恩人

 ただただ感謝を伝えたい。心からそう思っている。

 私は和牛さんが大好きであり、命の恩人だと思っている。だから、少しこの場で愛を語らせてほしい。

 私が和牛さんを好きになったのは、忘れもしない、2017年12月3日、M-1グランプリ2017ファーストラウンドのウエディングプランナーというネタを観た時の事である。当時私は高校2年生という、世間的には青春真っ只中の華の時期でありながら、人生のどん底に沈んでいた。鬱を理由に応援団長を辞めたが、辞めてからさらに鬱が悪化し、全ては自分のせいだという罪業妄想と、常に死にたいと考える希死念慮に悩まされ、人生の何もかもが楽しめなくなっていた。大学に進学する事すら諦めていた。

 そんな時、たまたま私はM-1グランプリ2017を観た。家族は毎年M-1グランプリを観ており、私もまあ暇だし観ておくかくらいのテンションでぼーっと観ていた。8番目のミキまででも十分笑えていたが、まだ普通のお笑い番組を観ているような感覚であった。そして9番目、和牛さんの番が来た。漫才が始まった瞬間、私は全身に雷が走ったかのような衝撃を受けた。

 流れるように始まったコント漫才。導入すらも笑いに変え、川西さんの憑依型の演技力で一気に世界観に引き込む。そして前半は小ボケのジャブを打ちまくる。このままだと笑いの量としてはちょっと少ないかなと思わせつつ、後半で水田さんが役を変え、シチュエーションも変えた上で怒涛の伏線回収。前半の小ボケが全て大ボケへと変化し、毎回拍手笑いが起こる。最後の最後に山場を迎え、大爆笑の中、川西さんの「もうええわ」で綺麗に締める。本来なら10分以上かかるであろうネタを、わずか4〜5分でまとめ上げていた。こんな完璧な漫才がこの世にあるのかと、強く感動したのを今でも鮮明に覚えている。

 ファーストラウンドの時点で私はもう既に和牛さんのファンになっており、ファイナルラウンドの時も全力で応援した。だから優勝を逃した時はとてもとても悔しかった。そして、その日から私は和牛さんのネタを見漁るようになった。

 当時YouTubeで見れるネタは全て見尽くした。そして、M-1後和牛さんが出るお笑い番組は可能な限り録画し、DVDも購入し、ラジオや生放送などリアタイできるものはほとんどリアタイした。そして、和牛さんの漫才を見るために、活躍している姿を見るために生きなければと思うようになった。和牛さんが生きがいとなったのである。

 そしてそのまま高校3年生になり(ここでも応援団関係で色々あったのだが、それはまたいつか)、受験期に突入した。勉強はとても辛かったが、和牛さんの情報を集めることを息抜きになんとか頑張れた。そして、合格したら和牛さんのライブに行くことを目標に、最後まで勉強を諦めなかった。そのおかげで医学部に現役合格できたと言っても過言ではないと思っている。

 大学に入り、念願の和牛さんの単独ツアーに行った。金欠ではあったが、ありったけのお金をチケ代とグッズ代に叩いた。憧れの人についに会えるということもあり、ライブ前は凄く緊張していた。だが、いざライブが始まるとさっきまでの緊張はどこへやら、腹の底からただただ爆笑し、終わった後は爽快感で胸が満ち溢れていた。

 今住んでいる場所が田舎だということもあり、なかなか劇場には足を運べなかった。それでも1年生の時に東京新喜劇とM-1ツアー、そしてその後コロナ禍に入ってしまったが、4年生の時にもう一度和牛さんの単独ツアーに行った。回数は少なかったが、その分一回一回を大切に観れたと思っている。

 もちろん常にずっと推せていたという訳ではなく、和牛さんから離れていた時期もあった。だが、高校2年生から大学1年生という、人生においても激動の期間を支えてくれたのは紛れもなく和牛さんである。特に私は人生のどん底に沈みきっていたため、そこから医学部に合格するまで救い上げてくれた和牛さんは、私にとって大事な大事な命の恩人なのである。

 だから今回のニュースは脳を直接ぶん殴られたくらい大きなショックを受けた。正直今もまだ現実を受け止めきれてはいない。しかし、数日経った今、色々考えた上で辿り着いた結論がある。

 まずは純粋にありがとうと感謝を伝えたい。ここまで人を奮い立たせ、救うような漫才はきっと他にないだろう。だから和牛さんの漫才は凄いんだと、大きな声で伝えたい。そして、そんな素晴らしい漫才を、救世主のお二人の姿を生で見ることができた私は幸せ者である。

 そして、和牛さんのお二人が辛い状況であるのなら、まずはしっかり休んでほしい。誰よりも漫才にストイックなお二人だから、きっと我々には想像つかないような努力と苦悩があったと思う。だから、きっと嫌な気持ちが少しでもある状態で漫才に臨むのがより嫌だったのだと思う。解散はとても悲しいが、苦しむお二人の姿を見る方がもっと悲しい。なので、この選択で気持ちが少しでも楽になるのなら、ぜひ選んでほしいと思う。

 水田さんと川西さんはこれからも芸人は続けられる予定ではあるし、お二人も、我々和牛ファン、通称仔牛たちも、時が経てばきっとこのざわついた心が自然と和らいでくれると思う。今はただ時が解決してくれるのを願っているし、少なくとも来年3月末までは和牛さんは解散しないから、そこまでも、それからも、全力で応援し続けようと思う。

 長々と書いたが、要するに伝えたいのは、和牛さんありがとうということだ。そして、和牛さんのおかげで人生が変わったから、今度は私たちがお二人を応援したいということだ。活動している姿を応援したいのではなく、人生を救ってもらったからこそ、水田さん・川西さんという人間を応援したい、私はそう思っている。今日はここまで。

 

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