大事なことが法律に書かれているとは限らない-「合意は守られるべきである」

約束は守らなければならない、と最初に言ったのは誰だろう。少なくとも、日本の法律にはそんなことは書いていない。もちろん、法律に書いていないルールは沢山あるし、法律に書いていないからと言って、何をしても構わないというわけではない。

でも、大事なことって、法律に書いてあるんじゃなかったっけ?

人を殺した場合は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する、ということは、法律にはっきりと書いてある(刑法199条)。しかし、「人を殺してはならない」とはどこにも書いていない。刑罰を受ける覚悟さえあれば、人を殺してもいいのだろうか。

もちろん、人を殺した場合に刑罰が課されるということは人を殺してはいけないということを書いてあるのと同じことだ、書かれた内容を禁止する命題として読むべきだ、刑罰を受ける覚悟があっても人を殺してはいけないことは当然だ、という考えもあるだろう。僕も、人を殺して良いと思っているわけではない。

「ぼくはこうおもう。ここで見ているのは、ただの〈から〉。いちばんだいじなものは、目に見えない……」(サン=テグジュペリ『星の王子さま』)

王子さまは言った。本当に大事なものは、目に見えない。ひょっとすると、本当に大事なことは、法律にも書いていないのだろうか。少なくとも、法律の格言にあるような、誰も争うことのできないような原理原則でさえ、法律に書いていないものは幾つもある。

むしろ、大事なものが、詩や小説は書いてある、ということもあるんじゃないか。他の誰も気付かなかったような、読む人にとっての規範たるべき何かが。


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