見出し画像

リスさんの美容室

 ひっそりとした森の奥、キノコの形をした美容室がありました。ふわふわのシッポが可愛いリスさんのお店です。

 はじめのお客さんはウサギさん。小さな前足でコンコンコンとドアをノックします。

「あらウサギさん、いらっしゃい。今日はどうしましょう?」

「どうもリスさん、こんにちは。今日は髪を伸ばしてもらいに来たんです」

 そう言うとウサギさんは鏡の前のイスにすとんと座りました。

(うーん、これは困ったな)

 リスさんは、ウサギさんの短い白い髪を見て、どうしたものかと首を捻りました。

 するとそのとき、ドンドンドンと力強くドアを叩く音がしました。

「あらいらっしゃい、ライオンさん。今日はどうしましょう?」

「やあ、リスさんこんにちは。たてがみが伸びて伸びて、前がよく見えなくて困っているんだ。どうか短く切ってくれ」

 そう言うとライオンさんは、ウサギさんの隣のイスにどっかりと座りました。

「わかりました。お任せください」

 リスさんはにっこり笑って、ハサミをチョキチョキ動かしました。ライオンさんの顔を隠すほどのたてがみが、あっという間に短くなっていきます。キラキラ輝くようなそのたてがみを、ウサギさんは羨ましそうに見ていました。

「はい、できました。いかがでしょうか」

「ああ、さっぱりした。リスさん、どうもありがとう」

 隠れていた顔がよく見えるようになりました。キリリとした素敵な顔で、ライオンさんは帰っていきました。

「いいないいな、ライオンさん。わたしも長い髪がほしいなあ」

 ウサギさんが、拗ねたように言いました。

「できますよ」

 リスさんが、にっこり笑いました。それから、切ったばかりのライオンさんのたてがみを集めました。それを、ウサギさんの短い毛先に結んでつけてあげました。

「はい、できました。いかがでしょうか」

「まあ、なんて素敵なんでしょう!」

 たてがみはウサギさんのお尻まで届くほどの長さでした。そのキラキラ輝く髪の間から、ぴょっこり飛び出した白い耳がとっても可愛らしく見えます。

「リスさん、本当にありがとう!」

 ぴょんぴょん跳ねて、ウサギさんが帰っていきました。


 つぎに来たのは、ハリネズミさん。小さな前足でコンコンコンとドアをノックします。

「ハリネズミさん、こんにちは。今日はどうしましょう?」

「こんにちは。あのね、リスさん。ぼくの髪を柔らかくしてほしいんです」

 そう言うとハリネズミさんは鏡の前のイスにすとんと座りました。

(うーん、これは困ったな)

 リスさんは、ハリネズミさんのちくちく鋭い髪を見て、どうしたものかと首を捻りました。

 するとそのとき、トントントンと優しくドアを叩く音がしました。

「あらいらっしゃい、ヒツジさん。今日はどうしましょう?」

「リスさん、どうもこんにちは。暑くて暑くて、たまらないのよ。どうか短く切ってちょうだい」

 そう言うとヒツジさんは、ハリネズミさんの隣のイスにゆっくりと座りました。

「わかりました。お任せください」

 リスさんはにっこり笑って、ハサミをチョキチョキ動かしました。毛がとっても多くて、切っているリスさんの姿が隠れてしまうほどでした。もこもこ柔らかいその毛を、ハリネズミさんは羨ましそうに見ていました。

「はい、できました。いかがでしょうか」

「涼しくて気持ちが良いわ。リスさん、どうもありがとう」

 丸々していた体が、すっきり細くなりました。汗のひいた澄ました顔で、ヒツジさんは帰っていきました。

「ヒツジさんは素敵だなあ。ぼくも柔らかい髪がほしいなあ」

 ハリネズミさんが、うっとりして言いました。

「できますよ」

 リスさんが、にっこり笑いました。それから、切ったばかりのヒツジさんの毛を集めました。それを、ハリネズミさんの鋭い毛先につけてあげました。

「はい、できました。いかがでしょうか」

「わあ、とっても良いよ!」

 毛はハリネズミさんの背中をすっぽりと覆いました。白くてモコモコしたハリネズミさんが動くと、何とも可愛らしく見えました。

「リスさん、本当にありがとう!」

 うれしそうにお尻をふって、ハリネズミさんが帰っていきました。


「どうぞ、また来てくださいね」

 にっこり笑って、リスさんが言いました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?