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経営メンバーとのやりとりのコツって、補助者時代の先生とのやりとりにヒントがあるかもしれないと思った話

さて、先月までは わかほう祭りでしたが、今月からは今まで通りの「2年前の自分に届けるnote」に戻ろうと思います。
実は一人法務だと、ある程度業務が進むと経営メンバーと直接やり取りをする必要が出てきます。ただ、色々な情報を受け取って多くの重要な判断を下す経営メンバーに対して、適切な情報を伝えることは、正直とっても難しいです。私もずっと試行錯誤してきた訳ですが、最近ちょっとヒントがあるかも?と思ったこととそれにまつわる反省があるので、それについて書いてみようと思います。


経営メンバーからの質問回答への難しさ

経営メンバーと法務が直接やり取りする場合、多くは「中長期的な観点」や「今後の経営において重要になってくる点」についての法的レビューが多いのではないかと思います。つまりそこでの情報提供は、会社にとって結構重要な判断に直結するような、大事な情報提供になります。

私の場合、自社で初めて法務になったこともあり、当初はレビューを依頼されても「どういう情報を/どういった粒度で/どういうまとめ方をして」渡すべきなのかが、全く分かりませんでした。また、「ベンチャー企業の経営層」という人たちと接するのも初めてだったので、え、役員の方に…法務の質問された…どうしよう…どうしたら良いんだろう…というパニック状態に近かったことを覚えています。。。

序盤に一通りしっかりと失敗したのですが、最初は、本来法務としては「選択肢」をしっかりと渡して判断を委ねるべきですが、勝手におすすめ順のような形でまとめるという失敗をしました。今までの仕事では「選択肢+自分なりの優先順位」をつけてから相手に情報を渡していたこともあり、その方法を踏襲した結果「優先順位を法務がつけてくることで、フラットな目線で判断ができないから、やめてほしい」というリクエストをもらい、優先順位づけは法務がやるべき仕事ではないということが分かりました。

その後も失敗は続きます。そのリクエストを受けて、いわゆる「あてはめ」は経営メンバーにやってもらって、自分は法令の解釈だけを正確に伝えようというスタンスになったのですが、そうすると逆に「これは自社のビジネスに例えるとどういうことなのか?もう少し具体的に教えてほしい」というリクエストが来てしまい、やはり伝えている情報が経営メンバーが求めているものには及びませんでした。

今振り返ると、経営メンバーが「なぜその情報を欲しがってたのか」「その情報を使って何がしたいのか」を擦り合わせずに、まず調査に着手していたので、その辺はもっと事前にコミュニケーションを取るべきだし、温度感を擦り合わせてから始めるべきだったと思います。一方で、事前に「どのくらいの粒度の情報がほしいか」「XXの件と同様の検討で良いか」等を確認できるようになった今でも、まだ正直試行錯誤している点もあります。

一般的に、ビジネス上は「事実」と「解釈」を分けて伝えるべきだと言われますが、「こういう数字が出た」のような形で事実を伝えることが法務は難しく、例えば書籍に載っている情報でも「事実」なのか、その先生の「独自の意見」なのかは判定が必要な場合もあってはっきりと分けるのは難しく、ただ本当に一切の解釈を含まない「事実」だけを羅列すると法律に詳しくない人には意味不明な情報になってしまいます。最近は「事実」「解釈」「自分の意見」という三段階を意識していますが、いまだに正解はわからず、質問対応には苦手意識というか、伸び代があるなぁと思っています。

その上に一人法務なので「この伝え方で本当に良いのかな…」「自分の伝え方が悪くて、事業や経営に悪影響及ぼしたらどうしよう…」という不安もどうしてもついて回り、さらに自分の手を遅くしていきます。う〜む、難しい。

とはいえ悩んでばかりもいられず、日々届いた質問には回答するのですが、少し「掴めた」と思えた時に参考になったのが、司法書士事務所時代の司法書士の先生とのやり取りでした。

自分よりも稼働単価の高い「士業の先生」とのコミュニケーション

私は補助者(資格者ではないアシスタント)だったので、士業の先生と一時間あたりの稼働単価が倍近く違います。そのため、事務所の経営としても顧客のためにも「補助者が適切な前捌きをして」「士業の先生が的確な判断は解釈をする」ことは非常に重要です。前捌きしすぎると士業の先生の判断が濁り、前捌きが少ないと士業の先生に余計なコストが発生し、場合によっては報酬に見合わない稼働が出てしまいます。(司法書士事務所は登記の種類でお金をもらうので、先生が稼働しすぎると赤字になる場面があるんです…)

そうなってくると、先生ごとの癖や好みを覚えて、その先生が満足する前捌きをする必要がありますし、もっと言えば先生が「これは自分で調べたい」と思っても、採算が取れなくなるリスクがあるなら、補助者である程度下調べをしておくべきです。そのためには、各先生方の仕事の癖や経験を知り、その人に合ったサポートを考える必要があります

これって、経営メンバーにも同じようなことが言えるんじゃないかと思いまして。当時は特に「どういう人かわからない」=ベンチャーの経営層みたいにとても大きくまとめてしまっていたのですが、相手もそれぞれの人間なので、ちゃんと相手に合わせて考えるべきだなと思いました。

例えば、「昔法務がいなかった時期に契約書レビューしていたよ」というメンバーと、「全く法律が分からない」メンバーだと、提供する情報の渡し方が異なります。もちろん、相手が分かっているだろうという前提で動くのは危険なのですが、情報は揃えるとしても、『この人は詳しいから、要点を先に書いて、後に詳細を書いても、全部読んでくれるだろう』『この人はドキュメントを読み飛ばすだろうからMTG入れよう』等の伝え方での工夫ができ、それによってより良いリスクヘッジができます。

また、士業の先生方は案件を複数抱えており、基本的に忙しく、数時間ごとに全然違う案件に対応していたりします。そのため、当時は「あの案件」とか「例の設立の件」とか指示語を使うことは御法度で、「XXさんから依頼されているXX登記で、XXをどう記載すべきかという点」のように面倒でも相手がすぐに思い出せるような形の情報で渡していました。また、相手から入れられたMTGであっても、ある程度概要を聞いて下調べをしたり、叩き台を作っておいて、0から始めないようにしていました。

この辺りは「圧倒的に忙しい相手」という共通点があるので、経営メンバーとのコミュニケーションでも使えるかもしれないということで、例えばSlackのスレッドの途中だとしても「XX会社さんとのNDAの件」のように要件を省略しないとか、MTGには白紙で臨まないとか、余裕がある時には工夫するようにしています。忙しい人からなるべく早くレスをもらいたい時には、こういった小さな工夫も有効なんじゃないかなと思います。

基本を見失わず、過去の引き出しをもっと上手く使いたい

結局のところ、「相手が知りたい情報を伝える」「事前にニーズを把握してから動く」「相手に合わせて(伝える内容ではなく)コミュニケーションの方法を変える」という、ビジネスの基本を忘れないようにしようという話なのかもしれません。役員!株主!と聞くと最初は恐縮してしまうのですが、基本は大事だからこそ基本なのかもしれません。

一方で、普通の同僚と違うのは「相手が忙しく、かつ単価が高い(これはちょっと適切な言葉ではないかもしれませんが、経営層の時間のほうが貴重であることが一般的なので、あえてそのまま使っています)」という前提でコミュニケーションを工夫する余地があるという点でしょうか。

私の場合、当初は経営メンバーから都度都度フィードバックをもらって、ちまちま改善をしていたのですが、ある時に自分の引き出しに合った「先生とのコミュニケーション」という段を空けたら、急に視界が開けた感じがしました。その時点から、経営メンバーからもらう「改善点」も減っていったような気がします。

過去の経験に依存するのは良くないですが、社会人生活も10年になるので、法務では初見でも他の職種では乗り越えた壁もあり、自分が思っているよりもその知見は法務の手助けになるようです。今後も新しい壁にぶつかったら、真っ先に手探りで進み始めるのではなく、一旦立ち止まって過去の引き出しを真っ先に見返す癖をつけようと思った一件でした。

最近社内で写真の撮り方講座をやった時の、モデル🦈です笑

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