【医療従事者向け】武漢第一線のドクター(4)侯剛さん(後編):軽症患者の胸部CTとリスクコミュニケーションについて共有したいこと

軽症患者の胸部CTについての経験を共有したい

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一、肺病変は両側性多発性が多く、初期は単発で発生することもあり。周辺部への分布が顕著。
二、斑状陰影とすりガラス状陰影が見られ、halo sign、reversed halo singを伴うことがある。空洞は見られない。一部のすりガラス影/斑状影は球形または角形の変化を呈し、いわゆる「球形肺炎(spherical pneumonia)」であり、その原因はウイルスが肺胞上皮に浸潤しやすく、または一部の患者の肺の先天的な発育と関係があることなどが挙げられる。
三、胸膜下の微細網状陰影が多くみられ、閉塞性細気管支に類似する変化が存在することがある。こうした患者は酸素化指数が悪化する可能性があり、活動後の息切れがよくみられる。胸腔積液と胸膜病変はまれであり、葉間の胸膜のみが侵されることもあるが、胸痛を伴うこともある
四、軽症新型コロナウイルス肺炎患者の画像学的な転帰は、消失、吸収、器質化肺炎、または線維化であるが、他のウイルス性肺炎、間質性肺疾患などとの鑑別に注意する。
五、胸部CTだけで新型コロナウイルス肺炎を確定診断することは勧められない。確定診断は病原学的な診断が必要であり、最近の後ろ向き研究では、胸部CTで新型コロナウイルス肺炎を診断する正確率は今のところ75%であり、胸部CTだけで確定診断し、治療した場合、25%近くの患者をさらに新型コロナウイルスに感染させてしまうリスクが存在するだろう。
六、しかし画像で高度に新型コロナウイルス肺炎を疑う患者に対しては、特に家庭における集中的な発病者の場合、何度も核酸検査を行い、確定診断を求めたとしても、結局は一回の核酸検査(PCR検査)に一定の割合の偽陰性が存在することに注意

※以上はすべて侯ドクター個人の現時点での意見です。修正等ありましたらご指摘ください。

人生初の4時間で100人以上の患者をチェック

7日目(2月10日)の午前中、私は回診を担当し、この日は人生で初めて4時間以内に100人以上の患者を診察する必要があった。ナースの協力の下、患者の病状評価を行い、過去の胸部CTを調べ、発病時間、現在の症状変化、酸素飽和度の測定をし、患者が退院の条件を備えるかどうかを評価する。

患者や市民への説明責任を果たすべき

一部の軽症患者は確かに大きな心理的負担がある。例えば、自分の住んでいる部屋に子どもが入って教科書を取って来ることができるか、自分の父親は病状の進展が速く死亡したが、自分の病状はどうか、病状が良くなっているのに引き続きなどの多くの問題について、私たちは疑問に全て答え、患者の気持ちを落ち着かせた。絶対多数の患者は情緒が安定し、多くの患者は我々医療チームが遠く離れた武漢に来たことに感謝を表した。きちんとファクトを伝えることにより、患者たちは、国がコンテナ病院を採用して軽症患者を隔離診療することに対して、納得と現在の条件に対する理解を示してくれた

リスクコミュニケーション(動画参照)

ビデオ説明:「コンテナ病院(仮設病院)」の一角。私は「標準的な瀋陽弁」(訳注:中国語の東北弁は、日本語の関西弁に似ていて親しみがある。多くのお笑い芸人は東北出身で、東北弁を話す。「標準的な方言」は相手を楽しませるような、親しみのある表現)を駆使して患者を落ち着かせ説明する仕事をしているところ。このような仕事は非常に重要であり、患者の治療に対する自信の確立、治療コンプライアンスの向上に役立つと考える

非常に親しみがあり、EBMに加え、中国でもここまでNBMが重視されてきているのかと感じる。中国の資源は限られていてベストの臨時病院ではないがそこで過ごしてもらうことのインフォームドコンセントの意義は大きい。こうしたしんどいが人間的である営みは、現代中国で「医闹」といわれている国内医療の崩壊を確実に遠ざける。日本の災害時の避難施設も、海外と比べて遅れをとっている。台風や地震発生時に体育館で夜を明かすなど、そうしたときの現場の混乱を防ぐために、侯ドクターのようなやり取りが参考になるのではないだろうか。

「コンテナ病院」第8日目、第一陣の患者たちが退院

8日目(2月11日)、今日は第一陣の退院患者を送り、新病区も今日は第一陣の患者を受け入れる。武昌区コンテナ(仮設)病院の医療は、次第に効率的な稼働期に入った。

これは私が見たコンテナ病院の仕事の一部の記録である。この仕事は、疫病のコントロールに対して積極的な意義がある。特に感染源のコントロールと感染減少の面で、現実的な条件では、考えられる最も良い隔離治療戦略であり、時間と実践によって、もちろん最終的には丁寧に検証してエビデンスを示し、より良い医療の未来に繋げることが大切だ。

重症患者の治療は依然として難題である。最後に、現場で戦っているすべての仲間がしっかりと自分自身を防護することが希望である。汗を流し、涙を流すこともあるが、我々は再び院内感染のために戦友を失ってはならない。武漢を援助するすべての戦友が無事に家に帰ること。そして、できるだけ早く湖北と全国人民の清らかな世の中に戻れることを願う。

編集後記
本日(3月8日)、武漢のコンテナ病院のすべての軽症患者が退院したため、コンテナ病院が閉院となりました。今後、コンテナ病院のことについても報道が少なくなると思い、紹介しました。コンテナ病院は、軽症患者を隔離するための即席の医療施設でした。

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