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2022年秋の作業〜水の確保と養液栽培〜


栽培用の水の確保

ブルーベリー栽培に限った話ではありませんが、農作物の栽培に水の確保は欠かせません。

特に、地植えではなくポット植えで栽培することになったので、自然の雨だけでは不十分。灌水設備をしっかり整える必要があります。

農業と無縁の生活をしている人にはピンとこないかもしれませんが、農業用水というのはトラブルの元になりやすいもの。「我田引水」という四字熟語もあるくらいです。

当初は近くを流れる川から水を引くことを考えていましたが、近隣の農地でもこの川の水を使っているらしく、トラブルを招きそうな気がして別の方法を模索していました。

そんな中、地元の方から近くに井戸があるという話を聞きました。

伊自良の里は、平成の初めに国が行ったふるさと創生事業の予算を使って、一時、公園やキャンプ場の整備が進められたことがあったそう。

維持管理など、さまざまな問題があったためそれらの事業は完遂されず、温浴施設のみが完成して今の伊自良温泉となっていますが、その整備の途中で井戸が掘られていて、この井戸が今も使えるということでした。

伊自良の里を管理している協会から許可をもらい、この井戸を使わせてもらえることになりました。

井戸はあっても汲み上げるシステムがなかったので、ポンプの電気なども許可を取って自分で引きました。管が古いので、水を出し始めてすぐは赤サビがすごいです。

水を出し始めたばかりの井戸水

しばらく出し続けているとキレイな水が出ますが、これは2023年になって専門の清掃業者に入ってもらい、今は赤サビ問題は解決しました。

しばらく出し続けた後の井戸水

ブルーベリー栽培に必要な水は、この井戸から引くことができるようになりましたが、さらに、これを飲料水として使えないかと思って水質検査も行いました。

ブルーベリーの収穫シーズンは夏真っ盛り。収穫したブルーベリーをこの井戸水で冷やしておくサービスができたらいいなと思ったからです。
その結果、飲料水としても使える水であることが分かりました。

水が豊富でおいしい、伊自良の里

ちなみに、この辺りの集落では山水や井戸水を使った簡易水道を使っています。塩素で消毒されていますが、とてもまろやかでおいしい水道水です。

近隣の山に入って林道を歩いてみると、そこかしこから水が流れ出しているのをよく見かけます。山の木々や土壌に豊富に蓄えられた水が、山の谷間に流れを生み出し滝や川になるということがよく分かる光景です。

また、周辺の南野津又町には、福井県内に35カ所ある「ふくいのおいしい水」に認定された名水「こしょうずの湧水」があります。美山三山の一つである飯降山(標高884m)のろ過作用によって、豪雪地帯特有の適度にミネラルを含むまろやかな水です。

福井県作成パンフレット「ふくいのおいしい水」より引用

この南野津又町から峠を超えて降った先に広がる大野のまちは、湧水地が多く点在する名水のまちとして知られています。

おいしい井戸水を使って養液栽培

さて、ブルーベリーの話に戻ります。
井戸の近くには、養液栽培のための簡単な小屋も建てました。

養液栽培システムのための小屋も手造り

ブルーベリー栽培では、人工培地アクアフォーム(フラワーアレンジメントで使われるオアシスのような保水性のある素材)に灌水チューブによって液肥と水を最適な濃度で混ぜた養液を送り込む栽培方法が確立されています。

ブルーベリーは北アメリカ原産の植物で、水はけの良い酸性の土を好みます。日本でブルーベリーを栽培する場合、地植えではピートモスなどを使って土壌改良が必要。

しかし、養液栽培ではその必要がありません。ブルーベリーに適した土壌条件を再現した人工培地を使うからです。また、液肥混入機によってpH値や肥料濃度、土の適度な保湿性などの繊細な調整が可能になります。

農業の経験がなくてもこの方法を採用することで品質のよいブルーベリーを栽培することができるため、この方法で新規就農する人も多いそうです。伊自良*森のベリーパーク*でも、この養液栽培システムを採用することにしました。

現状では、ブルーベリーの苗木を少しずつ買い揃えて木を大きくしている段階なので、まだこの養液は与えていません。養液栽培のものは全体的に味がいいものが多いので、伊自良の里のおいしい水を使った養液栽培で、どんな味のブルーベリーが育つのかと、今から楽しみです。


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