Masatoshi Iga
2021年新建築・住宅特集、総復習。後半
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2021年新建築・住宅特集、総復習。後半

Masatoshi Iga

前半に引き続き、ここでは去年(2021年)の新建築・住宅特集1年分を大晦日に総復習したものの感想を書いていきたいと思います。

なるほど座談月評

住宅特集には毎月巻末に先月の掲載建築の振り返りとして座談月評があります。
その中でも特に印象に残ったやりとりとその題材となった建築について述べていきたいと思います。

最初は、8月号掲載の武田晴明建築設計事務所による「鶴岡邸」についてです。この建築は連続する大小のヴォールト型の天井が屋根側では庭を受ける深い地盤面になり、それが積層した構成になっている、とても印象的なものです。
この建築については、大小のヴォールトの連続という形式が与える内部空間への効果が適切に発揮されているか、や屋上庭園や2階スラブの庭から出る水の流れがデザインされているかという事に疑問が投げられられていました。
かたちや植栽計画にとても迫力がある一方で周辺の生態系や大地とつながる地道さが重要な側面でもあるこの建築に抱いていたもやもやが具体的な着眼点と共に言語化されていて、個人的になるほど〜と思う月評でした。

続いて、9月号に掲載のアトリエ・ワンによる「ハハ・ハウス」についてです。
アトリエ・ワン初の戸建て住宅「アニ・ハウス」の真隣に建つ塚本さんの母のための家です。
この建築は平面が7.2m角で、天井高が 3.2mの無柱一室空間で、隣のアニ・ハウスは平面6m角、天井高2.3mが3層積層しているのですが、これがアトリエ・ワン特有の架構形式だそうで、この架構形式とアニハウスとの幅6mの間隔が絶妙だと言われていました。その絶妙と言われるスケール感を行って体感してみたいと思いながら、住宅と架構形式についてこれから気にしてみていこうと思いました。
また、アトリエ・ワンがこれまで住宅の中で一番大きな部屋を居間と呼んできたのに対して、今回は主室という室名がつけられていたことも注目されていました。アニハウスに対しての主室でもあり人形劇サークルにとっての主室かもしれない、そんな誰もが主人になれるという意味で命名していたのではないかという推察が長谷川豪によってされていました。室名にまでこだわりや推察が出る事に痺れました。

最後は、12月号掲載の新森雄大+ジェームズ・ジャミソンによる「HOUSE YMIR」についてです。
この建築は、既存の2つの駐車場のうち1つを壁や屋根を取り払ってテラスにしそこに面する様に新築の住宅を計画したものです。
座談月評を読む前から、土地の読み解きから平面図の明快さ、そして多様な断面に魅力を感じていました。そして月評には僕が感じていた事と同じ様なコメントが出ていて、少し嬉しかったです。ただ、平面の図式的な明快さは指摘されていて、もう少し図式を超えて空間や使い方から詰められたらという話が出ていました。

建築・建築家と都市

都市的な展開・繋がりがキーとなっている建築たちについてみていきたいと思います。
最初は、新建築12月号掲載のジオグラフィック・デザイン・ラボによる「高浜町6次産業施設UMIKARA」です。個人的に最近関わらさせていただく機会があった前田先生の事務所の事例として気になっていましたが、やはりなんと言っても特徴的なのは屋根形状でしょう。街の景観的資源である漁師小屋の屋根勾配とボリューム感を尊重し、形態が決定されている。また、この建築は長期的な計画 : 6次産業化による新しい漁師町の形を目指す  の一部であり、今後の都市的な展開がとても気になる事例でした。

続いては、新建築7月号掲載の萬代基介建築設計事務所による「石巻の東屋」です。新設される全長8kmにも渡る堤防の上に点々と置かれる東屋の計画てます。被災後のみんなの家プロジェクトを思い出させるこの計画は、まだ未完成。これから東屋が続々と建てられ、完成した時、この小さな東屋というものが8kmもの都市的な空間にどう影響しているか、期待したい。と同時に、小さくても自分が設計した建築やモノを都市の中に散りばめる様なプロジェクトが自分は好きなんだなと再確認できました。

その点で、一番顕著だったのが新建築2月号のピークスタジオ、星野千絵+原崎寛明 による「武蔵新城のエリアリノベーション」です。
東京からも近く、家賃も安い武蔵新城という地で、駅から600m圏内に集合住宅の改修やビルの内外装の計画を10数件行っている、現在も進行中の計画です。
新築時に一番家賃が高く、そこからは下がる一方で下がりきったら建て替える。このループに疑問を感じた老舗地元不動産の石井さんが、アパートを改修してカフェ(新城テラス)を始めました。そしてこれが以後の一連の計画の始点だったそうです。地道に一室のスケールからエリアを変え、建築家自身もそのエリアに事務所を構える。まさに町医者の様な建築家だと感じました。

そして最後は、新建築1月号掲載のdot architectsによる「日貫一日」です。
武蔵新城は関東でしたが、dot architectsは大阪:北加賀屋でエリアと結びつきながら活動をされている事務所でもあります。個人的には、インターンでお世話になったこともあり大好きな事務所なのですが、なんといっても家成さんの振る舞いに毎度感激させられます。それはこの日貫一日の文章にも表れていました。引用します。
「ここには都市生活に慣らされた人びとが求める新しさは一切ない。何があるかと問われれば、昔から変わらない美しい山と田畑と川があり、それらを手入れする人たちがいると自信を持って答えたい。(中略) 常に新しさを求めること自体が都市のケチな近視眼的センスである」
学問以前に本質的に価値を考えさせられる家成先生の言葉はここでも健在でした。

以上、2021年新建築・住宅特集総復習の感想でした。
たいそうな企画になってしまいましたが、やはり読んで新しい事がわかった!と思って書いてみると意外と言葉にならない事が多々ありました。素材や構法についての知識もまだまだなので面白い事をしているのに分かっていない所も多々あったと思います。観察を欠かさず、こつこつ勉強もしていきたいと思います。
そして、この総復習を毎年恒例にしていくと今年は例年に比べてこうだったなという感想も見えてくるのではないかと期待しています。という事で、2021年新建築・住宅特集総復習でした。

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Masatoshi Iga
近畿大建築学部ランドスケープデザイン研→大阪市大院建築デザイン研 建築からランドスケープ、都市まで横断した思考を目指します。