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退化するメディア。劣化する文章

(ヘッダー画像はYahoo!ニュースのスクリーンショット)

「退化するメディア」とは、アナログレコードの人気再燃を指してのものではない。アナログメディアはデジタルが台頭しても残っている。退化は、その記事にタイトルを与えたメディアそのものに対してである。

「1988年ぶりに」
まるでレコード盤とCDが2000年以上市場で競争してきたかのようにしか読めない。近年この「ぶり」の使い方は乱れている。

「高校時代ぶり」「◯◯年以上ぶり」

という具合に。だいたい「◯◯時代以来」「◯◯年以来」と書くのが普通だろう。
元のニュースを確認してみると、

FIGARO.jpの元記事スクリーンショット

「30余年ぶり」という表記になっている。これで十分、音盤市場を長期間リードしてきたCDがアナログレコードに敗北したということが伝わる。
これがYahoo!ニュースに配信されてリライトされたものと思われるが、◯◯余年という表現がライターの辞書(語彙)にはなかったのだろう。
正確さを期したかったのは想像がつくが、その扱い方を知らなかったライターを起用するのは日本最大級のポータルサイトとしては退化でしかないだろう。

gizmodo.jpのスクリーンショット

こちらは以前、「つぶやき」でも取り上げだ例だ。カジュアルな文体の記事だったが、頭を抱えた。

「部屋でも着られるビジネスウェアがついに実現」

とあるが、一般的な事実として

部屋で着られないビジネスウェアは存在しない。

言わんとするところは分かる。
リモートワーク、オンライン会議などのビジネスシーンでも通用するようなシルエット、ディテールのルームウェアが登場したということを言いたいのだろう。同種商品の先行例もあるので「ついに実現」という表現にも疑問が残るが。

タイアップ記事(PR)だったが、よくスポンサーがOKしたものだ。これを通したメディアも編集・制作体制を見直していると期待したい。

Forbes JAPANのスクリーンショット

堅い印象のForbes JAPANだが、外部ライターも積極登用している。
スポーツ記事のタイトルをご覧いただきたい。

「年棒」と「年俸」が混在している。

何かの意図があって使い分けたのかと思い本文も閲覧したが、その痕跡は見つけられなかった。
おそらく、ライターが年俸(nenn-pou)の読みを「nenn-bou」と思い込んでいたことによる誤記と思われる。それにしても本文はおろかタイトルにまで残ったままの掲載は、編集部が校正をおろそかにしたまま機械的に公開をスケジューリングしてしまったとしか思えない。


web記事は不具合も後から修正できる。それゆえに力量不足のライター起用や緊張感に欠けた作業も、こうして露わになってしまう。

ほぼ無制限に多くの目に触れるからこその「悪目立ち」は、新聞・雑誌の比ではないことをWebメディアは認識すべきだろう。

★追記 (2023.5.8)
Forbes JAPANの記事は修正されました。


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