【お仕事メモ】物件事故報告書の存在を初めて知った話

最近依頼を受けた交通事故事件について、上司である弁護士サマから「物件事故報告書取っといて」と言われた。
いや物件事故報告書って何? そんなん取った事今まであった?
と思いつつ、その時は帰る準備バッチリでリュックも背負った状態だったので、とりあえず返事だけして退社しました。
どうして世の上司という生き物は帰宅寸前に指示を出してくるんでしょうね……?

物件事故報告書の存在を知った経緯の個人的備忘録です。

さて翌日。
まず弁護士向けの冊子『交通事件処理マニュアル(大阪弁護士会発行)』の目次をざっと確認してみるも、それらしき記載は見当たりませんでした。
そこでとりあえず過去の事件の資料を遡ってみると、「物件事故報告書」なるものはどうやら23条照会を使って取り付けるものらしい。
 
23条照会は一般の方は聞き馴染みがないだろうと思いますが、簡単に言うと「弁護士の権限を最大限に使って質問するからできる限り答えてね❤️」という照会方法です。語弊はめっちゃあります。
なんで「23条照会」なのかとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、弁護士法23条の2に記載の条文を根拠にして作られた仕組みだからですね。名前が安直。
答える側は回答拒否や無回答も可能ですが、弁護士会がその回答を不当だと判断すれば再度回答を求める事ができます。ちょっと強気な照会方法なので、資料集めにはとても便利です。
その反面、照会内容はすべて弁護士会が確認し、その内容に正当性がないと判断されれば差し戻されたりするので、私たちからするとちょっとハードルの高い照会方法でもあります。
あと送付方法が赤レタパ限定なので、お金がかかる。
 
とまあそれは良いとして、大阪弁護士協同組合発行の『23条照会の手引 2022』を確認してみたところ、ドンピシャで「物件事故報告書」に関する記載を発見!
物件事故報告書の23条照会はよくあるらしく、照会書の書き方まで細かく載っていました。助かる~。
 
で、結局この「物件事故報告書」とは何ぞやという話ですが。
 
まず、交通事故事件ではたいていの場合「実況見分調書」というものが警察によって作成されています。
これは事故時の状況などをまとめた資料のひとつで、これさえあればおおまかな事故の状況は推察できます。
交通事故事件で大きく揉めた場合、基本的には実況見分調書を取り寄せて参考にします。
 
ですがこの実況見分調書、負傷者がいない事故の時には作成されない事が多いらしい。
つまり、車に傷が入ったとか自転車が壊れたとか落としたスマホが壊れたとかの時には、実況見分調書はない。
そしてその代わりに、より簡素な内容の「物件事故報告書」が作成されるそうです。
 
と、ここで一つ疑問が。
実は今回物件事故報告書を取りつけるように指示された交通事故事件は、依頼者が怪我をしている「人損事故」なのです。
だから私は当然に、実況見分調書が作成されているだろうと思っていたのですが……。
 
うちの先生に確認したところ、どうもこの事故は当初「物損事故」、つまりけが人なしの事故として処理されていたらしい。
というのも、依頼者は事故当初、自身の負傷に気付かず、元気にお家に帰ってしまったそうです。
しかし、その日の晩になって酷く腕が痛み、結局病院へ行って骨折と診断された、という経緯のよう。
そう言えば、自動車教習所の教官も「事故直後はアドレナリンが出ているから自身の怪我に気付かないことが多い」と仰っていましたが……まさかそれが、こんな事務的なところにまで関わってくるとは。ちょっと面白いです。
 
尤も、この事が実況見分調書が作成されなかった直接の原因かどうかは先生も分からないようです。
まあ、私たちにとっては「実況見分調書がない」という事実さえあれば十分ですね。
 
以上、物件事故報告書の存在を初めて知った話でした。
ちゃんと覚えて、今後に役立てたいと思います。
それでは。


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