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音の波に感謝

外は雪が降り始めて、まだ朝10時過ぎなのにどんよりと暗い。でも、意外とこんな日は、外気温はそれほど低くなく、零度前後をさまよっている感じ。なので、家の中も、ストーブに火は入れるけれど、火力はおとなしめでも十分温まるようだ。

不要不急の外出は控えるようにと防災放送が街頭で呼びかけているので、それに甘えて、今日はゆっくりとロフトで音楽鑑賞の日と決め込んでいる。

こんな日は、クラシックが何故か心地よい。普段はあまり積極的にかけるというジャンルではないが、しんしんと降る雪を眺めながら、この静けさに、呼応するように気持ちを落ち着かせてくれるシベリウスの交響曲をかけている。

この季節、北欧の方では、きっとこのような日が長く続くのだろう。妙にシベリウスの曲が、今日の様子にマッチするように思うのである。

そんな中、久しぶりに目の前のレコードプレーヤー、真空管アンプ、バックロードホーンをまじまじと見ていると、こんなに毎日当たり前のようにお世話になっているテクノロジーが改めて不思議であり、凄いなぁと感心するのである。

ターンテーブルが一分間に33.3回転する。その上をレコードという、音の信号(音の波)を発生する溝が回転していて、60倍のルーペでかろうじて確認ができるようなダイヤモンド針が、その溝を撫でる事によって微弱な音楽信号を読み取る。その読み取った微弱な信号は、外部からの雑音、雑信号に汚染されないようにシールドが巻かれた細くて繊細な電気の線を通って、プリの真空管アンプにたどり着く。プリ真空管アンプ内では、レコードから発生する音楽信号は、そのままだと低音が圧縮されているので、まず、高音、中音、低音のバランスをイコライズしてあげる。これがフォノイコライザー回路である。この段階では、まだ信号は微弱であるので、その波をできるだけオリジナル(レコード盤を読んだ時の信号)に混じり気がなく、バランス良く増幅させてあげなくてはいけない。それが、真空管というガラスに包まれた不思議な物体であり、何故か我々を魅了する個性を持った個体の中を通る事によって、オリジナル信号の形をできるだけ保ったままで、大きな波に増幅される。
この増幅というものも、無理やり一気に上げるのではなく、途中、二段、三段と真空管をいくつか中継していくうちに理想的な大きさまで増幅される。
そして、大きな信号の波を作っただけでは、スピーカーを鳴らす事ができないので、その波の大きさをスピーカーの裏側にあるコイルを物理的に動かす事ができるほどの電力に変換してあげる必要がある。
そして、ようやく十分な力を持った音の電気信号がスピーカーのコイルへ届くと微妙に、繊細に動くことによって、それに繋がっているラッパ状の紙(コーン)が、振動して、その微妙な振動が空気を揺らして人が聞こえるような音を発生させる事ができるという事になる。

技術として、大まかな事は理解しているつもりだし、そんな真空管アンプ回路を自作している。実際に目の前で、本当のコンサート会場を疑似体験しているように、滑らかで切れ目のない心地の良いオーケストラの音色を聴く事ができる事を体験している。

あたり前のことなのに、でも、改めてその事実が不思議に思えてくる。

そんな事を考えながら、音の波という自然現象が我が人生の安らぎと幸せにとても役立っている事を認識し感謝をせずにはいられない。