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【飯田線各駅紹介】千代駅

はじめに…
私の千代駅の訪問記は「千代駅事件」のページにて掲載しておりますので、このページでは写真を中心に千代駅を見て行こうと思います。

忘れられゆく路線の基盤

 駅員配置駅の天竜峡駅を出発した列車は、いきなり現れるトンネルに吸い込まれる。しばらくしてトンネルを抜けるといきなり眼下には天竜川が広がり、付近に人家は見えなくなった。やがて列車は減速を始め、この駅に止まった。ドアボタンを押すのは私だけ。恐らく車掌氏は、誰も降りないのではと油断していたであろう。私がホームに足を下すと程なくして列車が発車していった。その山々へ響く音がやがて聞こえなくなると、すっかりと静かな空気に包まれた。

千代駅。その駅名から、隣の「金野」と共に縁起の良い駅と言われる。
締め切りすらできない小さな待合室。それでも駅ノートも備え付けられており、人のあたたかさを感じる。
駅にやってきた上り列車。…っと、「禁煙」の文字を敢えてデカデカと撮るつもりではなかったのだが…笑
そしてその列車も、誰も降りず誰も乗らず去っていく…。
駅の全景。緑豊かな中、今にも自然に飲み込まれそうな駅がある。

 ここは飯田市の千代駅という小さな駅だ。その駅名の通り駅の所在地は飯田市の千代地区なのだが、地区の中心部からは距離にして5km以上も離れている。駅からの出入り口は2箇所あるがどちらの道も屈曲しており、外部からの到達は決して容易ではない。それでも当駅からも木々の向こうに見える高速道路が建設されたことにより、当駅付近一帯へのアクセスは容易になってきてはいる。

天竜川までは道なき道を歩けばすぐに行くことができるが、熊の足跡には恐怖を覚えた。
頭上の高速道路の橋、「天竜峡大橋」。たまに車の騒音が響くのが残念。
下段には“そらさんぽ天龍峡”という遊歩道があり、そこからこの付近を見渡せる。

 しかし、これは決して良いことではない。自動車道の整備は人々を鉄道から遠ざけ、集落から離れたこの利便性の低い駅が使われることはますますなくなっていくだろう。当駅の天竜峡駅寄りのトンネルの脇には、今も砂利ホッパートンネル跡が残る。かつて天竜川から砂利を汲み上げ、トンネルの上にある穴からトンネル内の無蓋貨車に砂利を積み込んだ。砂利を乗せた貨車は飯田線の他の区間へ送られ、そこでの建設に役立ったのであろう。駅で列車を待っていると、1人の地元老人がやってきて「秘境駅へようこそ!」と言われてしまった。私を歓迎するつもりでそのようにおっしゃられたようだが、地元民からも「秘境駅」の言葉が出たからには、彼らも「覚悟」はできているのかもしれない。「路線の基盤」とも言えるこの駅の将来は明るくない。次に訪れたときには「この駅を秘境駅と呼ぶ地元民」すらも消えてしまうのではと不安を覚えながら、迎えの列車に乗りこの駅を後にした。

2024.03

多忙な天竜峡駅の一駅隣では、ゆったりとした午後の時間が流れていた。
そして、日も暮れかかった夕方に、迎えの下り列車がやってきた。私と共に、もう1人の地元民も乗り込んだ。

訪問日:
2023年10月28日

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