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「オレの獲物はビンラディン」を観た

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アマゾンプライムで観られるようになっていた「オレの獲物はビンラディン」。
劇場公開当時、ライターの友人からしきりに薦められていたが、見逃していた映画。
上掲のあらすじはプライムビデオからのキャプチャです。

隣人にしたくないオッサン

日本ではまったく無名?の主人公、ゲイリー・オークナーは実在の人物。
映画のあらすじのとおり、神の啓示を受けてオサマ・ビンラディンを捕まえようとした奇人変人。
パキスタンで拘束されてアメリカに強制送還され、アメリカのメディアではいっとき話題になった人らしいですよ。

映画の中のゲイリーは、極度の愛国者で無職で、声も態度もでかくてうるさくて、とてもじゃないが友達付き合いしたくないタイプ。というか隣人にいたら絶対困る人。

なのに、画面の向こうの人だからだろうか。「こんな奴いるよな〜」と笑って見ていられます。

なぜか感情移入させてしまうオッサン

近くにいたら絶対迷惑をこうむるタイプのゲイリーは、映画の主人公としては最悪……なのに、スッと感情移入してしまうのは、そんな傍若無人なキャラクターでありながら、その行動規範が「やりたいことは迷わずやる」。彼の自由さに、まっすぐ突き進む強さに、一種あこがれを持ってしまうからでしょう。

さらに彼は単に「オサマ・ビンラディンを捕まえたい」だけで、標的の潜伏先・パキスタンという国や国民には、まったく悪感情を持っていない。というかむしろ親近感さえ持って、その懐の中にスッと入っていく。
そのコミュニケーション能力、ポジティブでアクティブなメンタリティに、ワンマン社長やガキ大将のような安心感があり、全体的に不安や恐れといった負の感情を抱くことがない。
そんなカラッと明るいテイストに、ザクザク不要なシーンはカットしいく小気味よい編集もあいまって、最初から最後までハイテンションで観ていられます。

そんなゲイリーにも女性との出会いがあり、「ビンラディンを捕まえる」神に課せられたミッションから“現実”に引き戻される瞬間があるんだけど、その女性もその家族も、悪し様にゲイリーをたしなめるのではなく受け入れるし、彼女らではなく神(ミッション)を選んで家を出て行ってしまうゲイリーを素直に送り出すし、無事(?)帰ってきたら、よろこぶ姿を見せる。

そうだ、この映画は「ビンラディン」こそ悪役に据えているけれど、実は悪人はひとりもいない優しい映画だったのかもしれない。

でもやっぱり近づきたくないオッサン

「やりたいことは迷わずやる」「最後まで突き進めば達成できる」。
そんな彼の暴走ぶりを見ると、笑ってしまうしグッと来ちゃうし、ラストシーンではちょっとほんわかしてしまう。
この映画は、悩みがあってくよくよしている時に観ると、悩んでいるのがバカバカしくなって、元気が出るような……気がする。

「気がする」というのは、やっぱりどこか彼を「隣人にしたくない」感覚があるからです。
映画自体はいい話みたいに終わってるけど、そこは“実話をベースにしたフィクション”。

ほんとの最後は、ゲイリー・オークナー本人の出演映像と共に流れる、本人の近況を伝える一文。

ほらな! やっぱりな! と乾いた笑いが出てしまうブラックユーモアが、この映画(の製作者)や主人公をどこか信用できない理由かもしれません。

それはともかくとして、ゲイリーを演じたニコラス・ケイジ。
イケメンモテキャラよりこういうキャラクターを演じているほうが生き生きしていて好き。
ノリノリでちょっと危ない、でも真からは憎めない人間くささのあるニコラス・ケイジを見たいならぜひ。

最後の一文を書いてふと思ったが、この映画、ちょっと“落語”っぽいのかもしれない。清濁併せ呑む、人間喜劇。(しかも実話っていうね。)

(Amazonプライム会員ならプライムビデオで観られます。)

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