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米国の「独占禁止政策」の大転換 ~何が大きく違うのか

 昨年来,「世界の経済政策思想」は大きく転換しています.その理由はコロナだけではない.中華人民共和国の台頭への懸念,巨大IT企業への対応は世界の経済政策の常道を大きく転換させつつあります.

 コロナショックに対応して,各国が財政政策についての思考を大転換したことは記憶に新しいかと思います.過去20年(30年)にわたって主流であった均衡財政主義から,必要に応じて財政赤字は許容し得る……というより望ましいというスタンスがかなり浸透してきている.

 そして直近のニュースはこちら.法人税減税競争を回避すること,多国籍企業の「税逃れ」を封じ込めるための国際的な枠組みが大枠で合意されました.麻生財務相は「100年ぶりくらいの歴史的変化だ」とコメントしていますが,文字通りの評価だと思われます.

 さらに財政面ーーつまりはマクロ経済政策を離れても,2021年は経済政策の大きな転換点になりそうです.それが先月(6月15日)のFTC(米連邦取引委員会)の委員長人事.巨大IT企業への規制強化派の急先鋒であるリナ・カーン(コロンビア大学准教授)が委員長に就任することに.さらに,下院法務委員会では,巨大IT企業に対する規制強化法案が相次いで可決されています.
 これらは米国の競争政策の大転換をあらわすものです.その背景に対する一般的な解説は,これまでも/これからも様々なメディアで続けていきますが,本メルマガではその背景となる「経済学における"競争"の考え方」を回顧していきましょう.

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