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負動産?~収益不動産を相続して共有名義とする

先日、収益不動産を共有名義で相続したと知人から聞きました。詳しく聞くことはできませんが、共有名義の不動産の管理は悩ましいだろうなと感じました。もし私が知人にアドバイスしてあげるなら、何を話すか。
気になりましたので、架空の類似事例をもとに考えてみました。

(事例)
収益物件(築古の戸建て住宅2棟と底地)を遺産分割により3人の子が1/3ずつ遺産分割した。

1 相続手続き・権利関係

相続財産の分割は、遺言書か遺産分割協議書により決定します。
遺言書があれば遺言書で決定します。
遺言書がない場合は、相続人が遺産分割協議書により遺産を分割します。

ポイントは遺留分です。
遺留分とは、一定の相続人(配偶者、子、親)に最低限受け取ることができる遺産のことを言います。
遺留分は配偶者1/2、子1/2、親1/3です。
遺言や遺産分割協議によって決定した分割割合が、遺留分より少ない場合は、差額分の遺留分請求ができます。
ですから、遺産分割協議をする場合は、遺留分を考慮して分割割合を決定した方が良いです。

また、事例の場合は、複数の人が不動産全体を共同で所有している状態す。この状態を「共有」と言います。
3人の子が1/3ずつ不動産の所有権を持っています。個々の所有権を「持ち分」と言います。割合1/3を「持ち分割合」と言います。

遺産分割割合が決まれば、相続登記をします。
相続登記とは、登記簿上の所有権の変更です。
事例の場合は、亡くなった親から3人の子に変更します。
世間では、相続登記をしていないケースがたくさんあるようですが、正当な所有者と権利を主張するために、相続登記はしておいた方が良いです。

2 収益不動産の管理

代表共有者を決めて、その人が不動産の維持管理、家賃の徴収などをすることが多いようです。不動産に住んでいる共有者がいると、その人が代表共有者になるようです。
その他の共有者は代表共有者から持分の賃貸収入を受け取ります。
共有であるがゆえに揉めごとに発展することもあるようです。
問題点を考えてみます。

3 不動産の収益は、持ち分割合により分け合う

遺産分割によって3等分に分け合っていますので、揉める元がいくつかあります。

1人が代表共有者となって、不動産の維持管理をしますが、
収益を、いつ、どのように分けるかが揉めるもとになります。

代表共有者は、不動産の修繕費や固定資産税の支払い、賃借人からの苦情・要望対応などを行います。
しかし、持ち分割合に応じて純収益を分割するのであれば、代表共有者は割に合いません。維持管理に使った時間や労力、管理費用などについて特別な取り分があっても良いのではないかと思うはずです。
分配方法をあらかじめ書面で決めておかないと揉めるもとになるます。

例えば
年間240万円の家賃収入(月20万円)
年間修繕費10万円
固定資産税20万円
(収益-費用)=240-(10+20)=210万円
分配は 240÷3=80万円ではなく、210÷3=70万円になると思います。
しかし、「修繕は必要なかった。おかげで取り分が減った。」とゴネル共有者がいると、揉めるもとになります。
経費の支出は事前の根回しも必要なケースもあるかもしれません。

代表共有者が維持管理に費やして時間と労力の取り分の有無についても、事前に取り決めておく必要もあります。

また、その他2名の共有者は代表共有者から持ち分割合に応じて、不動産収益を受け取りますが、いつ、いくら受け取るかを明確に取り決めをしておいた方が良いです。

例えば
「毎年6月と12月の25日に指定口座に振り込む」
など具体的に決めておくと良いです。

4 不動産の大規模改修や売却処分をする場合に、共有者全員の同意が必要

不動産に手を加える方法は、保存行為、管理行為、変更行為の3種類あります。
保存行為(修理や不法占拠者の明け渡し請求など)は、共有者一人でも行うことができます。
管理行為(不動産を人に貸すことなど)は共有者の過半数の同意があれば行うことができます。
変更行為(増改築や売却処分)は共有者全員の同意が必要です。

増改築や売却をする場合に共有者全員の同意が必要になります。
現状を変えたい場合に、一人でも反対者がいると揉めるもとになります。

例えば、
代表共有者が、維持管理に労力がかかり、かつ費用を差し引くと収益があまり多くないので、売却処分したいと提案したとします。
しかし、共有者の一人が、古家の賃貸住宅は高く売れないので売らずにこのまま不動産収入を得たいと反対をしました。
不動産は売りに出すことができず、共有代表者は割に合わない労力を一人で抱え続けなくてはいけません。

代表共有者が建物の老朽化によって雨漏りなど修理費用が膨らみ、収益が上がらないので、改築を含む大規模な修繕をしたいと提案したとします。
しかし、共有者の一人が改修費用のために、収益が減って自分の取り分が少なくなると反対しました。
不動産は大規模改修をすることができず、代表共有者が修繕に追われる日々を過ごし続けることになります。

共有者間で意見が対立すると、揉めるもとになります。
不動産相続を共有する場合は、将来の在り方を事前に取り決めておくことが揉めないもとにであると思います。

5 賃貸不動産を売却処分をする場合は、高く売れない

賃貸不動産を売却する場合は、高く売れないと想定するのがよいでしょう。
権利関係は、土地と建物を所有して、建物を貸し付けていることが多いと思います。
普通借家権によって賃貸借契約を結んでいる場合は、正当な理由はない限りは貸主から解約の申し入れはできません。
借主の権利はとてつもなく強いんです。
したがって、借主が住んでいる限り建て替えは不可能ですから、売却後も現状のまま運用するしかありせん。対象物件は人が住んでいる古家ですから、高く売れません。

あまり高く売れないので、売却に反対する共有者でてくるのではないかと思います。

6 相続後にアドバイスするとしたら

①共有不動産は、揉めるもとがたくさんあること。
②数十年後に3人の子が、それぞれの子に持ち分を相続をした場合は、権利がさらに複雑になる可能性があること。
③できれば自分たちの代で売却処分をしておいた方がよいこと。
④売却処分するまでは、持ち分を他人に譲渡しないこと。
⑤売却処分までの間の管理方法(修繕計画や分配方法など)を細かく取り決めておくこと。
をアドバイスします。

ただし、③④は共有者(相続人)が決めることです。もし売却処分しないなら、長期の修繕計画や収支の計算を行って共有者の間で了承を得ておく必要があります。

兄弟仲良く、しっかり話し合う。これが揉めない秘訣かもしれません。天国の親御さんもそれを望んでいることでしょう。





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