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2019年9月の記事一覧

ひとくちめで終わる

ひどい暑さの夏だったから 風鈴も釣り忍も用済みになってしまって 近所の鉢植えの朝顔さえ悪意…

甘えの構造

ものを書くことがとても恥ずかしいことだと思うことと、高貴なことだと思うことは遠いように見…

正岡子規によせて

わたしには奇妙な持病があって それはまた別の持病が呼んだ持病なのだが ときおり、左顔面から…

カーネギーみたいに

「公爵夫人は八時に家を出た」このような文章で小説は埋められている。 ヴァレリーはこう残し …

松茸論

ある交通事故にそれが起きなかった可能性が書き込まれていたとわかれば、松茸が毒茸として振る…

窓のことを

ほんとうは釣り人のことを待ち人と呼びたいが ことばがそれを許してくれない そうしないと体が…

ゆびをかぞえる

幼稚な願いだとわかっていても、海を見ると漁師になりたくなる。自分の手を見ると、漁で作ったまめもなければ、網ですりきれた古傷もなく、ボールペンのように4本の指がたよりなく並んでいるだけで、そのことに後ろめたさを覚えるぼくはまだ健全だと思いたい。 言葉に固められることを拒んでいるみたいに波は立ちつづけ、風は見られることを恥ずかしがって海へ逃げていく。こうして現在形で語れることに安心を覚えるのは、現在形であればおとぎ話のめでたしめでたし流の終わりが来ないと知っているから。 海には船