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【普通の人でいいのに感想】twitter民に刺さる痛い女の何者にもなれなさ

梅雨明けがなかなか来ない2020年の7月末、突如TwitterでバズったWeb漫画が「普通の人でいいのに」である。色々と切り出しやすい印象的なシーンがふんだんに散りばめられていることもあり、ネット民が大好きなあるある系共感の上から目線がネットを駆け回り、大いにネット民はイライラしたのであった。

togetterなど「普通の人でいいのに」に関する高評価な感想エントリ

twitter論壇の識者による「普通の人でいいのに」関連ツイート

印象的な描写から振り返る「普通の人でいいのに」の感想(ようやく本題)

ネットの怨嗟の声が強くて「これから露悪趣味はたまらねぇぜケケケ!」って感じより、もうお腹いっぱいという感じではあるが、まあ一応自分の感想というか他の人があまり書かない部分を後半メインに書こうかなと。

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90年代に社会問題になった出会い系サイトからガワを変え、すっかり普及した感のあるマッチングアプリ市場。従来ストナンしか許されなかったナンパ行為が心理的にキズつかずにカジュアルにできるとあって、冴えない非モテくんがスマホ参戦し、10年代以降の恋愛事情を塗り替え、男女間の悲喜交々を加速させていった図式がこれに集約されている気がする。

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「普通の人でいいのに」に出てくる「普通」はかなり控えめな都心の男性像だ。「40歳までに結婚」とあるが、統計データによると男性の平均結婚年齢は31歳であるし、年齢が35歳の割に年収380万円とかなり少ない。マッチングアプリには冴えないシステムエンジニアが数多く登録していると言われるが、この職種の人間の勤め先に多い長時間労働のブラック企業でもこの年収はちょっと現実的ではない。まあ身長が168cmであったりとしているので「何かの基準に不足している」という不満を普通と定義しているのではないか?とも思える。

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セックス中に行為に興じることもなく、ひたすらに客観的メタ認知ばかりが発達して主体的な共感力が欠如してしまっている、発達障害っぽさ。

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このあたりは非モテマインドと酷似している。彼女が吐露している価値観は非モテ界隈でよく聞かれる公正世界仮説そのものである。マジメ系クズの本懐であり、他人が陰ながら努力しているということに対して、主体的な共感の思いがよぎらないのである。

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そしてようやく最後のコマの部分。作家的にここに落とし込むのに一番苦慮していたであろうに、ネットではあまりこの部分は取り沙汰されてはいない。
要するにこの女があれこれと己の主体性から逃避し、最後に実際に逃避行したことにより「(他人の価値観に振り回されて)自分の人生を選んで歩んでこなかった」ということにやっと気付いたというオチがこのセリフの意図するところであろう。

こんな話を読むと、男の人生のバイブルを描き続ける作家、藤田和日郎のからくりサーカスにこんなシーンがあったのを思わず思い出さざるを得ない。

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からくりサーカスの主人公である鳴海の師匠が語る「本物の人生」の内容はおそらく「普通の人でいいのに」の指すところに極めて近い位置にある。他人の価値観や尺度で過ごす人生に何の価値があろうか。

しかしそれでも人間は社会的動物であり、群れをなす生き物である。コミュニティにおける周りの評価や己の立場などといったしがらみから抜け出ることはなかなかに困難であるのもまた事実である。

そしてインターネット論壇で最も普通さを追求し、「何者にもなれない」を何年も執着してこだわり続ける愚物の第一人者といえば、はてなシロクマ(熊代亨:p_shirokuma)である。

「何者にもなれない」普通さに延々と固執するはてなシロクマ(熊代亨:p_shirokuma)とその葛藤

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きっとはてなシロクマ(熊代亨:p_shirokuma)はかなり「普通の人でいいのに」に関して言及するところが多くあろうと想像するにかたくないのだが、そのうちそんな日がくるんだろうか。

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