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『ボクたちはみんな大人になれなかった』特別と普通の狭間で vol.268
NETFLIX映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』を見ました。
見る前のパッと見の印象は恋愛映画でした。
でも、この映画全体の構造を知って流れを理解すると、これは恋愛映画ではなく私たちの日常の中にある、非日常ととらえがちな日常に焦点を当てた、誰にでもある物語でした。
時系列を逆にたどっていく新しい見せ方だなぁと感じました。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』を見ての感想をまとめます。
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1995年、ボクは彼女と出会い、生まれて初めて頑張りたいと思った。彼女の言葉に支えられ、がむしゃらに働くボクだったが、1999年、彼女はさよならも言わずに去ってしまう。ボクは志していた小説家にはなれず、ズルズルとテレビ業界の片隅で働き続ける。2020年、社会と折り合いをつけながら生きてきた46歳のボクは、いくつかの再会をきっかけに“あの頃”を思い出す。
切り取られるのはいつもの何気ない日々
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この映画は一人のおじさんが、職場からの帰り道このコロナ禍で折り合いをつけて生きている中、懐かしい友人に出会い物語がスタートします。
いや、すでに終わったストーリーを頭の中で逆再生していくといった方が正しいのかもしれません。
ですから、この映画ではいろんな年代に起きたことを時代をさかのぼりながら見ていきますが、実はすべてが現代の彼が見ている思い出なのです。
そんな思い出を断片的に切り取りながら、恋愛を中心に見ていく映画です。
つまり、彼の一番過去、そこにこそこの人生の原点、安全領域となっている部分があるのです。
この構造を理解してこの映画を、見るとより感情移入もできますしそれぞれの描写に彩を感じるようになります。
過去は過去でしかなく、今を生きるしかない
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そしてそんな過去に彼はいつまでもとらわれて生きていることも分かります。
彼がとらわれているのは、かつて文通をしていたところから始まった恋愛です。
彼女の言葉一つ一つにいい意味でも悪い意味でもとらわれていたのです。
「君は大丈夫だよ、面白いもん。」
この言葉は彼を勇気づけてはいたものの、今のままでいいという呪縛を生んでいたのでした。
それは、いい意味で頑張らなくていいという彼なりの心の支えになったのかもしれませんが、逆に言うと現状維持でそれ以上を狙わない、成長を必要としない思考になってしまったのかもしれません。
「それって普通っぽいね」
途中、結婚をしようと相手の母親に対して挨拶をする場面がありました。
ただ、それ自体もこの言葉に縛られ、踏み切れずになってしまったのです。
人ごとのようにも感じますが、実は私たちが日常的に行ってしまっていることなのかもしれません。
自分としてはそこまで縛られている気もしないものでも、実は頭の片隅にあって、自分の一部(自分の言葉ひとつひとつ)になってしまっている。
だから、ふり返りは大事なのかもしれません。
本当普通だなぁ
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なぜ、彼がここまで過去に縛られてしまったのか。
それは、過去の恋愛に特別観を与えてしまったからなのでしょう。
だからこそ、その特別に縛られ恋愛も、仕事も普通ではなく特別なものが素晴らしいと思い込んでしまったのでした。
彼にとっては日常は些細なシーンの一つで、必要がないと感じていたのです。
しかし、実際にはどうでしょうか?
この物語は序盤の方で、この特別だと思っていた相手がFacebookの友達かもに出てくるところから、始まります。
その相手は結婚をしていて子供もいて、いわゆる普通の家庭を築いていたのです。
そこから、自分を俯瞰したり考えるようになっていったのでした。
これまでの記憶をたどりながら最後に辿り着いた初めて出会った場所。
心の底から出てきた「本当、普通だよなぁ」はこれまで特別だと思っていた過去との決別を表しているのかもしれません。
私たちはどうしても、特別や偶然を求めてしまいがちです。
しかし、本当は特別も偶然もなくいつも通りの日常があるのみ。
そしてそこを特別にしていくのが私たちの生きる意味なのでしょう。
そんなことを考えさせられる映画でした。
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