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商店街を盛り上げるメディアを作りたい! その切り口やいかに…!?

金沢の町を商店街から盛り上げたい!

2015年春。待ちに待った北陸新幹線の金沢開業で、金沢の街は大いに賑わっていました。

特に兼六園や近江町市場、ひがし茶屋街といった代表的なスポットには観光客が殺到し、文字通り身動きが取れないほどに。

その活況ぶり、街の発展を肌で感じ、誇らしく感じたものです。

一方、地元密着の商店街は、一部を除いて“新幹線バブル”からはほど遠く、存在感は薄くなるばかり…。

「有名じゃないけれど、愛されるお店はたくさんある。このままではマズイ。なんとかできないものか…」と、地元大好きなメンバーでいろいろと話し合う内に、

「やっぱり町の活気は商店街からだよね!」
「商店街の魅力をまとめた冊子を作って、地元の人に見てもらおう!」

そんな感じで話がまとまりました。

当時、いわゆる観光情報誌やグルメ本はたくさんありましたが、商店街にスポットを当てたものは無かったはずです。

そうと決まれば、まずは商店街の選定から。調べると、金沢には40ほどの商店街がありました。「そんなにあるんや…」というのが正直な感想です。長年暮らしていても、この程度の認識なので、そりゃ廃れるわけだ…。

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話し合いの結果、歴史も長く、人気店も多い柿木畠商店街を取り上げることにしました。金沢のド真ん中に位置する柿木畠で成功事例を作れば、ほかの商店街への波及効果も大きいと考えたからです。なんといっても、学生時代からお世話になっている老舗の飲み屋も多く、親しみやすい。

冊子づくりに重要なのは、素材(情報)をどのように料理(編集)するか、です。つまり「切り口」が重要。同じ素材を使った料理でも、和洋中では仕上がりが全く違うのと同じです。

周りの人に聞くと「あの店、有名だけど行ったことないんだよねー」という声がいくつも挙がりました。

柿木畠には30年以上愛される老舗の飲食店も多いのですが、実は行ったことが無い店の方が多かったりします。なぜか?

「店主がどんな人か分からないと、入るのをためらう」。

そうなんです。料理の種類や値段、感想は情報誌やネットに載っているのですが、店主の情報は少ない。お店を選ぶときは、味はもちろん、心地よく食事を楽しめるかどうかがかなり重要なので、店の雰囲気を左右する店主の人柄は、味や値段に匹敵する「良し悪し」の判断材料なんですよね。

というわけで、「人(店主)にスポットを当てた冊子にする」ことに決めました。

そして完成したのがこちら!


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その名も柿木人(カキノキスト)!

40人もの店主を取材し、お店への思いやポリシーはもちろん、店を始めたきっかけから趣味・特技、学生時代の関心事、時には生い立ちまで、人柄を余すところなく紹介する一冊となりました。お店紹介というより、店主図鑑ですね。なかなか「濃い」仕上がり。

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もちろん、伝統のお祭り「水掛け神輿」や「カレー博」の紹介記事やラーメンくらべなどの特集も随所に入れ、商店街の魅力をトータルに伝える内容になっています。

おかげ様で、完成した冊子は大好評。「いい本を作ってくれてありがとう」と店主のみなさんに喜んでいただけました。こちらこそ楽しいお話をありがとうございます!

冊子は商店街各店舗のほか、観光案内所や近隣の病院、理容・美容院、銀行などにも設置し、待ち時間に手に取って見てもらえるようにしました。

商店街店舗では無料配布したため、あっという間に在庫が無くなり、急いで追加納品したことも。お客さんが持って帰って知人に渡し、その人が新規客として来るという好循環も生まれました。

集客だけに留まらない効果

とある店主は、「いつものように近江町へ買い物に行ったら、『ダンナさん、◯◯◯の社長だったんやね。本で見たわ』と声を掛けられたよ」と笑顔で話してくれました。このように、周囲の人との会話のきっかけとなったり、店主同士のインナーコミュニケーションを生む潤滑油となったりと、単なる集客効果だけに留まらない、良い結果を生むことができました。

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以後、ほかの商店街から「うちでも作ってほしい!」と声が掛かり、毎年のように制作のお手伝いをさせていただいています。

これらの経験から分かるのは、店の個性は店主そのものということ。同じ料理・商品でも、扱う人が変われば全然別モノです。だからこそ、個性の集合体である商店街はオモシロイ!

いやぁ、店主の話を聞くのって、ホントにいいものですよね(淀川長治風に)。

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