私の決断

 私の一番の決断は、浪人時代にセンター試験に失敗し、それでも志望校を変えなかったことだ。志望校の受験には最低でも80パーセントの得点が必要だったが、本番は70パーセントしかとれず、合格可能性はほぼ0に等しかった。もしまた大学受験に落ちたら、就職するか、アルバイトをしながら二浪するしかなかった。

 しかし、私は同じ大学を受験することにした。私は成功体験を手に入れたかった。部活でもパッとしない成績だったし、何か人に認められるような立派なことをしたことがほとんどなかった自分は、そろそろ成功体験を得なければ完全に自信を失ってしまうと思っていた。だから、あえて不可能といえる挑戦に挑んだ。


 試験本番、全く手応えがなかった。バイトしながらもう一浪しようと思った。そうやって未来を前向きに捉えられるようになっただけでも、挑戦してよかったと、この結果に満足していた。

 まだ残雪があたりを包む2月の終わり、私は布団の中で無気力に寝転がっていた。父親が、今日は合格発表だぞとしきりに言ってきた。結果はわかりきっているが、これ以上親を待たせるのもどうかと思ったのでサイトを開いた。諦めた顔でモニターを見ると、そこには私の番号が載っていた。


 今振り返るとそれはとてもとても幸運な経験だった。自己肯定感を損なわずに済んだし、目標も達成できた。でも自分は、それを自分の力だとは思ってない。ただ、運が良かっただけだ。同じことをまたやっても受かる確率はほぼない。そうやって運の要素が絡んで人生が進行していくんだと考えると、やるせなくなる。だけど、やるせないからこそ逆に成功ってその程度のものでしかないんだから、今は何に挑戦するにしても吹っ切れてる。

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