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素人でもできるレコーディング方法

多重録音用の機材(MTRとか)を使うと、しろうとでもけっこう本格的なレコーディングを楽しめるんですけど、最近は高性能な機材が安く買えるので、興味がある人はやってみると良いです。

オーヴァーダビングでなんぼでも音を足せるので、ライブではできない演奏もできちゃったりして、面白い体験ができます。

なかなかハードルが高いと感じる人も多いと思われますので、割と簡単にできるやり方をエラそうに指南しようというテキストです。

全部、私の実体験に基づいたもので、基本的に試行錯誤から得た私なりのやり方ということになります。私は音響についてちゃんと勉強したこともありませんし、玄人の人から見たら間違ってるところがあるかもしれませんが、その辺はリアルの臨場感ということで。

使う機材

まずは多重録音機器が必要です。近頃はパソコン、タブレット、スマホとかにオーディオインターフェースを繋いでという場合が多いようですが、多重録音専用機器のMTR(マルチ・トラック・レコーダー)の方がおすすめです。最近の言葉で言うとコスパがいいから。

というのも、なるべく多チャンネル同時録音ができた方が楽だし、できることが広がるから。そしてオーディオインターフェースの多チャンネル同時録音対応のものだと、けっこう高いです。MTRだと8チャンネルくらい同時でイケる機種でもそこまで高くないです。

どっちにせよ、せめて8チャンネル同時録音以上の機材が良いです。簡易的な機材だと2チャンネルしか同時に録れないなんてこともあって、それでも何とかできないこともないですけど、できることに制限がかかる&手間がかかるんです。

その他の機材としてはミキサー、マイク、マイクスタンドなどが必要ですけど、その辺は貸しスタジオで借りれば良いのでここでは詳しく触れないです。

ドラムの録音マイクのセッティング

一番難儀なのがドラムの録音なんですけど、普通の手順だと先にドラムを録ってそれを聴きながら他のパートを録っていくという作業になりますから、とにかくドラムの録音ができないと始まりません。

でも、やったことがないと、どうやっていいのか見当もつかないでしょうから、私が見よう見まね&試行錯誤で会得したドラム録音方法をお伝えします。

最初にマイクセッティングです。ドラムスセットには、基本的な構成でもバスドラム、スネアドラム、タム×3、ハイハット、クラッシュシンバル×2、ライドシンバルとこれだけたくさん音を出すものがありますから、マイクで拾うのも大変です。

ちなみにマイクスタンドは必ずブームのものを使います。ブームというのはストレートと違ってスタンドの棒(?)を真ん中で折って固定する事ができるタイプの事です。

ブームのマイクスタンド

ちなみに、こっから先もひどい絵が出てきますけどこれでも一生懸命描いたんだから勘弁な!

さて、セッティングの具体的な方法ですけど、ドラムの前にマイクを1本立てていっぺんに録音というわけにはいきません。

なるべくたくさんのマイクを立てて録音するのが良いです。理想は1個のタイコ、1個のシンバルに対してそれぞれ1本。(あくまで理想ね)

8チャンネルくらい同時に録音できる機材だったらほぼ全タイコ、全シンバルにマイクを立てても足ります。足りなくなりそうな場合は、例えば2つのタムの間にマイク1本とか、うまいことやってマイク本数を節約するという考え方です。

マイクの立て方、というか音の拾い方はこんな具合です。

バスドラムは、ドラムヘッドの穴にマイクを突っ込んでしまいます。あまり奥まで入れないでいいです。マイクの頭が入っていればOKです。スネアドラムタムは、タイコの打面にマイクを向けます。マイク位置は叩きやすいようにはじっこの方でOK。

マイク本数を少なくしたい場合の簡易セッティングの一例はこんな感じ。

ドラム録音簡易セッティング

スネアドラムの打面とハイハットとの間にして両方一緒に拾わせればここは1本でも大丈夫。

ハイとミドルのタム2つは2つのタムの間にマイクをセットして両方同時に拾わせ。フロアタムライドシンバルも間にマイクをセットして兼用でも大丈夫。

クラッシュシンバルは2枚のシンバルの間、やや上にエアマイク的にセットします。基本的にシンバル系はそんなに気を使わなくても勝手にそこそこ拾います。調整は録音が終わってからでも何とでもなります。

とりあえずこれで、マイク5本でソコソコいける感じです。

ドラム録音のやり方

マイク立てが済んだら、それぞれのマイクについて実際に音を出して入力音量をチェックするのですが、ドラムの音はバカでかいのでいきなり音を機材に入れてしまうと入力レベルが高すぎた場合機材を破損する恐れがあります。

※ドラムを録る場合は基本的にPADスイッチ(入力レベルをいい具合に押さえるスイッチ)があればONにしてください。

そして機材にヘッドフォンを繋いで音を聴きながら、徐々に音量を上げて行って調節をします。演奏で使う一番強い叩き方でpeakランプが光らないギリギリまで上げていきます。

この作業を全てのマイクについて行います。慣れないとここまでの作業に1時間以上は軽くかかりますから覚悟してくださいね。こればっかりはマジ大変。

セッティングが済んだら後は実際に演奏して録音しれば良し。後から他の楽器を入れないといけないので、曲始めとか長めのブレイクのところとかは、カウントを刻んでおくと良き。

クリックを入れてそれに合わせてという人もいるようですけど、個人的にはあんまり好きじゃないです。

2チャンネルしか同時に録れない場合のドラム録音方法

スタジオ備え付けのミキサーと、MTRとかの機材を組み合わせて使うことによって、2チャンネルしか同時に録音できない場合でもなんとかなります。

まず、ミキサーの右チャンネルのOUTPUT、左チャンネルのOUTPUTから録音機材の1トラック、2トラックの入力へそれぞれ接続します。ミキサーの右チャンネルから出た音を1トラックに、左チャンネルから出た音を2トラックに録音できるようにするんです。

そしてドラムにセットしたマイクをミキサーに接続するのですが、それぞれのマイクシールドをミキサーに繋いでいく際に、ミキサーの各チャンネルにフセンを貼って「バスドラム」「スネア&ハイハット」とか書いておくとわかりやすくてラクです。

そして、ミキサーのそれぞれのチャンネルのPANを右なり左なり一杯に振ります。つまり、後で音量とかのバランス調整をする際に右に振ったチャンネルと左に振ったチャンネルの音をそれぞれ別々に調整できるようにするんです。

ミキサーを使った振り分けのイメージ

2チャンネルしか同時録音できない場合は、全タイコ、全シンバルの個別調整はあきらめるしかないんですけど、とりあえずPAN振りで2グループに分ければ、グループごとの調整はできる・・・という理屈。

ということは、ミキサーから録音機材に出力する前に、グループ内での音量バランス調整は済ませておかないとダメです。

ちなみに右、左のグループ分けは、バスドラム+タムで1グループ、スネアと金物系で1グループ、みたいな感じがおすすめ。何にせよバスドラムとスネアは分けるのが良いです。

そんなこんなで、ドラムを録り終わったらレコーディングの難所はもう突破です。ここで8割完了と言っても過言ではありません。

ベース、ギターなどの録音

次にベース、ギター、キーボード、パーカッションなどの録音ですが、ドラムの録音が完了してしまえば、後はラクなものです。

順序としてはドラムの次にはベースを録音というのが基本です。リズム隊の音が出来上がってからの方がギター、キーボードなどの上物は演奏しやすいですから。

アンプからDI(ダイレクト・ボックス)を使って接続する方法もありますが、マイクを立てて録った方がラクなのでその方法で。

ベースにしてもギターにしても、アンプにマイクを立てる場合はアンプのスピーカー部にマイクを近づけてセットするだけです。スピーカー部が2発あるアンプの場合はどっちか片方に近づけます。

スピーカーどっちかに立てればよし

パーカッションは普通にマイクで音を拾って録音すれば良いんですけど、コンガとかジャンベみたいな皮を叩く系は打面にマイクを近づけてセッティング。マラカスとかカウベルみたいな音が高い楽器は、適当で大丈夫。どうやっても簡単に音を拾えるので。

アコースティックギターは、ギターの穴(サウンドホール)のあたりにマイクを向けて録れば無難です。マイク位置や向きで響きが変わりますから色々試してみてください。鳴り具合が気になる場合はマイク位置をサウンドホールよりもネック寄りに変えてみるとか、イコライザー調整で対応。

もうひとつ覚えておきたいのは、ロック編成の中にアコースティック・ギターの音を入れると、ほとんど聴こえなくなっちゃう場合があります。2度同じ事を弾いて入れるとか、高域を強くイコライズして入れるなどの工夫をするといいかも。こういうところ、楽しむと良きです。

ボーカルの録音

必ずしもスタジオでやる必要はありません。歌っても近所迷惑でない場所で、ある程度デッドな(=反響が少ない)空間ならいいんです。私はいつもカラオケボックスで録音してました。事前に機材持ち込みの許可を取らないとダメですけどね。

ちなみに、テレビや写真などで見たことがある人も多いと思いますが、歌手の口の前にある金魚すくいのアミみたいなアレポップガードといいます。マイクを吹いてしまって「パ行」の音などで「ボフッ!」と鳴るのを防止する道具です。

多分市販されていますが、買う必要はないです。針金と薄い布(ストッキングとか)やティッシュなどで自作すればじゅうぶんです。マイクの前に大きいクリップで固定すればOKです。針金ハンガーを伸ばしたり曲げたりすれば簡単につくれます。

補足として、しろうとでもプロっぽい仕上がりになる小技について。

まずは何はなくともダブルトラック。これは同じメロディーを2度歌って重ね録りする方法で、いい具合の効果が出ます。プロの楽曲にもダブルトラックを使っている曲はけっこうあるので気をつけて聴いてみてください。

素人バンドの場合、ダブルトラックを使うとなんとなくプロっぽい(笑)という効果があります。ただし、2度歌いの両方のピッチがあまりにズレていると聞き苦しくなりますから注意。

また、ダブルトラックをコーラスのハモリに使うとかなり重厚なコーラスになります。2声コーラスならダブルで4音、3声コーラスならダブルで6音使いますが、その効果はてきめんです。

次にエフェクトについてです。ボーカルにエコーやリバーブなどのエフェクトを掛けるとこれまたなんとなくプロっぽいのでいいのですが、オススメはリバーブじゃなくてエコーの方です。

リバーブとエコーの違いは、リバーブはお風呂とかカラオケのあの感じで、よっぽど上手に使わないと素人カラオケ臭くなります。

エコーの方はジョン・レノンが大好きなアレ。ピンとこない方はジョン・レノンの「Rock ‘n’ Roll」というCDを聴いてみてください。

1曲目の「Be-Bop-A-Lula 」からほとんど全部エコーで、エコーとは!のサンプルとして通用するくらいのコテコテのエコーです。(ショート・ディレイなんていうエフェクトもエコーとほぼ同じ効果があります。)

ちなみにダブルトラックやエフェクトはボーカルだけじゃなくて楽器にかけても面白い効果が得られる場合がありますので、レコーディングに慣れてきたら色々試してみましょう。ギターのダブルトラックや、ドラムの浅めのディレイとか、案外使えるものは多いです。

ミックスダウン

全パート録り終わったら、それぞれの音量調整とか音質調整、エフェクトとかをやって、1曲として仕上げる、その作業のことをミックスダウンといいます。トラックダウンも同じ意味。ちょっと通っぽい言葉でかっこいいので、覚えときましょう。

楽しい作業です。これを楽しむためにレコーディングするまである。音質やバランスは好みとしかいいようがないんですけど、一応セオリー的なものはあります。

ドラムの音質調整、イコライズは頑張りましょう。調整でものすごく変わります。キック(バスドラム)もポン、ドン、ドス、ドッとか調整次第で簡単に変わりますし、スネアもバン、パーン、スカンとお好きな具合で。

パーカッション系は、特にカウベルとか音が強いやつは抑えめの音量にしとくのが良いです。ちょっとでもデカすぎるとものすごくうるさくなっちゃう。

パン振り(左右振り)は、たとえばギター1とギター2を左右に少し振って・・・とかやりたくなりがちですけど、思ったより簡単じゃないです。というか振ったところで良い効果が出るとは限りません。ムズいんですよ。無難なのはモノラルにしちゃうことです。

パンと言えばついついやりたくなっちゃうのが、左から右でだんだん音が移動するみたいなちょっとトリッキーなやつだったりしますが、そういう奇をてらった演出ってなかなかカッコいい効果につながりにくいですし、コケると恥ずかしいので注意が必要です。

失敗しがちなのは、ギターとかの上物をデカく鳴らしすぎちゃうというやつ。歌が入ってる曲の場合は特に、歌の邪魔にならないように注意したいところです。音量を抑えても良いですし、少しだけパンを振っておくだけでもけっこう違います。

これを言っちゃうと身も蓋もないですけど、トータル的なバランスや音響効果については、好みとセンスになっちゃいます。ですから納得いくまで時間をかけてやるのが良いです。ミックスダウンはたっぷり時間をかけて楽しむのが良き。

あんまり没頭しちゃうと何が良いのか悪いのかわかんなくなりがち。いったんミックスしたやつを次の日聴いたらなんだこりゃってのもありがち。夜中のテンションで書いたラブレターを朝読んでみたみたいな感覚。日にちを開けて改めて聴いてみるってのもいいんじゃないでしょうか。

・・・というわけで、これが私の経験からまとめたしろうとレコーディング方法というのがこんな感じです。なんせ見よう見まねと独学によるものなんで、もしかしたら玄人なら誰でも知ってる重要なことが抜け落ちてるかもしれませんけど、そういうのは一生知らないまま過ごせば問題ありません。

こうしてテキストにしてもこんだけの分量ですから、やることはそこまで難しくないにしてもけっこう手間はかかります。

いったんレコーディングが終わると「ああ大変だった、もう当分やりたくない」と毎回思いますが、面白い作業なのでしばらくするとまたやりたくなります。時間をぜいたくに使った楽しみだと思います。

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