コロナが教えてくれたモノ

　今回のコロナ騒動は、色々な事を人類全体に示唆してくれた。

　それは「新自由主義の失敗と、グローバリズムの限界」である。

　新自由主義というのは陳腐で浅はかな思想である。日本人のアタマに最初に浮かぶのは竹中平蔵であろう。この思想はとにかく「変革」を訴える。「規制緩和」だの「前例主義の否定」「省庁の縦割り行政の打破」などの、一瞬耳ざわりの良いスローガンが並ぶ。スガ政権の最初の記者会見で「縦割り行政の改革」が述べられていた。

　しかし、竹中平蔵あたりの言うことは「従来の既得権益を廃止して、自らに都合の良い既得権益をよこせ」と言っているに過ぎない。
　彼は政府の規制改革推進委員会の委員を務め、いまだにその席に居座っている。加計学園に排他的な順位を保証した「特別戦略特区」の指定で便宜を図り、カジノの営業を特例として認める「特区指定」など、既得権益を新たに認めて固定化する「利益誘導」ばかりである。

　反対意見があると、すぐに「対案を出せ」と言う。対案など言うまでもなく「現状のままで良い」である。

　竹中平蔵が会長を務めるパソナ、人材募集に新時代を開いたリクルート、メディアを監視・監督するデンツー、こんな現代の「既得権益企業」が、政府のコロナ対策事業の「元受け」となり、法外な手数料収入を荒稼ぎしている。
　この連中は、滅びゆく日本に取りついた寄生虫である。新たな価値など、なにひとつ提供していない。「全体の豊かさ」などどうでも良い。「自分の排他的な権益」のみが重要である。

　自民党など、元々が「自己利益の誘導と独占」が党是となっている政党である。しかし従来はそれがバレないように、それなりのポーズを取って来た。権力を維持するために必要だったのだ。
　それが安倍政権になってから、隠すことなく平然と居直っている。「権力者が利益を先取りして、何が悪い」と公言し、追及に対しては「何ら問題ない、批判には当たらない」と、スガは官房長官時代にうそぶいていた。
　説明も言い訳もせずに、押し切ろうとしてきた。

　こんなフザケタ態度を保証したのが公明党である。連立政権を担い、地方区の票を自民党に与え、その見返りとして比例区の当選者を増やしている。
　山口党首など「自民党の横暴を押さえているのは公明党です」と恥ずかしげもなくほざいている。
　「お前たちが自民党に票を与えなければ、こんな選挙結果にはなっていない」ことを棚上げして、恥知らずな「言い訳」に余念がない。

　自民党も公明党も新自由主義者の使いっ走りで、臆面もなく利益誘導を国家事業としてやっている。また、それにぶら下がる民間業者がスズナリ状態である。
　「おこぼれに預かろう」という、オレオレ詐欺の「出し子」のような「悪意無き犯罪者」たちがゴマンといる。

　次に「グローバリズムの限界」である。
　米ソ冷戦対立が終わり、地球上から社会主義経済が退場し、「自由主義の」統一市場が誕生した。資本もヒトもモノも、国境を跨いで行き来し、もっとも効率的な資本の活用を目指した。
　世界中のもっとも人件費が安いところで生産し、もっとも安い輸送費で運び、もっとも大量に売れるところで販売する。
　一瞬、効率的に見えるがリスクも最大限に拡大した。

　世界各地に散在していた工場は、中国や貧困国に移転してしまい、自国の生産者の雇用を奪ってしまった。ちょっとした事故や災害でも、サプライチェーンが途切れると何も作れない。

　そこに今回のコロナウイルスである。世界中を移動してまわる「商品」はヒトの手を介在するので、ウイルスも世界中にバラ蒔いた。
　世界統一市場というのは、極めて危うい環境にある。電車の相互乗り入れから見えるように、単独路線ならその短い路線だけが止まるのが、連続する線路すべてを運休させる。

　危機管理の視点から見ると、みずから墓穴を掘っているようなモノである。
　「効率化」「利益最優先」というのが、どれほど危険かを思い知らせてくれた。

　「人々の接触の危険」をコロナは人間に教えた。濃厚接触の頂点は「セックス」であり、人類の「種の保存」を実現している。
　安心できるパートナーとの信頼できる関係は、濃厚接触しても裏切られない関係である。

　それでも外部との生活上の接触があるので対策は必要だが、のべつ幕無しに遊び回っていると地雷源の上を歩くことになる。

　信頼できる夫婦関係というモノが、改めて見直されると思う。