小林一三氏が、阪急百貨店で「ライスカレー」を売り出した理由。

古くからのことわざでもあり、
商売の極意と言われる言葉「損して得取れ」とは、
どういう意味なのでしょうか。

商売上では、俗に、目玉商品でお客さまを惹きつけ、
他のものも売れることを期待する、
という意味で使われますが、本当にそうでしょうか。

本来は、それほど単純な、
一時のセールのような意味合いではなく、
長いスパンで考える、奥の深い言葉なのです。

お客さまを喜ばせることに全身全霊を傾け、
それを続けることで、
やがてお店が儲かるようになることを意味するのです。

お客さまを喜ばせることは、
すぐに結果のわかることではないので、
「損して」という表現となっているだけです。

その時は一方的な奉仕となりますが、将来的には、
お客さまからの感謝のカタチとして、
お店を利用し続けてもらえるようになるのです。

そんな「損して得取れ」を実践していた商売人がいます。

阪急百貨店の創始者である小林一三氏です。

彼は、集客力の落ちた百貨店を復活させるために、
秘書にあることを命じます。

「大阪中のライスカレーを食べ、
 一番美味しい店はどこかを調べてこい」。

数週間後、秘書が一番美味しいと思うお店を
小林氏に報告したところ、
彼はそのお店を阪急百貨店の食堂に入れ、
しかも、そのお店の4割安い値段で売り出したのです。

大阪で一番のお店の味なので、当然のごとく
「阪急のカレーは安くてうまい」と評判になり、
お客さまが一気に押し寄せるようになったのです。

ライスカレーは、安く売る分赤字となりましたが、
百貨店全体の売り上げは大きく伸びたのです。

この話では、ライスカレーでお客さまを釣ったように
感じるかもしれませんが、
そんな底の浅い話ではありません。

まず、大阪で一番美味しいお店を探させたこと。

やるからには最上級のことをやろう、
という意気込みが感じられます。

そして、4割も安い価格で提供したこと。

美味しいだけでも集客力はあるのに、安くすることで、
お客さまをもっと喜ばせようとしたことです。

“目玉商品”というと、
安くすることばかりを考えてしまいますが、
彼はお客さまを喜ばせることを“目玉”にしたのです。

ライスカレーは大損していますが、
笑顔のお客さまが増えたことは、
大きな得となったのです。



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