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強いもの批判には”笑い”が有効。「ロニー・チェンのアメリカをぶっ壊す!」(2020.6.4)

Netflixで「ロニー・チェンのアメリカをぶっ壊す!」見ました。
めちゃくちゃ面白いです・・・!!!

この映画(コンテンツ)は、映画評論家・町山智浩の「アメリカの今を知るTV」(BS朝日)で知りました。
(ちなみに週刊文春の彼のコラム「言霊USA」、大好きです! 日本のニュースではなかなか分からないアメリカのトリビア、トレンドがわかります!)


▼スタンダップコメディって??

ロニーはマレーシア育ちの中国系スタンダップコメディアン、だそうです。

この「スタンダップコメディ」っていう職業、私はあまり聞いたことがなく、日本でもそこまでいないのかなと思ってしまいますが、、、なんていうんだろう、一人しゃべくり漫才みたいなものです。マイク1本、ピンでただひたすらしゃべる。
ネタは、政治や現在の流行ってるものの諷刺。
ビシっとスーツで決めて、マイク1本でマシンガントーク、何百人もの観客を大爆笑させる。すごい芸です。

ちなみに「ぶっ壊す」は原語だとdestroy。
これには「大爆笑をかっさらう」という意味もあるんだとか。

ロニーのしゃべりは、日本人の感覚からすると、かなり「ブラックユーモア」で、毒が強く、結構聞いてて気持ち悪くなるというか、ざわざわするところもあります。アメリカのお笑いのツボと日本のツボは随分違うからかもしれません(このくらいしないとアメリカ人は笑わないのかも)。

逆に、日本でこのネタをやったら誰も笑わないと思う・・・。面白いけど笑っていいのかわからなくて、周りを見て、多分笑わない。笑うか笑わないかくらい自分で判断しろと言われそうだけど、ほんとに日本人って、周りに合わせるから・・・。

でも、ロニーは、「世界がより良くなるように」と思ってる。ただ面白がってるだけじゃなくて。
これ言うの野暮の極みだと承知で言いますが、「アメリカ人、お前らヘンだぜ、現状を認識しろよ、そしてもっと良くなれるんじゃないの?」という感じが、どこかにある気がする。

ウーマンラッシュアワーの村本が政治ネタやったこともあるけど・・・あれはただ「真実」を早口でぶちまけてるだけで、「芸」ではない(早口なのと「日本では言っちゃいけないことを言った」感が面白いだけだと思う。すごい勇気あると思ったし、すごい風穴開けたな、とは思う)。

ロニーは、もっと皮肉で、もっとブラックで、もっと切実で、ビビッてない。というか、村本がビビらないといけない現状が結構ため息なわけですが。

やー、Netflix見れる人、ぜひ見てほしい。


▼爆笑するアメリカ人と、日本の中高年の共通点

見た目完全に「アジア人」の彼が、
一切笑顔を見せず、バサバサとアメリカの「おかしな」ところをジョークにしてゆく。ぶった斬る。
それを聞いて大笑いするアメリカの人々・・・。

この空間は何かに似てると思ったら・・・
そう。

綾小路きみまろ。
(だいぶ雰囲気違うけど)

綾小路きみまろに斬られてる中高年のオバちゃんオジちゃんは大喜びだ。
若い頃、それが不思議でならなかった。

この人たちは、バカにされてるのにそれが嬉しいのか?
ドMなのか???

うちの母親も、きみまろ大好き。
母は、私が学生時代、非常に厳しくて、常にピリピリして笑うこともなく、プライドが高くて馬鹿にされることが大っ嫌いだが、きみまろのCDには、アハアハ笑う。
初めてその光景を見た時、怪奇現象だと思った。あの母親が?!
人は年を取ると、「バカにされて喜ぶ」ようになるのだろうか? 

・・・たぶん、そうなのである。

バカにされて、というところがポイントではない。
「本当のこと」というところがポイントだ。

きみまろの「あれから40年」の次に続くフレーズは、だいたいの中高年夫婦に当てはまる、本当のことなのだ。
それを「ホントだわー」と笑うか、
「バカにするな!」と怒るか、
その違いなのだ。
受け止め方なのだ。

芸人には「これはお笑い、でもホントのことですよね?」というスキルが求められ、客のほうは「ホントそうだなあ、痛いとこ突かれたよ」と受け止める器量が必要だ。

おそらく私の母親にも余裕ができたということなのだろう。


▼政治家よ(頼むから)器をデカくもて

このロニーの「コメディ」。
当然、政治家だってターゲットになる。

おそらくヨーロッパには、「権力(王様)を笑いに包んで批判する」という文化が昔からある。
というか日本にもありました(どこの国でもぜったいある)。江戸時代の狂歌とか! 習いましたねー(笑)

ただし、ヨーロッパでは、権力者は「笑い」という体裁で批判されたら大目に見る、真正面から受け止めない、という度量が求められた。
すげー断定しちゃうけど。
リア王(シェイクスピア)だって、道化をそばに置いていたという(未読。おぼろげな記憶)。道化は割とホントのことを言っちゃう。でも、リア王はむしろ「イエスマンの家臣ばかりの中で、ホントのことを言ってくれるのはお前だけ」と思い、道化を必要なヤツと思ってたんじゃないかなー。未読だけど(未読かよ)。
あと「ハムレット」でも、叔父である王を試すために旅の一座に芝居を打たせたりしてましたね。そうやって、権力のやることを、芝居や諷刺で「客観視」しようとする文化があるんだと思う

でも日本は、そういうことすると、お上からめっちゃ怒られる。
もしかしたら、ヨーロッパと東アジアの「笑い」のスタンスの違いなのかな。。。
東アジア(ざっくり儒教的な)文化では、「笑うのは良くないこと」という大前提があるような気がする。。。
ストイック。スーパーインテンス(超真剣)!←この言葉の意味は、ロニーの番組を見るとわかります・笑

で、ロニーも政治家を笑いのネタにする。

 ” 数年前にアメリカに来たんだ
 オバマのアメリカに間に合うかと思って。
 そしたら、なんと、トランプに間に合った!
 まるで、ビヨンセのチケットをゲットして、
 来てみたらトランプかよ~~!!!!” (意訳)

で、爆笑。

しかし、もしトランプがこれを見て「ケシカラン!」って怒り、Twitterで「ロニーが劇場に出られないようにしてやる。笑いのテロだ!」とか言ったら、それはもう国中の笑いものになるわけである。・・・あの人ならやりかねないけど。

我が国の首相なら
これはもうゼッタイ、怒る。
マジ切れする。
彼は自分がどれだけ「滑稽」なのか分かってない。
話逸れるけど、あのサイズ合ってない布マスク、ほんとイライラさせられる(サイズが合ってないことと、それが人をイラつかせることがわからないということは、自分のことが客観的に見られないということで、政治家として重篤な欠陥だと私は思う)。
国会でムキになって反論するのやめてほしい。
それは超絶ダセエことなんだって、誰か教えてやれよ。sigh…。
ママは教えてくれなかったのかしら? 


▼日本国民にはロニーが足りない

日本は「諷刺」「笑いに包(くる)む」という発想が乏しいのかもしれない。
だから、笑いにされると、激高しちゃうし、
民の側も、笑いにするという発想が、ない。
首相も激高しちゃうし、
野党も追及の仕方が通りいっぺん。
常にストレートに批判し、ストレートに反応して怒る。
ただの地獄だ。

何かで読んだんだけど、
ユーモアとか笑いっていうのは
格差を「笑うことで吹き飛ばす」ようなものなんだそうだ。
(すいません、あやふやです・・・)

その本に書いてあったんだと思うんだけど、
例えば、
・金持ちっぽい気取ったおっさんが
・バナナの皮を踏んで
・こける。
・それを「可笑しい」と笑う
つまり、金持ちという上位者が、こけて、庶民が笑うことで、その格差をひっくり返す、バナナですべてが吹き飛ばされて対等になる・・・という意義が、笑いにはあるんだそうです。

なんかこう、皮肉とかアイロニーとか諧謔とか、いろいろ「レトリック」つうものがあるじゃないすか! 
野党は怒ってばかりだ。でも、怒ってるお母さんって、正しいこと言ってても子どもは聞かない。
それと同じで、なんかこう、もっと、面白く追及できないもんだろうか。


▼落語だ・・・!

きみまろより、もっと諷刺を長らくやってきた方々。
それが、噺家(落語家)だと思う。

落語家は、今では伝統芸能で人間国宝もいらっしゃるけど、昔はそんなにステータス高い仕事ではなかったと思う。
でも、それが彼らの誇りだ。
彼らは自ら「噺家なんてぇものは気楽な商売でして、高座からひとつ、ご機嫌を伺います」などと言うが、それは強烈なプライドの裏返しである。
木戸銭もらってようが、もし、マナーがなってなくて周りに迷惑かける客がいたら、見事な罵倒を浴びせて追い出すと思う。

でも、彼らはつとめて、「私たちは吹けば飛ぶようなもので」という体裁をとる。
それは、いざとなったら権力を笑うためだと思う。
権力を笑うためには底辺でいないといけない。
何も失うものがないように。いつでも自由に批判したいものを批判し、言いたいことが言えるように。
でもそんなことはおくびにも出さない。
それが、日本のユーモアであり、「粋」なのである。


▼罵倒を磨け

常々、日本語には「罵倒語」が少ないなあ、と思っている。

だって、人を罵りたくなった時に
「バカ」
「アホ」
「クズ」
後は「外見」と「事実」である。
「ジジイ、ババア」(事実)
「ブス」(外見、私見)
「デブ、このハゲーーーーー!!!!」(事実+外見)
くらいしか、思いつかないじゃないですか・・・?

ただ、江戸時代には「豊富」にあったようです。詳しくは志ん朝師匠の「大工調べ」をお聞きください(笑) 

あと、これはまた別途書きたいけど、なぜか罵倒語の中に「戦時中の用語」というジャンルがある。「非国民」とか「売国奴」とか・・・。

英語には無数にある。
Fワード。マザファッカ―。bastard。実際使うか知らないけどscumbag(クズ袋)などなど。
訳す日本語が足りないくらいだ・・・。

日常の言葉が漂白された結果、インターネットでは本音と称して、貧相な言葉の殴り合いが多発している。醜い。

もっと皮肉を磨こう日本人、と思う次第である。
国会も丁々発止となると思うけどね。
それには、まず、国会から役人言葉を抜かないといけないけど。

そして批判される側も、ガチで受け止めず、ユーモアで返しましょう! 



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