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−聴色− 「先生も、あなたの何分の1か苦しい」

ぼくは、小中高と真面目な学生時代を過ごした。

その真面目がたたって、高校3年生の時に不登校に片足を突っ込んだ。
舟木一夫もびっくりだろう。

(そのときの話はこちら↓)


3回目に学校を休んだ次の日の放課後、担任の先生にお呼び出しされた。
教室には先生とぼくだけ。

「何が苦しいのか、教えてほしい」

そのときのぼくは、誰も信じられなかった。ぼくの苦しみなんて誰も分からない。話してなるものか。

「あなたが苦しんでいるのがすごく分かる。」
「でも、先生も、あなたの何分の1か苦しい。」

ぼくの目をじっと見ながら、先生は言った。
あ、先生、ぼくのこと、救おうとしてくれてるのか。信じてもいいかな。

ポツポツと、ぼくは話した。
先生は、「うん。うん。」ときいてくれた。

ありがたさと申し訳なさと、いろんな感情が湧き上がってきた。

先生の前で泣くのは、東大に受かった時にしたいと思っていた。
でも泣いてしまった。

先生は「泣くな〜!」と笑いながらティッシュを差し出してくれた。

いつも、プリントを無くした人に、予備のプリントを「1枚3000万円ね」って売りつけるのに。
ティッシュはタダだった。


それから、少しずつ学校を休む頻度は減った。

3月10日、ぼくは東大に受かった。

いろんな先生や同級生が、おめでとうと言ってくれた。
ハグしてくれる人もいた。

でも、ぼくが一番嬉しかったのは、ずっとぼくに向き合ってくれた担任の先生との、無言の片手グータッチ。


先生、ありがとう。
自慢の恩師です。


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【聴色】ゆるしいろ
紅花で染めた淡い紅色。別名「一斤染」。
先生はぼくの気持ちをちゃんと「聴」いてくれました。
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