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【囲碁】役に立つ棋譜解説 石を軽く見ると素直な一手(弱い石から動く) 20230526

こんにちは。
 
IGOcompany【U】です。

囲碁をビジネスに起業して「宇佐美囲碁教室」っていう教室を運営したり、武蔵小杉の「永代塾囲碁サロン」にて指導碁や交流会をしたり、世田谷や麹町、大学などで囲碁を教えて、ご飯を食べてます。

今年の4月からは「新百合ヶ丘囲碁学園」の学園長を任されました。

昨日、お知らせした(色々な)マガジンですが、さっそくフォローしていただいた方もいらっしゃったようで、本当にありがとうございます!!

ちゃんと読んで役に立ったなぁって思ってもらえるように、有意義な事を書いていこうと思います。

さて、

そんなワケで、

本日は無料の棋譜解説のnoteです。

【囲碁】役に立つ棋譜解説 石を軽く見ると素直な一手(弱い石から動く) 20230525

と題して、書いてみます。

実際に、僕の教室で生徒さんに講義した内容の棋譜となっています。

こちらはサンプル教材。

昨日に引き続き、

【囲碁】棋力向上に役立つ無料noteのマガジン

にも追加しておきますね。

実際の講義は1時間で、その間に定石を詳しく掘り下げたり、捕捉を入れたり、色々説明をしているんですが、

noteではちょっと軽めに解説してみます。

テーマは、

「石を軽く見ること」「素直な一手(弱い石から動く)」

についてです。

少しでも参考になると嬉しいです!

それでは、行ってみましょう。

【解説する棋譜の総譜、1手目~74手目まで】

定先(コミなし)の指導碁になります。

白74手目まで、白の優勢になっている碁です

黒番の方はオンラインレッスンを受けてくれている有段者の方で、普段は3子で打っているんですが、互先の練習をしたいということで、置き石なしで対局をしました。

置き碁の時は、手厚く打ち進め、ちゃんと戦うべきところでは戦い、互角の進行になることが多いんですが、

互先だと、ちょっと感覚が違ったような印象です。普段通り打つって、ナカナカ難しいんだなとあらためて思いました。

僕は、特に無理をせずに自然な流れで着手をしているのですが、ちょっとずつ形勢に差が出てしまっています。

ちょっと話は変わりますが、

僕の指導碁のイメージって、100メートル走なんですよね。

例えば、3子局なら、僕はゴールまで100メートル地点からスタートですけど、3子置いている方はハンデ分の30メートル先の、ゴールまで70メートル地点からスタートするような感じです。

定先の碁だと、それが10メートル先、ゴールまで10メートル地点からってイメージなので、ちょっと遅い手や働きの乏しい手を打ってしまうと、すぐに上手に追いつかれてしまいます。

その原因となった着手は、どれなんでしょすか??

【左辺白18とツメられた時、黒は?】

黒7手目で、黒5の石から二間ビラキなどを打てば自然ですが、黒は7のカカリ。白8のハサミに対して、黒9の三々入りから「三々定石」の形。

ここで白18と打たれた時に、黒はどう打ってみたいでしょうか?

黒5の石をどう扱うか

「素直な一手(弱い石から動く)」は、弱い黒5の石から動く事です。

例えば、下の図のように、

黒1のトビを「今すぐ」打つのかどうか

一間トビで逃げていれば「一間トビに悪手なし」の素直な展開。

しかし、白2、4と打たれると、白は下辺に地を持ちながら相手の石を攻めることが出来ます。

こうなっては、黒が良くないので、「石を軽く見て」、黒は右下隅の黒19と、シマリの大場に先行しました。

これは悪くない発想だと思います。

この場合は、黒5の石を軽く見ているだけで、完全に見捨てたワケではありません。いずれ助けるかもしれない黒5の石にはまだ活力が残っています。

黒19は下辺の方向へシマリも良かったと思います

【ツケ二段の定石の時は、サガリで打つかオシで打つか】

右下隅、白20のカカリに対して黒21と大きくハサミ、これに対し白は「ツケ二段の定石」で応じました。

※ちょっと宣伝ですが、ツケ二段について有料記事を書いていますので(前半部分は無料です!)、サガリかオシか、明確な答えを知りたい人は是非ぜひ読んでみて下さい。

白28手目の局面で、黒は29とサガリを打つか、白30の位置にオシを打つかは非常に悩ましいトコロです。

【白30に対して黒番でどこに打ってみたいでしょうか?】

実戦はサガリを選択し、白は30のオシ

さて、ここで黒番です。

皆さんだったら、次の一手をどこに打ってみたいでしょうか?

今日のテーマの、「石を軽く見ること」「素直な一手(弱い石から動く)」を意識して、次の打つ場所を選択してください。


※ちょっと行間をあけてみます。


実戦は、下の図のように右辺黒31を選択しました。この手も、大きいトコロで悪いワケではありませんが、今回のテーマにはそぐわない一手です。

黒31は、陣地の広い場所「大場」に打ってしまっていますが、

ここでは、石の強弱に関連する「急場」を意識したかったのです。

黒31は「大場」。その前に大切なところが…

【白32のハサミで黒は難しくなります】

実戦のように、白32とハサミを打たれると、

いずれ助けるかもなと思っていた黒5の石(△)や、下辺の星に打っていた黒21の石(△)が急に弱くなってしまいます。

石の働きが乏しくなってしまっているのです。

囲碁は交互に一手ずつ打つゲームですので、今まで打った石がの意味(働き)が乏しくなってしまえば、その分、差が開いてしまいます。

黒△の石がどちらも「弱く」感じませんか?

仮に、黒△の石たちが無ければ、黒31と右辺の大場に打つのは好手です。

【素直な一手とは?】

では、黒はどう打つのが良かったのでしょうか?

黒1のヒラキで黒石の顔が立ちます

シンプルな着手ですが、黒1の二間ビラキが、今日のテーマの「素直な一手(弱い石から動く)」です。

もちろん、この手で一路下に打ったり、三間ビラキにしたりしても、大筋はあっているので正解手。

例えば、黒Aのノゾキも有力です。

厳しい打ち方を求める人は、黒Aのノゾキから右下隅の白石にプレッシャーをかけ石の強弱を整えていきますが、

今回のnoteでは、まずは素直な二間ビラキをオススメします。

この後の進行を見ていきましょう。

【黒33はいわゆる稼ぎ過ぎの一手】

黒33も普通の手に見えますが、石の方向は逆になります

黒33のハネから右辺の黒地を盛り上げていきましたが、これは石の方向としては「逆」。打てば打つほど黒地は出来ますが、下辺から中央の白の勢力圏が広がっていきます。

そして、黒5と黒21の石はますます弱くなっていきます。

このような展開を、黒5と黒21の石を「軽く見ている」と考える人もいるかもしれませんが、

この場合は軽く見ているというよりは、見捨てているようなイメージで、これから黒5や黒21の石が役に立たなければ、これは意味のない(取られた)石という事になります。

白に飲み込まれてしまったら、二手分のリードを奪われてしまうと表現しても良いでしょう。

黒は、白40まで白の石を強くしてから、黒41と動き出しましたが、白の勢力圏なので上手くサバキを打てないと苦しい展開。

黒43は工夫の一手で、あえてAのハザマを作りながら、足早に逃げようとしています。この黒43では一路下に打つ手もあったでしょう。

Aの間のことを「ハザマ」と言います

実戦は、この後、白44のツケから黒の石を切断し、形勢は白良しとなりました。

「弱い石から動く」というのは、囲碁の基本のひとつなので、言われてみれば当たり前の考え方なのですが、

有段者の方でも知らず知らずの内に、その棋理(囲碁の理、理屈)から外れることが多々あります。

この棋譜解説を眺めてみて、アラタメテ、その原則を感じてもらえれば、皆さんの棋力向上に(少しは)役に立つんじゃないかと思います。

【白の後悔の一手を紹介】

ちなみに、偉そうなことを言ってますが、僕も棋理に反した手を打っているので、最後に、それを紹介したいと思います。

白68が後悔の一手で、ちょっと打ち過ぎ(稼ぎすぎ)の着手です。

上辺を黒に与えても形勢は白良しな筈なのですが…

この白68では、Aに一間トビしているくらいで十分だったと思います。

分かってて打っている部分もあるんですが、

(黒にこの手を咎めて下さいねと伝えて)、

この後、黒に上手く打たれて、少し苦しくなってしまいました。

【途中経過】

黒は白の石を分断するように打ってて良い石運びです

黒71から白68の石を分断するように打てば、黒も素晴らしい打ち方です。白68の石がポツンとしていて、飲み込まれてしまいそうですよね。

また、左上隅からの白の石たちも、思ったより強くなかったのです。

これも今日のテーマの「素直な一手(弱い石から動く)」に反した石運びです。是非ぜひ反面教師にして下さい。

そして、最後にちょっとおまけです。

有名すぎる某タイトル戦のいち局面ですが(大人の事情で名前は出しません)、ちょっとAIにかけてみて候補手を検討したりしてみました。

実戦は、もっと厳しい手を選択しました

ここでAと打ってみたいですか?Bと打ってみたいですか??


※ちょっと行間をあけてみます。


今日のテーマの「素直な一手(弱い石から動く)」を意識している方なら、Aのスベリが良い手に見えると思います(何だったら、黒49の石から上に一間トビするのが素直な一手です)。

アマチュアは持ち時間が豊富にあるワケではないので、弱い石を放っておいて地を稼ぐ手を打ち過ぎてしまうと、すぐに無理が生じて石が取られてしまいます。

今日の解説で、弱い石に一手を入れる「本手」を意識できるようになったら、ちょっとは有意義な事を書いたんだなぁと嬉しく思います。(もちろん、それは承知の上で、あえて地を稼ぐんだって打ち方も自由です。囲碁は自分の好きに打って良い競技です)。

以上、

簡単で、拙い解説ではありましたが、

少しでも参考になる部分があったら嬉しいです。

それでは、本日も読んでいただき、ありがとうございました!!


サポートありがとうございます。コロナの影響もあり、今囲碁界はどんどん縮小していっています。どうにかしたいと思っている方は多いと思います。まずは小さな一歩から、囲碁の本を買ったり、近くの囲碁サロンに行ってみたり、周りに囲碁を教えてみて下さい。サポートは囲碁普及に使わせて頂きます。