感情が自然と外へ流れるケニアの葬式 (世界一周旅行記 ケニア ルシンガ島)
僕がルシンガ島に到着してからすぐ夜になると祭のような音が聞こえる。別に音楽があるわけではない。人々が何か犬の遠吠えのような叫び声をあげているのだ。最初は祭かと思っていたけれど、よく耳を澄ませると、何か悲しそうな叫びだった。
「あの人々の叫び声は祭ですか?」と尋ねてみると、葬式であることがわかった。僕の滞在先の近くで、男性が若くして急に亡くなったようだ。そこから3日間ほど、人々の叫び声が毎晩が聞こえてきた。聞けば、アフリカの葬式は2週間続くらしい。その間に遠くに住む人も故人を訪問し、何度も何度も故人を偲ぶ。
日本でも通夜、告別式があり、四十九日、一周忌、三回忌など、ある人が亡くなった後に何度も故人を偲ぶ集まりを開くことで、悲しみを皆で共有しながら、段階的に悲しみを受け入れて日常生活に戻っていく過程がある。ケニアの人たちが3週間、葬式を行い続けるのも似た目的があるそうだ。
対して異なる点は、遺族の悲しみ方だ。日本人は悲しみを隠すようにポロポロと涙を流しながら、お経が読まれるのを聞いたり、口ずさんだりする。静かな見送り方だ。一方で、ケニアでは感情を歌や叫びを通して表現する。ちなみに現地の人はflowという英語を使っていたので、自分の感情を無理やり外に出す、頑張って表現するというよりは、自分の中の溢れるような感情が自然と体の外へ「流れていく」イメージを持っているのかもしれない。悲しみという感情を表現することで、少しずつ故人の死を受け入れていくのだ。
今日も彼らの歌や叫び声が遠くから聞こえると切なくなる。