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「ア・ハッピーニューイヤー!」 言葉が文字となり、画面にデカデカと映し出されている。ア…
テレビでは華やかな着物や衣装に身を包んだ芸能人たちが、盛大に盛り上がっていた。どのチャ…
アキちゃんは歌い切った。声は掠れ、ブレもあったが、クリスマスの雰囲気を賢明に表現し、二…
「アキ、どうしたんだろう」 楽屋で二人きりになった時、ミウは話しかけてきた。私は「うー…
制服のスカートをバサバサまくって空気を入れていた頃が懐かしい。空気がよどんだ地下のやっ…
次の日、アキちゃんはスタジオに現れた。いつもと変わらない様子だった。髪を切ったらしく、…
私がスタジオに入ると、空気が変わった。いや、勝手に私がそう感じてしまったのかもしれない。人の視線が槍のように突き刺さる。そこに負の感情があればまだしも、飛んできたのは気遣いの視線だった。無理して繕うようにするから、かえって澱んだ空気が漂っている。 鈍くて重い空気をかき分けて、「おはようございます」と声を出すと、新しく入ったマネージャーのコガちゃんが、「おはようございます」と朗らかな声をあげた。その隣にいた新入社員のマコちゃんは、ヘタクソな作り笑顔でペコリと会釈。マコちゃん
《ヒロナとリオンの路上キス!? 真夜中の密会と、その後の二人》 写真週刊誌の見出しに…
一曲、また一曲と。曲を仕上げていく。出来の良し悪しは関係がない。いや、関係はあるんだけ…
頭がぼーっとする。世界から色が落っこちたみたい。リオンくんとの箱根旅行の後から、私の中…
布団の中でリオンくんは言った。 「オレ、ロシアの音楽学校に行く」 彼の指は熱かった。…
「ありがとう。素敵な演奏を聴かせてもらいました」 老紳士は目を細めて言った。まだ彼の耳…
「ショパン、ノクターン第二番」 老紳士はそう呟いた。おそらく私に教えてくれたのだと思う…
私は立ち尽くしてしまった。 広場の中央、ピアノの前で、ただ一人。ピアノを弾く彼の顔を見たまま、動けなかった。ヘンな光景だったと思う。普通は、椅子やソファに座りながらピアノの音色に耳を傾けるはず。ましてや、ここはホテルの談話室なのだ。ストリートピアノを聴いているワケではない。実際、数名のお客さんはコーヒーを傾けながら、うっとりと演奏に耳を澄ませていた。でも、彼の頬に光っていた一筋の水の軌跡を見たら、その場を離れることは出来なかった。 ピアノにへばりつく私を他所に、リオン