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実証分析をめぐるメンドイ話

 あーあーあー^^ またこういう「データ」が出てきてしまった.そして相も変わらず「増税のせいで婚姻・出産が減っている」みたいなtweetpostがちらほら...
 計量経済学の入門講義で必ず勉強するはずの「トレンドをもつ変数同士」なわけです.長期的に上昇している国民負担率と同じく長期の下降トレンドにある出生・婚姻の単純な相関とりゃ...そりゃバリバリマイナスなわけですよ.

 例えば...大学進学率と癌での死亡率はともに戦後上昇を続けています.両方+トレンドあるから相関係数もかなり高い.でも両者の因果なんて誰も言わないでしょ? ところが,同様の見せかけ上の相関だったとしても・・・国民負担率と婚姻数みたいな「なんか関係あってもおかしくない」データ同士だとついついトレンド問題が頭から消えちゃうんだよね.

 ついでにこの国民負担率と出生・結婚はトレンド以外にも見せかけ上の相関をつくりやすい関係がある.国民負担率を上昇させている大きな理由は高齢化です.社会保障費使うからね.そして,高齢者が多いと婚姻や出生「件数」は当然減る.元記事が出生率や婚姻率ではなく「件数」を用いているのは書いてる記者さんわかってんじゃないのか^^と疑わせるよね...

 経済的な変数とマクロの出生・婚姻(一国の婚姻率・出生率など)の関係をちゃんとした手法でデータ検証すると「無関係」か「豊かになると出生率・婚姻率は下がる」のどちらかの結果になることが多いです.
 ミクロの出生・婚姻...社会の中で金持ちの方が結婚しやすい/金持ちの方が出生率が高い(これはおおむね正しい)っていう話をマクロの出生率に結びつけることはできません.

・・・と上の話は今日ネットを見ててふと面白い話があったので急きょ挿入しました.というのも元々今日はデータの話をするつもりだったので.以下は週末に書いた予定投稿の内容です^^

 例年,私のゼミでは前期に卒論計画をかため/前期末に利用データを決定/夏休みはデータをいろいろいじってあそぶ(またはデータそのものをつくる)・・・という進行で卒論指導をするのが通例です.

 ゼミ生にとっては初めての本格的な論文執筆です.この手の「自分で何を考えるかを考える」際に大きなハードルになるのが・・・

・因果関係を知る・検証するというのは何をすることなのか?
=「自分が知りたいこと」と「使用データ」は適合しているのか

についてです.ちなみに明治の政経では3年でもゼミ論(政経セミナー論文)というのを書くのですが,こちらはかなり私が介入してこの辺の不整合が起きないように誘導しています.

……というわけで今回のテーマは「筋トレをすると金持ちになれるのか!」についてです(嘘です).


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