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ブラウザで簡単・スピーディーにメタバースを実現。伊藤忠インタラクティブのVR空間構築サービス「VR VENUE」

今後、オンラインの仮想空間でコミュニケーションなどを行う「メタバース」が当たり前になるだろうといわれています。伊藤忠インタラクティブ株式会社(以下、IIC)でも、VR空間構築サービス「VR VENUE(ヴイアール ヴェニュー)を開発し、メタバースの領域にチャレンジしています。

今回は「VR VENUE」の企画から開発、運用までワンストップで手がけるアチーブメントデザイン事業部のメンバーに、サービスの魅力や具体的な活用方法などについて聞きました。VRを自社のイベントなどに活用したいといった構想をお持ちの方は、ぜひご覧ください。

◎話を聞いた人--------------------------------------------------------------------
・アチーブメントデザイン事業部 事業部長代行
 兼 創発デザイングループ グループリーダー 川島勇我
・アチーブメントデザイン事業部 創発デザイングループ 土居充
・アチーブメントデザイン事業部 創発デザイングループ 上村恵
・アチーブメントデザイン事業部 創発デザイングループ 河野美紀
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左から川島さん、土居さん、上村さん、河野さん

■低価格・短期間で制作可能。ブラウザからアクセスできるVR空間

――VR VENUEとは、どんなサービスなのでしょうか?

土居:WEB上でのVR空間構築サービス、いわゆる「メタバース」ですね。企業がオリジナルのVR空間を自由に作り、その空間内でアバター同士の音声による会話、資料や写真の投影などができるというもので、営業や接客、イベント開催など、幅広い用途に役立てていただけます。

アプリのインストールは不要で、ブラウザで世界中からVR空間にアクセスできます。制作自体も、これまで各企業が2Dのホームページをワードプレスなどで運用していたのと同様の気軽さで、3DのVR空間を各企業様で簡単に制作したり機能カスタマイズしたりできるのがポイントです。

制作期間は、1〜2週間でヒアリングした後、半月からひと月くらいでできます。WEBサイトを作るようなスピード感ですね。アバターは流行りのゲームみたいな可愛い感じで、20体ほどデフォルトで提供しています。各社様のご要望の新機能開発にも挑戦しているところです。

――活用される場面としては、イベントが多いのでしょうか?

川島:世の中的にはイベント利用が流行っていますね。ただ、僕たちとしては、お客様のホームページの延長線上のような考え方なので、VR空間を自社のものとして持っていただいて、そこをイベントでも情報発信でも自由にご活用いただきたいと思っています。ホームページ制作で、「キャンペーンページを作るのか、コーポレートページを作るのか」みたいなイメージに近いかもしれません。

――他社でもメタバースのプラットフォームはいくつか出てきていますが、VR VENUEの魅力はどんなところでしょうか?

河野:やはりブラウザで体験できるところです。他のVRサービスはアプリのインストールが必要な場合がありますが、ブラウザでアクセスできるVR VENUEではそうした手間は不要です。アプリのインストールというハードルがあると「やっぱりいいや」と諦めてしまうユーザーもいらっしゃるでしょうし、ブラウザでホームページの延長線上のように、よりリアルなVR体験ができるのは魅力的です。

川島:ブラウザで利用するWEBアプリケーションは、アプリよりも導入がスピーディーで、ハードルが低いのも魅力ですね。アプリの場合は、せっかく開発してもプラットフォームの審査に2〜3ヶ月、さらにダウンロードストアにアップされるまでにも時間がかかってしまうので、その頃には企業が当初そのアプリで解決したかった課題が課題ではなくなっているかもしれません。WEBアプリケーションなら審査もないので、導入しやすいですよね。

上村:あとは、低価格・短期間でVR空間を立ち上げられる点も挙げられます。今後メタバースの時代が来て、みんながそこにアクセスするのが当たり前になっていく時代で生き残っていくためには、企業様がまずその世界に入って必要な資産をどれだけ貯めていけるかがポイントだと思います。とはいえ、いきなり多額の投資をするのは難しいですが、私たちのサービスであれば、実験的・短期的な取り組みもライトに実施しやすいと思います。

土居:他には、カスタマイズの柔軟さもありますね。他社ですと現状のプラットフォームの柔軟なカスタマイズはなかなか難しいのですが、当社のサービスは基本構想がワードプレスみたいな世界観なので、今までWEBで開発・運用されてきた様々な機能をVRの中にスピーディーに追加していけるんですよね。「ちょっとこの機能を試してみよう」というご要望にも応えられる開発体制とプラットフォームの準備ができています。

そして、その企業様にとって本当に必要なサービスを、事業展開のストーリーを作って一緒に考えながら伴走できるのも、当社ならではです。

川島:IICはインターネットが普及し始めた当初からWEB制作に携わり、経営に新しいテクノロジーをどのように取り入れるのかという取り組みを長年積み重ねてきました。VR VENUEでもそのノウハウを生かして、導入後にどのような効力を発揮してくるかという視点を、提案時からお伝えできるのが特に強みです。

僕たちは新しいことにチャレンジしようとする企業様を応援したいんです。とはいえ、メタバースは出てきたばかりのサービスで、まだよくわからないまま、「流行っているから取り入れてみよう」などと、メタバースを使うことが目的になって本質からずれてしまっている企業様も少なくありません。僕たちにご依頼いただいたからには、ただのムーブメントではなくて、経営課題に応えるメタバースのご提案をさせていただきたいですね。

■社員のアイデアを具現化。自由闊達な意見交換から生まれたサービス

――面白いサービスですが、どのようなきっかけで立ち上げられたのでしょうか?

土居:きっかけはコロナでした。コロナ禍に入った直後の2020年、緊急事態宣言も発令される中で、当社では案を出し合って新事業の立ち上げを行うことになり、私の企画で立ち上げたのがVR VENUEでした。生活の変化から、非対面の営業や接客が今後必要になるのを見越して立ち上げました。

川島:当時は一人一個ずつ新規事業を考えよう、といった感じでしたね。Zoomの練習も兼ねてワーキンググループで話し合い、楽しく自由に事業を考えていました。打ち合わせもずっとZoomでやりとりしていたので、社員同士「そろそろ会いたくない?」「そういえばVRの時代がもうすぐ来るかもしれないね」とライトな感じで話に上がって、土居さんの考えたVR VENUEを会社に申請したら通ったんです。

ちょうどテクノロジーに詳しいメンバーがワーキンググループにジョインしていて、ブラウザが3D機能になることやその辺りの市場情報がつかめていたということもありましたね。

■展示会、新卒採用、地方創生。VR空間の使い方はアイデア次第で無限大

――VR VENUEの活用事例のご紹介をお願いします。

上村:まずは、コンバースジャパン株式会社様(以下、コンバース様)の事例を紹介しましょう。コンバース様とのお取り組みでは、メディア向けの新商品の展示会がコロナの影響で難しくなったため、メディアの方々をVR空間に招待し、非接触でできるVR展示会を開催しました。

コンバースジャパン株式会社様のプレス向けVR空間

VR VENUEではおしゃれなアバターをオリジナルで制作することも可能なので、この時はコンバース様のブランドイメージを伝えるために、スタッフ用と来場者用のオリジナルアバターを用意しました。アバターにはコンバース様の靴を履かせたり、スタッフのアバターにはコンバース様のロゴ入りのシャツを着せたりしています。展示会は年4回で、継続的にご活用いただいていますね。

コンバースのアバター

川島:「店員さんのいるECサイト」のようなイメージですね。コンバース様のVR空間では商品画像が並んでいて、アバターが近づくとポップアップで商品情報が出てきます。これをコンバース様の店員とメディアの方が一緒に見ながら、商品の特徴などをお話されました。陳列される商品は、Excelで写真と商品名を入力しておけば、CSVで読み込んで簡単に入れ替えられる仕様です。

3DデータがあればVR空間に立体物を置くこともできるので、商品の形状を360度眺められるようにしてみたり、商品の生地感がわかるようなデータを作ったりする企業様も多いですね。今後、テクノロジーが追いついてきた時にどんなことができるか、実験をいろいろと行っているところです。

――空間のデザインも自由にできるのでしょうか?

川島:VR空間のデザインも自由です。ただ、導入時はあまり突飛なものだと受け入れられにくい可能性もありますし、まずは実店舗を再現する形で始められることが多いです。なお、コンバース様の展示会の場合は、当初は原宿のフラッグシップ店の2階にある展示スペースを再現しようとしたのですが「商品をたくさん置きたい」「もうちょっと広い方が良い」などと調整しているうちに、実際の2倍くらいの広さになりました(笑)。

――物販以外での活用事例もあるのでしょうか?

上村:伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)の新卒採用で、内定者とコミュニケーションを取るための企画として活用されました。「コロナ禍での採用活動をどのようにするのが良いか」というテーマで、伊藤忠商事の内定者とIICが一緒にワークショップを行ってアイデアを創出し、IICがVRを活用してそのアイデアを実現するという内容でした。

伊藤忠商事新卒内定者によるVRを活用した「次世代の採用イベント」

土居:これは『日経ビジネス』にも掲載されて、かなり評価いただいた企画でしたよね。この時の内定者たちっておそらく人類史上初めて、非接触で就職活動をしなければいけなかった方たちなんです。彼ら自身、他の人たちと別の視点で課題感を持っているはずなので、それをベースに新しい採用のサービスを考えてくれるんじゃないかと思ったのですが、やはりかなり優秀な企画が出てきました。

上村:その中で、いろんな社員やOBOG、各国の駐在社員とマッチングして交流を図り、入社後のミスマッチを防ぐという企画が出たので、VR VENUEで伊藤忠商事を再現したVR空間を作り、交流するという形で実現しました。

土居:他にも、テレビ局の長崎文化放送株式会社様(以下、長崎文化放送様)から、「コロナ禍で長崎市内の飲食店が元気を失っているので応援したい」とご相談を受けたこともありました。長崎の象徴的な横丁を再現したVR空間を作って、そこへ長崎市内の飲食店に出店していただいたんです。

長崎市バーチャル文化横丁

まず、長崎文化放送様がテレビでイベントの告知を発信。イベント当日は、近郊のユーザーがこのVR横丁にアクセスし、お店の人とお話して食事を注文すると、お店側はデリバリーでユーザーに食事を届けられる仕組みにしました。これに加えて、長崎の魚を冷凍して全国へ展開する事業も行っていまして、遠方のユーザーにも楽しんでもらえるような企画になりました。「地方創生×VR」という文脈で面白がっていただいていますね。

――使い方が本当に幅広いですね。

土居:お客様も「このメタバースの空間で何をしようかな」というフェーズなので、いろいろな構想やご要望が出てきます。その企画を一緒に考えていけるところは、僕たちとしてもとても面白い、やりがいのあるところです。

■業種・業態を問わず、黎明期のメタバース担当者の駆け込み寺として

――どういったお客様にVR VENUEをご活用いただきたいでしょうか?

川島:今はファッションや不動産など、目に見えてわかるものの立体感を楽しみたいというお客様のご利用が多いのですが、コミュニケーションが必要なすべての事業の人たちにご相談いただきたいですね。

河野:業種や業態に合わせて機能をカスタマイズするなどしてご活用いただきたいです。まずは実験的にスモールスタートで始めたいという企業様にも合っていると思います。

上村:そうですね。私も今、様々な業種・業態の方々と伴走させていただいています。これからもお客様の業態などに合わせて一緒に作っていきますので、お困りごとがあればぜひお問い合わせください。

土居:「とりあえずやってみろ」という風に上から言われて、突然メタバース担当になったというご担当者様もぜひ、駆け込み寺的に僕たちのところに来てください。一緒にその山を乗り越えるお手伝いができたらと思っています。僕たちがなんとかします!

<VR VENUE サービス概要ページはこちら>
https://www.vrvenue.net/