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ワクチンの副反応についておさらい

mRNAワクチンの副反応について。
ここでは、日本で使用される予定の以下のワクチンの副反応を紹介します。

・ファイザー・ビオンテック社ワクチン(治験者数43,448人、イスラエルでの接種者59万6,618例[文献1])
・モデルナ社ワクチン(治験者数30,420人
について今現在の時点で分かっているデータを紹介します。

わかっているよくある副反応

・ファイザー・ビオンテック社ワクチンでは、以下のような副反応が認められました[文献2]。
80%―接種部位の腫れや痛み
50%―頭痛
40%―悪寒
15%―発熱

・モデルナ社ワクチンでは[文献3]、
90%―接種部位の腫れや痛み
60%―頭痛
40%―悪寒
17%―発熱

今回のワクチンは、いずれも接種によって生じる腕の痛みや発熱等の反応が起こりやすいことが分かっています[文献4-6]。これらの反応は、自分の免疫がワクチンの作用によって正しく応答している過程で生じます。2〜3日でよくなることがほとんどです。

これらの反応は、2回目の接種で起こりやすいと言われます。高齢者よりも若年者で多く報告されています。ですので、心配な場合は、まず医療機関に問い合わせたり、接種後(特に2回め)に休めるような工夫が推奨されます。もし反応が起こっても、ワクチンではスパイクタンパク質というウイルスの一部分(ウイルスの本体RNAではなく、ウイルスの「殻」の部分のカケラ)しか作られないので、新型コロナウイルスに感染することはありません。

・ファイザー・ビオンテック社のワクチンは95%の有効性
 イスラエルでの59万6,618人と、ワクチン非接種の59万6,618人を比べた統計では、94%の有効性

・モデルナ社ワクチンの有効性は94.1%の有効性

ニュースではこのように報道されていますが、どれくらいの規模の統計があるのでしょうか。

ファイザー社では、21,720名にワクチン注射、21,728名には偽薬(プラセボ)を注射しています。約2万人vs約2万人の効果を比較しています。モデルナ社では、偽薬を注射するボランティアは15,210人、本物のワクチンを注射するボランティアも同数で対決です。また「思い込み」などの「効果」も排除するため、注射をする人は自分がワクチンを打ったのか、偽薬を打ったのかはわからないようになっています。また注射をするお医者さんの「思い込み」も排除するような検査を「二十盲検法」と言って、とても客観性の高いデータが得られます。

例えば、偽薬を打った100人中、100人が注射後にコロナ感染して、ワクチンを打った人は5人しか感染しなかった場合です。95人は、感染リスクが減少しています。これを相対リスク減少と呼びます。単純に言えば、このような結果から有効性95%と言えるでしょう(本当は治験ボランディアは2万人以上いますし、より複雑で丁寧な分析をします)。

実際にはファイザー社ではすでに日本でも160人の治験を行い、有効性が確認されているところです。モデルナ社は200人規模の治験を同じく日本で始めています。

アナフィラキシー

まれな副反応として、アナフィラキシーというものがあります。どれくらいまれかというと20万分の1とか、40万分の1くらいの確率です。
ペニシリンという抗生物質(抗菌剤)では1000分の1くらいの確率で同じ反応が起きることを考えると、この重度の副反応は非常に相当まれです(が、後述しますが、私はアナフィラキシーになったことがあります)。

アナフィラキシーは非常に重度のアレルギー反応が起きることで、医師が適切な処置をとれば、命に関わることはありません。また医師も、アナフィラキシーが起きた場合の処置は全員がきちんと学んでいます。

私は、とある病院でアナフィラキシーショックを起こしたことがあります。「採血」をしているときになってしまったのです。まず、お医者さんがびっくりしていました。高齢のお医者さんだったのですが、アナフィラキシーの処置は万全だったので、しばらくしてすぐに体調は戻りました。でも、採血では普通はならない反応なので、「あれなんでだろう?なんでペニシリンショックみたいな反応が起きたんだろう」と言っていました。私はアレルギー体質で、アナフィラキシーを起こしやすいのかもしれません。

私は、まず抗菌薬を自分から進んで飲むことはありません。前回、やむを得ず飲んだのは、ある手術を受けたときです。外科で一番恐ろしいのは「術後の感染」だということを知っているからです。そのときはどうしようもありませんでした。
抗菌薬は飲みませんが、今回のワクチンは打つ予定です。また、打つときは「アナフィラキシーを起こしたことがある」と事前に医師に伝えてみます。もしそれでも打つことが可能であれば、その場にいる医療者に「もしかしたらアナフィラキシー反応が起こるかもしれない」と何かしらの準備をしてもらえたほうがいいかなあと思っています。

ちなみに、アメリカでは大江千里さんがアナフィラキシーの状態になったようです(40万分の1の確率)。反応が起こるのは通常30分以内なのに、だいぶ時間がたってから起きたそうなので、アレルギー体質の方は、そのことも覚えておくと、安全性が更に高まると思います。

副反応とは

ワクチンでは、免疫をつけること(抗体をつくって、実際に感染したときに身体が免疫反応を起こして病原体を攻撃することができるようにする)以外に起こる反応をまとめて副反応と言います。今回のワクチンで報告されているもので言えば、打ったところがしばらく赤くなる、しばらく痛い、発熱するなどです。

有害事象とは

副反応のうち、ワクチンとの因果関係がわからないものも含めたものが「有害事象」です。例えば、ワクチンをしたあとに、虫に刺されて、腕全体が腫れてしまいました。これはワクチンを打って腕全体が腫れたのか、虫に刺されて腫れたのか、因果関係はよく調べないとわかりません。

でも、この場合は「有害事象」として、データとして集められます。念には念のため、ワクチンの安全性を丁寧に確認するためです。
例えば、ワクチンを打った数日後に、(年齢のため)脳出血で倒れたりします。またはくも膜下出血で倒れたりします。ワクチンを打ったことが原因とは到底考えられないとしても、まず一旦「有害事象」として処理します。その後に、きちんと原因を丁寧に調べていきます。例えば、ワクチンを打っても打たなくても、関係なく脳出血が起こりやすい状態にあったのかどうか。科学的にエビデンスが必要ですから、このように因果関係が不明な事象に対しては徹底的に調べていきます。後から「因果関係がなかった」ということが分かっても、まず「有害事象」としてカウントされます。

1. N Engl J Med. 2021 Feb 24. doi: 10.1056/NEJMoa2101765.
2. N Engl J Med. 2020;383:2603-261
3. N Engl J Med. 2021;384:403-416
4. CDC. Ensuring the Safety of COVID_19 Vaccines in the United States
FDA. Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee 4
5. Meeting December 10, 2020 FDA Briefing Document Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine
6. FDA. Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting December 17, 2020 FDA Briefing Document Moderna COVID-19 Vaccine


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