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だって、春だもんね

遠い日に、僕は憧れを抱いていた。
決して洗練されていたわけではない。けれども惹きつけられる。
そういう文章を日々綴っていた。
今の自分があの人に近づけているのかは分からない。
本当にあっけなくその人との連絡は途絶え、しばらくすると近親の方が逝去の知らせを投稿した。
その文章は、過去に綴られたすべての言葉よりも機械的で淡々としていた。
そこで読む文章のどれよりも衝撃を受けたのは何の皮肉になるだろう。
297日。
僕は最初から読み返した。

ーーー

毎日文章を書くことの意味を、ここでは多くの人がそれぞれの視点から語り、そして実践している。
だから僕が改まって話すことはない気がするけれど、それでは味気ない。
結局は自分との約束なのだ。
毎日書くことだけではない。
日常におけるあらゆるものは自身の選択と約束によって紡がれていく。
そうやって過去の自分が積み重なって、今となり、そしてこの先の自分を形作っていく。
良くも悪くも。

ーーー

何かが劇的に変わるとは思わなかった。
けれど何かが変わると思った。
noteを始めた時、あの人が続けた日数だけと決めた。
297日。
書くものは何でも良かった。
けれど読み返せば今はいない人たちを思い返しながら書いたものが多い。
「自分のために書いている」
この意識が常に念頭にあったし、何度か言葉としても出した。
少し、いやかなり、自分に酔っていた。
297に届くまでは淡々とやって行こうと思っていた。
けれどそうはならなかった。
僕は1人で黙々とやるのが少し苦手みたいだ。
何かが劇的に変わるとは思わなかった。
けれど僕の意識は劇的に変わった。

noteを始める以前から書いていたので、ここでも企画物やバトンみたいなものがあることに違和感はなかった。
少し書き詰った時に、気晴らしのつもりで参加してみた。
今までやってこなかったことだったから、当時の僕は結構思い切りが良かったなと今は思う。
最初はあきらとさんの企画だったかな。
そこから僕のnoteでの交流はすごく広がった。
そして誰かと共有して書くという楽しさを覚えた。
他人の作品に触れ、肯いたり、疑問に思ったり、自分なりに咀嚼するようになった。
noハン会というオフ会に参加したり、noteを通じて飲食を共にする友達もできた。
得るものが沢山あった。
僕だけが得てばかりで少し申し訳なく思えるくらい。

今でもトップに固定している記事がある。
『鯨骨生物群集』
これは梟さんの企画に協賛という形で参加させて貰ったものであり、画家のkojiさんとのコラボレーションでもある。
「自分のために書いている」
この意識で書いていた僕が、初めて自分以外のために創った作品。
文章を書くということにかなり独りよがりだった僕は、ここから結構丸くなったような気がする。
昔の僕にこんなことを言ったら、怒るかもしれない。
過去の自分を否定するわけではないけれど
こうして沢山の人と繋がりながら、誰かのために書くということ。
そんなに悪いもんでもないよって言ってあげたい。

ーーー

297日を迎えたとき、やり遂げた安堵と言いしれぬ寂しさがちょうど半分ずつくらい胸を占めていた。
同じ日数を続けたところで、結局あの人になれるわけでもなく、僕は僕のまま変わっていた。
良い変化だったことは間違いないのだけれど、同時に張り詰めていたものがふつんと切れた感覚があった。
変わったといっても、依然として「自分のために書く」というものが主軸にある。
「自分のために書く」
「書きたいものを書く」
じゃあ何故公開するのか。
この疑問が沸き上がってから途端に公開することが恐ろしくなった。
書くことは自分のためだ。
公開するのは自分のためだろうか。
297日で途絶えたあの人はどう考えていたのだろうか。
最後に貰ったメッセージには苦しみが書かれていた。
返事をしたけれど読んでくれたかは分からない。
余計な思考なのかもしれない。
書くことと、それを公開することは違うのかもしれない。
それに答えを出せないまま、297日の更新を終えてもうすぐ1年が経とうとしている。

残念ながら今の僕に誰かを惹きつけられる文章は書けない。
以前池松氏のレーダーチャート式アウトプット診断を受けたときに頂いた言葉が、ずっと残っている。

い〜のさんが「読み手」(読者ともいう)を、深く信じて文章を書いた時、教えてください。

読者を信じるとはどういうことだろうか。
これを念頭に置きながら、また書いて、そして公開してみようと思う。
気分としては初めて文章を書いたときに似ている。
今の僕に誰かを惹きつけられる文章は書けない。
けれど、僕の文章を好きだと言ってくれる人がいる。
目標だと言ってくれる人もいる。
noteの更新待っていますと言ってくれる人たち。
その人たちのために書こう。
何かが劇的に変わるとは思わない。
けれど続ければ変わることを知っている。
今の僕には無理でも、来年か、何年か先には、読者を深く信じて書けるような気がしている。


今日から毎日更新!
というわけではないのだけれど、
少しずつ頻度と深度を上げていければいいなと思っています。
これから世間的にもどうなるかわからないけれど、
読んでくれる皆さん。
クールで知的でミステリアスな僕を、改めてよろしくお願いします。


貴方のその気持をいつか僕も 誰かに返せたらなと思います。