一人法務の醍醐味って「失敗」だったりします?

最近のポケモンって、控えにいた子でもお裾分けのように経験値が少しもらえるんですね。「自分が戦闘してなくても、チームとして経験値がもらえるシステム」って、同じ職種のメンバーが複数人いる場合に似てるなぁみたいなことを新年早々考えていたので、ちょっとnoteにしてみたいと思います。

なお、最後にプレーしたのがクリスタルで、それ以降は旦那さんがYouTubeで配信を見てるのを横目で見てるくらいなので、前提のゲーム知識が誤っていたらごめんなさい。

簡単な自己紹介

最初に簡単に自己紹介させてください。LAPRASで法務部門の責任者をしています、いいだです。LAPRASでは法務全般にプラスして、働く環境づくり、新入社員オンボーディング 等 興味のある仕事を欲張ってやらせてもらっています。サメが好きでお調子者な、一人法務担当です。

書籍じゃ手に入らない「経験」の母数の差

リモートワークするアマビエの画像 なんてのがあった

実は1月に一人法務のセミナーを任せていただけることになり、改めてレジュメ等を作るために「一人法務」というものについてひたすらに思いを寄せていた年末年始に、考えていた話を書きます。

まず前提として、法務に必要な知識って、結構書籍で手に入ることが多いと思っていて。他の職種と単純に比較はできないのですが、職種固有のスキルに「業務の中で身体で覚えるもの」と「書籍等で体系的に学ぶもの」があるとすると、法務って結構後者のバランスが多めなんじゃないかと思っています。

その一方で、書籍で必要なスキルが全部手に入るのであれば、「一人法務」は単にリソース不足が中心の話だけど、実際はそうじゃない。「一人法務でも成長する方法」が質問でよく出てくることからもわかるように、「業務の中で身体で覚えるもの」≒「経験値」が、複数人と一人では差がつくんじゃないの?というのが、やはり一人法務の人が行き着く悩みなんじゃないかと思っています。(もちろん、リソース不足という話もあるけど)

そうなった時に、その「経験値」って何だろう…って考えてちょっと結論はまだ出てないのですが、前職の士業事務所の時と、今の一人法務で圧倒的に違うと感じるのは「グラデーションがあるものの落とし所」に関する知見だなと感じます。いわゆる「温度感」とか言われるやつですね。

司法書士事務所にいたので登記で例えますが、法務局から補正連絡が来た時に、それが「致命的」なのか「リカバリー可能なミス」なのかは、過去に同じ失敗を経験した人がいればすぐに分かる。でも、所内で誰も経験がないと、対応が法務局の人に言われるがままになったり、手探りの対応になってしまう。

企業法務で無理やり例えると、例えば契約書にびっしり指摘が入ってきた時に、どの条項を譲ってどの条項は譲ってはいけず、どの程度の返しをすべきなのか。お互いに折り合わない場合に、最終的に折れても良いのか、折れるくらいなら契約しないほうが良いのか。そういう「勉強で結論が出ないもの」については、「経験から結論を出す」しかなくて、その経験の母数が「1」になるのが、一人法務の怖さ(とリスク)の根源になるんじゃないかな?と思っています。

「経験値が他人にも入る」システムの良し悪し

ここで冒頭の話に戻るのですが、士業事務所時代って誰かが失敗したり、知見を得たりすると、所内で共有があったんですよね。それによって、自分事とまではいかないけど、自分がしてない経験の経験値がちょっと入る。これが、最近のゲームのやつっぽいなぁと勝手に思ったという訳です。

そう考えると、昔のシステムより今のシステムの方がたくさん経験値が入りそうだし、レベル上げ楽そうだし、あえて昔のシステムの縛りでやってる私(一人法務)って何なんだろうな…と思ったんですが、現実はゲームみたいに上手くいかなくて、自分が経験していないことの経験値って、そんな簡単に自分に入って来ないんじゃないかと思っています。

思い返せば、士業事務所時代に「誰かが過去に失敗したから知見があって、自分が失敗した時に一命を取り留めた」みたいな案件って結構記憶があって。これって確かに母数が多いおかげで助かってはいるものの、「失敗」自体は繰り返してるんですよね。本当は他人の失敗から組織全体が学んで、チーム内で同じ失敗を繰り返さない方が良いんだけど、やっぱり自分がした失敗と他人の失敗は同列には扱えなくて、他人からもらった経験値はちょっと薄くなるんじゃないかなって。

そしてもう一つ、一度も戦闘に出なくてもチームにいるだけで経験値が上がったとして、ゲームだと当然その子が初戦闘に出ても戦えるわけですが、実際にはそんな上手くいかなくて、誰だって初回はやっぱりちょっと怯むじゃないですか。だから、現実には「戦闘に出ないと得られない経験値」みたいなものがあるんじゃないかと思っています。

そうなると、一人法務は「全部の戦闘に自分が出ていく」ことで圧倒的に経験値が積みやすいし、失敗が全て自分に返ってくる分、経験から学ぶことも多い。もちろん「自分が戦闘で負けると会社が負ける」という致命的なシステムではあるので、そこはリスクヘッジしながら進む必要はありますが、個人の「経験値」としてはそんなに悲観する必要はなく、かけたリスクと負った責任と抱えたストレスの分だけ、しっかりと自分に経験値が貯まる道として、メリットもそれなりにあるんじゃないかと思っています。

個人的にはあの胃のひゅってなる感じとか、週末もずっとぐるぐる考えてしまう感じとかがすごく辛いので、あまり失敗はしたくないのですが、とはいえ一人法務の醍醐味って案外「自分で失敗できること」だったりするのかな?と今は思っています。

一人法務でも、他人の経験値が欲しい

このこはアマビエの仲間らしいです

という話を旦那さんにしたら「最初はパーティーの仲間から経験値をもらって成長して、ある程度場数踏んだら一人で戦闘したらベストでは?」というご指摘を受けて、まぁそれはそうだよねと思いました。

とはいえ私のように「経験が浅いけど一人!」という状況の方もいる訳なので、「一人だけど、他人の経験値を貰いたい」「経験値をもらう前に一人でひんしになるのは避けたい」場合はどうしたら良いのかな…というのも考えてみたいと思います。

これも色々考えたのですが、やっぱり、顧問の先生の知見を借りることが一番なんじゃないかと思います。専門家を頼りつつ、完全に任せて放念してしまったら自分に入る経験値が減るので、しっかりと関与する。この、頼る部分と関与する部分の温度感すら分からないのでまたそこも難しいのですが、まずは顧問の先生に自分の実力を正直にさらけ出して全力で頼って守ってもらいつつ、少しずつ関与する部分を増やしていけば良い。弁護士の先生は自分以外にもクライアントがたくさんいらっしゃるわけで、いわば「大人数パーティーの知見を集約した」ような経験の蓄積がある味方がいるということで、もちろん予算の許す限りですが、素直に頼りつつ進めるのが一番良いんじゃないかなと思います。

あとは社外で知り合いを作るとかクローズなコミュニティに入ることでヘッジする部分もあると思いますが、通常ならともかく切羽詰まった状況の時は、社外にはかけらたりとも出せない問題と向き合う必要があるので難しい点もあると思います。とはいえ、「調査時間を短縮する」「勉強の最短ルートを教えてもらう」「一緒に勉強してもらう」「意見を聞く」のように平時に寄り添うところとしては非常にありがたいものなので、本当に最後の最後に頼るべきものではないことは認識しておきつつ、普段の勉強レベルでは積極的に活用すべきなのかなと思います。

あとは、たくさん失敗するためには、同じ失敗をしている暇はないので、一度の失敗からできるだけ多く学ぶ必要があると思っていて。1から100までは知れないですが、例えば別のバリエーションにどういうものがあるかも調べておくとか、再発防止を作る際に他の案件にも転用できるような形で考えるとか、過去の失敗も成功もドキュメント化してちゃんと残しておくとか…その辺りは気をつけていることでnote一本書けそうなボリュームなので、どこかでまたnoteにできたらいいなと思っています。

まとめ

・一人法務は自分でやったことが自分に全部返ってくるので、経験値がたくさんもらえて成長しやすくてお得な面もある
・とはいえ経験の母数が1なのはリスクでもあるので、顧問の先生にうまく頼ることでリスクヘッジする
・違う失敗をした方がいろんな経験値が溜まるから、1つの失敗からたくさん学んで、似たような失敗をしないようにしたいところ
・とはいえ理想は、パーティーの仲間から経験値をもらって成長して、ある程度場数踏んでから一人になりたいよね

最後に告知:1/25にセミナーやりますよかったらぜひ

このセミナーを準備するにあたりこのnoteのようなことを考えていて、その後「一人で折れないためには」「より事業にコミットするためには」みたいな具体の話を考えたので、各論はセミナーで皆さんと一緒に考えていけたらいいなと思っております。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

2023年もよろしくお願いいたします。

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