント:受変電設備、エネルギーマネジメントシステム
 (2)施設・電源システム:無停電電源装置、電機盤
 (3)器具:受配電制御装置

②パワエレ インダストリー事業:
 (1)オートメーション:インバータ、モータ、小型容量電源、計測機器、FAコンポーネント等
 (2)社会ソリューション:鉄道車両用駆動システム、ドアシステム、船舶・港湾用システム、放射線機器システムなど
 (3)設備工事:電気工事、空調設備工事など
 (4)ITソリューション:ICTに関わる機器、ソフトウェア等

③半導体事業:産業分野や電装分野(自動車)向けのパワー半導体(電力の供給や変更を行う半導体)

④発電プラント事業:再エネ、水力、火力、原子力等のプラント設備

⑤食品流通事業:
 (1)自動販売機:自動販売機
 (2)店舗流通:ショーケースや店舗システムなど

複数の事業を展開していますが、電力に関連する事業が多い企業です。

大容量の変圧整流器では世界トップのシェアを持っていたり、汎用インバータでも国内シェア2位、パワー半導体の一種であるIGBTモジュールでも世界3位のシェアとなっています。

2023年3月期でのセグメント別の売上と(営業利益)は以下の通りです。

①パワエレ エネルギー事業:24.8% (269億円)
②パワエレ インダストリー事業:33.1% (249億円)
③半導体事業:19.3% (322億円)
④発電プラント事業:8.2% (36億円)
⑤食品流通事業:8.9% (44億円)
⑥その他:5.6% (37億円)
売上・利益ともに比較的分散した構成になっていますが、①パワエレ エネルギー事業、②パワエレ インダストリー事業、③半導体事業の3つが主力事業となっています。

海外展開もしており、海外比率は29%と一定の規模を持っていますが国内事業が主力の企業です。
国内の動向に業績は左右されやすいという事ですね。

主力事業の市場動向についても見ていきます。

①パワエレ エネルギー事業では、受変電分野では老朽設備の更新需要とや政府の補助金を活用した次世代エネルギーの需要が増加しており、さらに施設や電源システムでもデジタル化や5G化への設備投資需要も拡大しているとしています。
その他にも受配電制御装置でも、EV投資や5G需要があるとしています。

②パワエレ インダストリー事業でも、省エネや自動化関連の需要は堅調な推移が見込まれているとしています。

③半導体事業でも、省エネや自動化の需要、電装部門でもハイブリッド車や電気自動車化による成長が見込まれているとしています。
パワー半導体は電気自動車に利用されますから、電気自動車化と共に成長が期待できます。

このように、主力事業の製品は成長市場で利用されており、国内事業が中心であるものの市場成長による事業の成長が期待できます。

続いて近年の業績の推移を見ていきましょう。

2010年からの業績の推移を見てみると、コロナ禍では一時的な悪化はありますが基本的には、売上・利益ともに右肩上がりで成長が続いています。
市場が成長していますので今後も成長が期待されます。

利益率も良化しており2010年度には1.7%だった営業利益率は2022年度には8.8%となっています。

そして、2023年3月期は売上高、営業利益、経常利益、純利益ともに過去最高と非常に好調だった事が分かります。

セグメント別の業績の推移を見ていくと、主要な事業は全て成長を見せています。
主要な3事業の2019年度→2022年度の営業利益の変化は以下の通りです。

①パワエレ エネルギー事業:123億円→270億円
②パワエレ インダストリー事業:165億円→295億円
③半導体事業:97億円→328億円
全事業とも大きな成長を見せており、特に半導体事業が好調です。

2019~2023年度までの設備投資を見てみると半導体が中心で、2914億円の内1974億円を半導体に投資しています。
研究開発も半導体とパワエレが中心となっており、成長が続く2事業に積極的な投資を進めています。

2023年3月期の営業利益の変動要因を見てみると、物量・生産増による好影響が+355億円となっており、固定費増加の影響▲220億円を上回り増益となっています。

設備投資や研究開発を積極的に進めていましたから、事業規模も拡大する中で、販売が好調で増収増益だったという事ですね。

z今後も事業規模拡大による成長が期待されます。

続いて受注高を見ていくと、こちらも増加しており堅調です。

セグメント別の受注高を見ても全セグメントで増加していますが半導体事業では産業分野の受注は減少しています。
半導体市況は悪化していますから、その影響が見られます。

とはいえ、半導体事業全体では自動車向けの電装用が好調で受注は増加しています。
自動車生産はコロナで落ち込んでいたのが回復していますし、電気自動車化も進んでいますから電装用の成長が期待されます。

半導体市場は落ち込みがみられますが、電装用は需要がありますので市況悪化の影響は受けにくいという事ですね。

また、海外市場を見てみると、中国は減収となっていますがその他の地域でカバーした事で増収となっています。
中国経済停滞の影響はあるものの、中国の売上比率自体は1割程度ですから、こちらもそこまで大きな影響はないと考えられます。

中国経済悪化や半導体市況悪化など、市況悪化の悪影響はあるものの、事業の構成から考えるとその影響はそれは小さく済むと考えられますので、成長が続く事が期待されます。

という事で富士電機は電力関連の製品を主力とした重電メーカーで、日本市場を中心に事業を展開してます。
主力事業の多くは成長市場で事業を行っており、業績も成長が続いています。
好調な半導体では設備投資も積極的で、生産力も拡大する中で販売量の増加で好調です。

直近では中国市場の落ち込みや半導体市場の停滞という懸念はありますが、中国比率は1割程度ですし、堅調な需要が期待できる電装分野のパワー半導体の販売は堅調です。

市場環境悪化の影響は比較的小さいと考えられますから、それを補う成長が続くかが注目です。

直近の業績

それでは続いて直近の業績を見ていきましょう。
今回見ていくのは2024年3月期の3Qまでの業績です。

売上高:7597億円(+10.0%)
営業利益:577億円(+35.9%)
経常利益:566億円(+37.3%)
純利益:373億円(+28.6%)
増収増益で、売上高、営業利益、経常利益、純利益では過去最高を更新したとしており、好調が継続しています。

営業利益の変動要因を見てみると、原料価格高騰や人件費等の固定費増の影響はあるものの、物量・生産増による影響で増益となっています。
生産能力拡大による販売面の好調が継続しているという事ですね。

セグメント別の営業利益の前期比は以下の通りです。
①パワエレ エネルギー事業:▲8億円
②パワエレ インダストリー事業:+73億円
③半導体事業:+40億円
④食品流通事業:+40億円

パワエレ エネルギー事業は減益となっていますが、それ以外の事業は全て増益で好調です。

市況が悪化する半導体事業の売上を見てみると、直近の3Q単体の半導体事業では前四半期比で半導体(産業)は市況悪化を受けて減少しているものの、半導体(電装)は伸びており、事業全体では半導体市況悪化の中でも成長が続いている事が分かります。

経済悪化が自動車販売に悪影響を与える考えられますが、電気自動車化の流れも進む中で堅調が続く事が業績が期待されます。

また、パワエレ エネルギー事業では減益ですが、これは「発電プラント事業」で大口案件の減少による影響を受け、「器具事業」では半導体製造関連装置の需要減の影響が大きいとしています。

半導体市場悪化の影響がこのパワエレ エネルギー事業では一定程度出ています。
半導体企業の予測を見てみると、需要回復は2024年の下期あたりを見込んでいますので今期中は減益傾向が続く事が考えられます。

市況悪化の影響は一定程度ある中で、セグメント別の受注高を見てみると、受注高は減少しています。
パワエレ エネルギー事業の「器具事業」やFA(低圧インバータ、回転機など)と半導体(産業)の悪化が大きいです。

減益となっていたパワエレ エネルギー事業は受注高も落ち込んでいますので、その点からも今後も業績悪化は継続する可能性い事が分かります。
さらにFAも減少しており、経済低迷や消費低迷の悪影響が一定程度は見られています。

とはいえ、半導体市況悪化の影響は受けにくい事業構成となっていますし、企業全体としては増収増益が続いており今後も好調が期待されます。

半導体市場の回復が進めば2025年3月期は、そこにパワエレインダストリー事業や、半導体事業の産業用の回復が乗り、さらに成長が期待されますので、半導体市況には注目です。

また、海外市場では中国は為替の影響を除くと減収ですが、全市場で増収で成長が続きます。
中国経済停滞の影響は一定程度出ていますが、中国比率が1割程度だという事もありますし、円安が続く中で海外事業は堅調です。

そんな中で業績は上方修正を行っており、通期でも増収増益を見込んでいます。
セグメント別ではパワエレ エネルギー事業の業績は悪化を見込むものの、パワエレ インダストリー事業と半導体事業の成長で補っていく見通しですから成長が続くかに注目です。

という事で直近でも増収増益で好調が継続しています。
事業は好調な事業が多いですが、パワエレ エネルギー事業だけは減益で、半導体市況悪化の影響も受けています。
さらに、半導体事業でも産業分野では市況悪化の影響を受けて苦戦しています。

今後もしばらく半導体市場の落ち込みが予想される中で、パワエレ エネルギー事業や半導体事業の産業分野は業績悪化が続く事が考えられます。

ですが事業構成としては半導体市況悪化の影響を受けにくい構成となっており、事業全体としては好調です。

半導体市場の回復の可能性がある2025年3月期は、現在は苦戦しているパワエレ エネルギー事業や、半導体事業の産業用の回復によって、さらに大きな成長を見せられる可能性がありますから、半導体市況には注目です。

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